コロナウイルス流行による影響は通訳者によってさまざまですが、実績のある通訳者が有利という単純な話ではないというお話です。
という記事の続編です。上記の記事でコロナウイルスによる影響は長引くという意見を示しました。
コロナウイルス流行で通訳業務の需要が大きく減りました。ただし通訳の形態や需要家の産業で状況はずいぶん異なります。
「仕事のある通訳者と仕事を失った通訳者との二分化が進んでいる」
という声も聞こえます。外見ではそうなのですが、技能や営業活動、マーケティングに優れているから仕事があるかという単純な話ではなさそうです。
むしろ偶然の要素が大きい。つまり人が物理的に移動したり集まったりするときの通訳はほぼ消滅したのですが、そうでない場面の通訳は存続し、場合によっては需要が増加しています。
会議場に人が集まる会議は次々と取りやめになりました。数十か国の代表者が集まるような会議は遠隔開催に移行する場合の技術的問題を解決できていません。世界経済フォーラム(ダボス会議)は2021年1月の予定を8月に変更しました。今年(2020年)4月に予定されていた第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)は 2021年3月に遠隔技術を生かして実施すると日本政府が発表しています。こうして大規模国際会議の通訳を担当していた通訳者の仕事がなくなります。
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いっぽう日本に拠点を持つ外国企業は社内通訳者の募集に熱心です。会議通訳の仕事がなくなった通訳者の応募を見込んで通常では応募が少ない優秀な層を狙っているかのようです。LinkedIn にプロフィールを掲載している通訳者は大手企業が自分のプロフィールを閲覧することが多くなったと言っていました。
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災害と一口で言っても、水害では河川の付近が、山火事では森林の周辺が、台風では通過する場所が被害を受けます。仕事が残ったからと安心したり、激減したからと悲観することなく、自分が今置かれている状況はどのような事象の連鎖の結果なのかを考えることが次の一手・次の一歩を選ぶうえで重要ではないでしょうか。
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緑の中を歩いて考えよう。