50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2019-08-14 ネットワーク

フリーランス通訳者にこそ「ゆるい、しかし確かなネットワーク」が重要というお話です。


フリーランスは自由業と書き表すときもあります。

フリーランス通訳者は業務を引き受けるかどうかを自分の裁量で決めることができます。実際には取引先との関係や収入のことを考えると完全に自由とは言い難い面もありますが、被雇用者(会社員・公務員)のように使用者の指示に従わなければならないということはありません。


しかし、自営業である故の制約もあります。引き受けた業務を本人が提供する必要がある点です。この点ではリサイタルを開く歌手と少し似ていて、興行債務の提供者が登場することが期待されています。

これがとても難しい局面を作り出すときがあります。通訳者がその日・そのときに通訳役務の提供ができない場合、どうするのか。本人の病気・けがはもちろん、家族の事情によっても出かけられないことは起こります。

私も老親の手術で病院での待機を求められたことがありました。偶然にも仮で予定していた業務がなくなってほっとしたものです。前もって日程がわかることだったらエージェントに相談して対処できるかもしれません。しかし人生には急なできごとが起こります。子の具合が悪くなったら、親戚に不幸があったら、事故や犯罪に遭ったら…。


こうしたときに思い知るのがフリーランスは実は不自由業だということ。組織で働いていればだれかが自分の代役をしてくれます。「絶対にあの人がいなければだめ」と言われていた商談でもプロジェクトでも、他の人が代わりに担当して無事に収まる場合は多いのです。自営業者は自分で解決する必要があります。


こう考えるといざというときに頼れる通訳者仲間を持つことはとても重要です。細かい理由を説明しなくても電話・メールで
「お願い」
「わかった」
というやりとりができる仲間の値は千金です。

通訳者相互の信頼関係にはプロフェッショナリズムの裏打ちがあるように思います。いざというときに頼れる・頼られるというのも通訳者の実力として重要な要素ではないでしょうか。