問題に直面したときに事実と選択肢とを書き出すと考えが先走らず落ち着いていられる経験と、偶然の果たす役割についてのお話です。
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大型で強い勢力の台風10号 "Shanshan"(香港当局の命名なので南方発音の「サンサン」)が九州に接近していた2024年8月29日に広島県に日帰り出張することになりました。業務が終わって広島駅を午後4:12の「のぞみ」で定刻に出発。なんとか帰れるかと思いましたが、列車はすぐに減速。ずっと先の静岡県内の豪雨のためで運転を断続させているとの車内放送がありました。
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先々で列車が駅間に詰まっているため少し走っては止まることを繰り返します。翌日午後に東京の会場で実施の通訳業務が気になってきました。帰れない確率が確実に上昇しています。その一方静岡の降雨がおさまると帰れそうでもあります。さて、どうするか。ここでノートに今起こっていることとこれからどうなりそうかを書き出してみました。それを見て検討した結果は
「まず明日の業務を手当せよ」
です。このくらいなら書き出さなくてもよさそうですが、文字にしておくと後で同じ心配を何度もしないために有用だと思いました(もっと複雑でやっかいな状況のときなど)。
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通訳の受注先は直接の顧客なので、帰れた場合には私が実施したほうが顧客の評価は高いでしょう。帰れないときのみ代理で通訳してくれる人はいるでしょうか。
・その時間に東京で仕事ができる
・十分に通訳する実力がある
・一種の「保険」としての役割に納得してくれる
心当たりの通訳者に連絡します。ありがたいことに最初に連絡した人が快く引き受けてくれました。直ちに顧客に電話連絡して事情を説明します。
「Shiraさんの指名する通訳者なら全く問題ありません」
と涙が出るほどありがたいお話でした。実はこの顧客の大阪の仕事で関西在住の通訳者2名に再委託したことがあり、そのときもしっかり現場をまとめてくれたからでしょうね。信用の積み重ねの大切さを思います。
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こうして「心の積荷」を下ろすと本当に安心します。あとはなるようになる。結局この日の東海道山陽新幹線は全線運行停止になり、私の乗る「のぞみ」は新大阪に午後 8:30 くらいに到着して打ち切りとなりました。
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ここで「偶然その1」が始まります。大阪には学生時代からの友人が観光旅館を経営しているのでそこに電話。台風接近でキャンセルが出て部屋が空いている。翌日も新幹線は動かないので二泊予約しました。暖かく迎えてもらい、道頓堀まで歩いて食事をして旧交を温めます。前回来たのは会社員をやめて時間ができた2012年の10月。あのときにはまだ通訳学校に通っていたのですね。
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部屋に戻って一休み、と横になったらそのまま寝てしまい、目が覚めたら午前4時。
変な時間に起きてしまった、寝直そうと青白いPCの画面を見たら
「ANA 大阪伊丹・羽田間臨時便運行を決定 午前1時発表」
との文字。祈るような気持ちでオンライン予約サイトを見たら座席はまだ半数以上空いています。無事に予約が取れました。「寝落ち」の効能です。これが「偶然その2」。この便は満席になりました。
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通訳学校ですばらしい指導者に出会えたのも、新人のときに十分な量の仕事があったこともかなり偶然に左右された結果です。それぞれは小さな判断や出会いでも、積み重なると意外なほど遠くまで来ている。今回もそんなことを改めて感じました。
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初めて乗る機材でした。横浜に戻ってからタイ料理で昼食。