CAIS主催のボイストレーニング研修に参加して声の「抜けの良さ」が大切という話を聞きました。口を大きく開けても抜けが良くなるとは限りません。かえって不要な力が入ってしまって逆効果になりそうです。物理的には不可能なのですが、気分としては
「上あごを持ち上げて舌の奥との間に通路を作る」
という説明をしてもらいました。なんとなく講師の意図することがわかりました(管楽器の教授でも聞いた話です)。下あごを落とそうとして力が入らないように、という注意でもあるわけです。
母音に応じて口の開きを変えるのも、下あごを上下させて調節するよりは唇をうまく使う感じで、という指導がありました。
日本語でも英語でも、発音指導の図書や動画教材では外から見た口の形を強調して示していますが、実際に話しているときにはさほど大きく運動していない人が多いようです。通訳業務の時に米国人の口を見ていても e だから横に開いているわけでも、æ だから横~下方に開くわけでもなく、口の中や唇の作用が大きいように感じます(激しく動く人もいますが…)。
伝統的発音教材(指導)と日常の発音方法(外観)との違いは中国語の i の発音でも感じました。
「唇を鋭く横に引いて」
と書いてあるのですが、中国人でそんなふうに
「イーッ!」
と言っている人を見たことがありません。
日本語と異なる音を出すために唇の形(外から見える形)を大げさに変えて音のヒントをつかむ教授法が定着したためでしょうか。
CAISの講習でも
「口をバクバクさせない」(上下動をさせない)
ようにという指摘がありました。口の形は自然に変える程度で日本語の母音は明瞭に発音し分けることができました。そして、英語だからといって口の形(だけ)を大きく変えてもたぶんうまくいかないという感触を得ました。
「英語の音は日本語と違うから口の形を大きく変える」
という指導はそろそろ曲がり角に来ているのかもしれません。