50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2020-05-14 RSIの盲点

遠隔同時通訳ならではの問題点があるというお話です。


会議参加者も通訳者も同じ部屋に入る同時通訳では皆が「場」を共有しています。だれが話すとそれがどう通訳されてどう聞こえてくるかは直感的にわかります。考える必要がほとんどありません。心配事はスイッチの操作くらいですが、通訳者が誤ればすぐに反応がありますし、会議参加者が間違えれば手を挙げてもらう等で対応が可能です。


参加者も遠隔で入る会議だと事情はかなり変わってきます。技術面で最初の、そして最大の課題は
「会議参加者は何をどう聞くか」
について主催者と通訳者がしっかり理解することではないかと最近の経験から感じます。

場合分けをした図式を紙に簡単に描くとわかりやすい。

  • 講師が英語で話し、それを日本語訳で聞く
  • 講師が英語で話し、それを英語オリジナルで聞く
  • 講師が日本語で話し、それを英語訳で聞く
  • 講師が日本語で話し、それを日本語オリジナルで聞く
  • 受講者が…(以上4つと同じ組み合わせ)
  • 講師が国際混成の場合、講師は他の講師の話を通訳を通して聞く必要があるか


通訳者がどう仕事をするかに注意が向きがちですが、通訳者は遠隔同時通訳という "a new beast" を飼いならす心構えをして臨みます。

参加者の多くはそうではありません。遠隔参加のときには参加者のケアが大切。意外な盲点が見つかったりします。慣れていない参加者は通信の具体的な組み立てが想像しづらいのです。

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