通訳者として世に出る機会のお話です。
社内通訳者としての経験が全くないまま2014年3月に初めて通訳の仕事をしました。通訳学校での在籍が2年になったときです(その後1年通って修了しました)。
それ以来2年間は生計を立てるに足りるほどの報酬はありませんでした。つまり件数が本当に少なかったのです。理由はとても簡単で、
・私という通訳者の存在をエージェントの担当者に思い起こしてもらえない
・思い起こしても「客先から引き合いがあったこの業務」を任せられるかわからない
からです。
私の当時の考え方は
「まだ通訳学校に通っていることもあるし、自分で考えても通訳技能が足りない。あせらずゆっくり取り組もう」
というものでした。
その後に起こったことを振り返ると、それでよかったのだと思います。通訳学校の課程を修了してから照会を受ける件数も一貫して増えてきました。
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こうした経験も幸運に支えられた面が多々あると思います。おそらく通訳の需要そのものも日本で拡大したはずです。外国からの投資も増え、日本企業も外国での生産・外国企業の買収に積極的です。
そして今年もまた市場に出る通訳者には強い追い風があります。
こうした行事の通訳を新人通訳者が担当することはなかなかないのですが、波及効果は確実に発生します。他の通訳者がこうした業務に集められると他の業務で通訳者が不足し、この「空洞」が新人に回ってくるのです。
多くの通訳者が言うように、通訳の仕事を発注する側は
「この通訳者に担当させて大丈夫なのだろうか」
という一点だけを考えます。そこでどうしても
「この通訳者はこの分野で経験があるのだろうか」
という発想になります。これは責められません。私もエアコンの修理や自分の外科処置を任せるのなら施工者・施術者の経歴を気にします。
しかし、
「経験がないから仕事が来ない。仕事が来ないから経験が積めない」
という困った循環に解決法がないわけではありません。
最も楽で早いのは大手エージェンシー系列の通訳学校で良い成績をおさめることです。エージェンシーとしては(頼りになる)通訳者は常に不足しているので、講師から常に有望な受講者についての情報を取っています。講師が
「まあ、この仕事だったらできるんじゃない?」
と感じる通訳者には必ず仕事が回ってきます。
通訳学校の学習はそれなりに大変で、私も当事者だった時には苦労しました。それでも職業通訳者になってみると受講生というのはどんなに勉強が大変でも
「アマチュア」
だったのだなあと思います。プロとの間には歴然とした壁・違いがあります(技能的な難易度というわけではなく)。
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職業通訳者として仕事をする機会をうかがっている皆さんにとって国際行事が多いこの年がきっかけになるといいな、と願ってやみません。
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