50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2023-03-18 移り変わる

主要客先も変わっていくというお話です。


顧客別取引高には変化があります。

(2023年は1~3月見込み)

Aというお客さんは 2019年・2020年・2021年と首位でしたが、2023年の1・2・3月の見込みでは3位です。

2019年に2位、2020年に3位、2021年に2位だったBは2023年には上位5位にまだ顔を見せていません(今後増える可能性はある)。

2022年にランキング初登場でいきなり年間1位となったIはその勢いを少し失って翌年1~3月では5位です。

さらに、2019年に3位と4位だったCとDは2021年からランキング外へ。2019年に5位だったEは2020・2021・2022と姿を消していましたが、2023年1~3月でいきなり2位に浮上です。

2022年に初めてランク入りしたJは急伸して2023年1~3月で1位。


急がなくていもいいのですが、少しずつ新しい取引先とつきあうようにすると思わぬ展開があったりします。


ダイサギのダイちゃん(仮称)も元気です。

 

新宿駅西口近くの「牛家兄弟」でラム肉混ぜ麺。

2023-02-25 ものの見方を変える

ものごとの見方はいろいろあるが、複数の視点を持つのは簡単ではないというお話です。


日本の通訳需要がとても旺盛で、2022年中ごろから業務照会の数が急増しました。仕事で一緒になる通訳者に
「2022年中ごろからの照会数の多さは異常ではなかったですか」
と尋ねると15人中15人が
「いままでに経験したことのないほどだった」
「それが2023年になっても続いている」
「ちょっとおかしいくらいだ」
とおっしゃいます。


私の場合だと2023年1月の実績が仕事を始めた2014年から現在までの月間歴代11位です。正月休みがある月なのに2019年の9月より忙しかったのです。さらに驚いたのがそれに続く2023年2月の月間売上見込みが歴代3位です。営業日数が少ないのに2022年10月・11月に次いでの3位。拘束手当や日当がなくても月間売上150万円(税抜)が現実味を帯びてきます。


通訳需要が増えた原因を想像してみました。新型コロナウイルス流行で人が同じ場所に集まる会議が突然できなくなりましたが、わずか数か月で遠隔会議が急増して会議が復活しました。さらに会議を開く手間や費用に対する認識が大きく変わり、
「思いついたら会議はすぐにできるものだ」
という発想が浸透してきたようです。遠隔会議なら通訳者も移動の必要がなくなり、以前だったら引き受けられかった仕事が可能になりました。


こんなことを考えていたのですが、通訳者仲間の発言にはっとしました。
「忙しくなったのは、通訳者になる人が減ったからではないか」


訪日者が参加する会議通訳・通訳ガイド需要がコロナで一時的に壊滅的な打撃を受けたのを目撃して通訳者として世に出るのをやめた人がいたかもしれません。また、機械翻訳の急速な進歩やAI技術の台頭で通訳・翻訳をこれからの仕事として考えるときに慎重になったのかもしれません。この考えは私にとって新鮮でしたが、言われてみるともっともな気がします。それに加えて新しいハードウェア・ソフトウェア、新しい仕事の方法に慣れる必要がある遠隔通訳に参入せずに静かに通訳市場から退出した通訳者もいたと聞きました。


通訳者が忙しいのは通訳産業が大きく衰退する前触れなのでしょうか。

晴天続きで小川の水が枯れ、残った水場にチュウサギゴイサギアオサギが集まりました。珍しい光景です。

 

大田区蒲田の「スセリ ネワ タカリ」のタカリセットはみごとな出来でした。

 

2023-02-12 取引先との関係(エージェントからの受注)

相手の意図を知るのは大切というお話です。


ちょっとした用事があってお世話になっている通訳エージェントを訪問して打ち合わせをしました。受注量が思ったほど伸びていないこともあり、今までの受注実績を簡単なグラフにして持参。これだけでは仕事量が多い・少ないしか伝わらないので、
・過去の打診メール受信
・通訳者からの断りメール(先約あり)
・受託
の回数記録も用意しました。


客観的な数字を使えば単に
「貴社の問い合わせは実際の業務につながる確率が低い」
と言うよりも説得力があります。


打ち合わせの効果は思ったよりもすぐに現れて照会・受注共に大きく増加しました。客先別受注金額で 2021年に6位、2022年に7位だったのが 2023年1月+2月で2位になっています。通訳者の手配は各社とも手作業なので、思い出しやすい通訳者・最近起用した通訳者に打診することが多くなります。最終顧客から苦情がない限り前回と同じ通訳者を送り出すのは合理的な判断でしょう。


通訳者はこのせっかくの機会を生かして最終顧客に十分な(他の通訳者と同等か、わずかでも上の)価値を提供し、通訳エージェントにおける通訳者の価値も高めるよう努力すべきでしょう。


長い間受注してきた仕事や客先がなくなることもありえます。現在の優良取引先との関係を深め、同時に少しずつ新しい取引先を獲得していくことは商売の基本ですね。


チーズナンを注文したらピザカッターが出てきました。日本人顧客が何を求めるかに敏感で情報共有が早いネパール人経営ならではですね。



2023-02-06 変化は続く

状況はたいていいつも変わり続けているというお話です。


2023年の1月・2月の客先別受注量が昨年とかなり違っています。年の初めは年末年始休暇があって発注量が会社によって違うことも原因ですが、それだけではないかもしれません。

1位 昨年年間3位の取引先
2位 昨年年間7位の取引先
3位 昨年年間16位の取引先(2022年9月から)


2位の会社とは少し打合せをして相互の考え方を確認したのですが、それがさっそく結果につながったようです。言葉だけではなく数字が付いてくると本気度と誠意を感じてうれしくなりますね。

また、上記以外にも以前は取引高が限られていた客先からの発注が増えてきました。

先のことは本当にわからないですね。商人の道に反することなくひとつひとつ誠実にしっかり取り組んでいこうと思います。


ひさしぶりに「いちのや」の看板商品。おいしくできていて好きな弁当のひとつです。




2023-01-30 通訳需要大

昨年暮れから通訳者仲間やエージェントの人に会うたびに同じ質問をしてきました。
「2022年後半の日本の通訳需要はいままでに例がないほど旺盛だと感じましたか」
「2023年1月・2月の仕事量も多いですか」


応えは例外なく
「旺盛であり、2023年に入ってもその勢いを感じる」
というものです。通訳者仲間の中には1月半ばで3月末までの平日がほとんど埋まったという人もいました。

私も2022年の年間通訳報酬は2014年に通訳専業になって以来の最高だった2019年を超えて現在までの最高額になり、2023年1月(確定)・2月(今後さらに増えるはず)も共に同月比で最高になりました。

昨年2022年の1月・2月はかなり出足がゆっくりしていたので今年の進展は意外でした。


業務量が多くなっているのは私だけに限らないので、今のところ以下の2点を挙げておきます。

  1. 通訳者として世に出る時期が今年の人はかなり幸運ということになるだろう
  2. 通訳需要が一種のバブルで、世界経済の減速や金融不安が広がれば一気に業務量が(いままでとの比較で)減少する可能性もあるのではないか


自営業通訳者の業務量は景気の波や社会の変化にかなり反応すると聞きました。2003年の SARS重症急性呼吸器症候群)、2007-09年 の世界金融危機、2020年- の新型コロナウイルス流行のたびに大きな打撃を受けています。

そのいっぽう現在のところ日本の企業業績はかなり良好で通訳予算は確保できているようです。

通訳を志望する人が自らよく考えて果敢に市場に出るには良い時期だと思います。現場でお会いしましょう。


ベトナム南部の料理「ブンボーフエ」。ブンは丸断面の米の麺です。香草が豊作で価格が下がったのか、たくさん盛ってくれました。牛肉もたくさん入っています。



2023-01-23 歳をとるということ

ああ、私は61歳なのだなあ、と思ったお話です。


昨年2022年のいつごろからか、日によって寝床に入ると動悸が気になるときがありました。胸に手を当ててみると規則正しい拍動の合間に不規則な拍が入ります。数分の間に気にならなくなりすぐに寝てしまいます。

今年になってから上りの道を歩くときや歩調を速めたときにも同じような動悸を感じるようになりました。しばらく歩き続けると気にならなくなります。走ったときに脈拍が速くなるあの感じとは少し違います。


明らかに変化があったので医者に診てもらったほうがよかろうと地域の中核病院に出かけました。かかりつけ医の紹介状がない場合の初診料は 4,400円でした。自分の用ではめったに病院に行かないのでいろいろと新鮮です

その日は循環器科がすいていたようで、流れ作業で

  1. 血液
  2. 心電図
  3. 心エコー(超音波による画像検査)
  4. X線撮影

の一巡を待ち時間なしで済ませることができました。検査技師の慎重さ、手際の良さ、集中力と確かな技能に感心します。検査結果を元にした医師の診断は「まったく異常なし」。年齢的に不整脈は出ることもあり、大きな変化がなければ安心していてよいとのことでした。


人間は不思議なもので、そう聞くと足取りも軽くなって帰りはバスに乗らず1時間ほど歩きました。翌日から寝付くときも歩くときも最近ほど動悸を意識しません。身体の具合には精神の影響も大きいと改めて思い至りました。


同年代の友人・知人のうち数名が脳血管疾患で後遺症が残っています。かつての勤務先で直接仕事上のかかわりがあった人のうち50代・60代・70代前半で亡くなった人もかなりの数になります。通訳学校に通い始めたときには「人生後半だから」と思っていましたが、いまや「人生終盤の入り口」と思っておいたほうがよさそうです。


今年2023年は深夜・早朝の仕事は原則として請け負わないことにします。事後の体調回復にずいぶん時間がかかるようになりました。若いころとははっきり違います。


横浜市緑区の「ルシ インドビリヤニ」のノンベジミールス(肉も使った定食)。

ミルク紅茶がこの器で出てくると雰囲気があります。

2022-12-28 自営と会社員との金銭面での比較

「なんとなく」ではなく、数字を使ってみようというお話です。


仕事を選ぶとき、とりわけ大きな変化を経るときには
「年収はいくら必要か・いくらほしいのか」
と考えてみることは必要だと思います。

仮に給与賞与額が年間1,000万円だとしたら、自営業(フリーランス)なら経常利益(売上ー経費)が1,500百万円くらいでようやく長期的な現金収入(厚生年金の受給額などを含めて)が同じくらいだろうと思います(この仮定が最も異論が出るところです)。

経常利益1,500万円とすると、経費率15%(年間の必要経費が265万円)として売上は1,765万円必要になります。

それではこの1,765万円は実現可能なのでしょうか。


大手通訳エージェントの中には客先向けの料金表を公開しているところがあります。いわゆる「定価」なので実際に適用されている価格はわかりませんが、とりあえずこの数字を使うと

1日料金 10.0万円
半日料金  6.5万円

あたりが相場のようです。これはエージェントが客に提示する価格ですから、通訳者に支払う額はエージェントの経費と利益を引いた額になります。経費率・利益率は企業秘密で、顧客ごと・通訳者ごとでも違うでしょうから想像するしかありません。ここでは試算のために 35% (注)としてみると通訳者に渡る額は以下のとおり。
1日 65,000円
半日 42,250円

年間の業務日数を平均で週4日と見積もると 4×52=208日
1日業務が30%、半日業務が40%、半日業務を1日に2件が30%と仮定します。

1日業務   65,000×208×30%=4,056,000円
半日業務1件 42,250×208×40%=3,515,200円
半日業務2件 42,250×2×208×30%=5,272,800円

合計は12,844,000円

フルタイムで業務可能なら妥当な数字のような気がします。


経費率を15%と仮定したときに必要な売上は1,765万円なので、480万円ほど足りません。日本で一般的なエージェントモデルで稼働すると会社員の年収1,000万円見合いの売上の実現はかなり難しいことになります。


仮定の数字に仮定の条件をあてはめて計算したちょっとした「頭の体操」ですが、もし上記のような結果が出るのならそこで考えられる選択肢は3つ。

  1. 会社員の給与賞与1,000万円相当を目標としない
  2. 自営の通訳業を選択しない
  3. 「日本で一般的なエージェントモデル」以外の通訳提供方法を考える

実際には上記2を選ぶ人は少なそうなので、1を受け入れるか3を取るかということになります。おそらく1が大多数。しかし3に進んだ人も確実に存在します。3の具体例は

  1. 顧客が通訳者に直接発注する業務を大幅に増やす
  2. 通訳者自らがエージェントになり、複数の通訳者を稼働させる業務を請け負う

ことになるでしょう。そして、この1と2は切り離せません。複数の通訳者の手配が必要になる仕事がありますし、自分が同時に複数の業務を担当できないからといって断るわけにはいきません。


たまには以上のようなことを考えると自分なりの「収入観」を持つ一助になるように思います。


以上の考察では単純化のためにフルタイムを想定して計算しています。フルタイムで業務をしない場合には前提が大きく異なってきます。そもそもたいていの企業では経常的な時間短縮勤務や季節勤務は現実的ではありませんから、自営を選ぶ可能性が高い。

注:エージェントの経費・利益率はビジネスモデルから考えて20~50%のはずです。その中間値を取りました。


隣の駅とそのまた隣の駅に「餃子の王将」があります。最寄り駅にもあるといいのですが。