初めて通訳の仕事に出たのが 2014年3月05日でした。
この日のことはよく覚えています。どんな話をしたか、昼食をどこで取ったか、電車の駅からどう歩いたかなどなど。
それから今まで何百という現場に出てきました。人と人とが話をする場所はいつでも通訳者の仕事場になる可能性があります。
そして、今になっても新しい種類の仕事に出会います。
今年になってから数が増えた分野が2つ。
第一は戦略コンサルタントの通訳。マッキンゼーやボストンコンサルティング、ヘイ、IBM、ベイン、アクセンチュアといった「ファーム」が知られていますね。
コンサルタントは能力主義の国籍混成チームでプロジェクトにかかわりますが、英語の水準は高いですね。話のスピードも速く、コンサルタントの現場の会話を聞くと通訳学校で使う教材はスローモーションのようです。運悪く初日からパナガイド(簡易同時通訳装置)を渡されたりすると通訳者はちょっと涙ぐみたくなります。
最初のうちは
「エライところに放り込まれてしまった」
と思ったのですが、すぐに話についていけるようになりました。長年親しんだ企業活動についてだからです。経営関係の本(特に実例の話)を昔から読んでいたのも助けになっていると思います。話の勢いを失わないようにして質問と回答とをしっかりとかみあわせることが大切。幸運にも「刺さる」通訳ができて顧客に感謝されてほっと一息です。
もう一つはコンサルタントとは対照的な伝統的な講演形式、その中でも学術や外交、社会問題にかかわるもの。大きなホールの椅子に同時通訳の受信機が何十個も置かれ、通訳者はブースからガラス越しに会場を見下ろす形式。普段は使い慣れない "Her/His Excellency" といった呼称も頻出です。用語にも通訳学校の副教材で詰め込んだものが多く、
「なるほど、だから勉強させたのね…」
と気づきます。正確さが第一ですが、なんといっても聞いた人がわからなければ訳したことになりません。発言者がゆっくりと話しても高品位な訳をはっきりと出すのは難しいですね。
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とてもお世話になった(今でもなっている)出身通訳学校の講師は
「(通訳業は)5年で仮免許、10年でようやく水平巡行飛行」
と言っていました。そのとおりだと思います。年間2百日近くの通訳をしていても5年目でまだまだ新しいものに出会う。慣れていたつもりのことの中に新しいものが見つかることもある。
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ちょっとカロリー過多かもしれませんね。ラッシーやめておいてよかった。