50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2023-05-04 なぜか帳尻が合う

仕事はどこからともなく現れるというお話です。


今年2023年は年始休暇のある1月としては開業以来最高の月間売上になりました。1月に限定しなくても開業以来107か月中13位です。

それに続く2月・3月は好調でした。開業以来月間売上では4位と6位です。

その後4月に入って業務照会の勢いが少し鈍りました。残り1週間になるまでは2月・3月に及ばないかと感じです。ところが月の半ばを過ぎたころから経常的に担当している仕事の臨時追加があるなどして数字が急伸し、終わってみたら月間売上は開業以来3位でした。とても忙しかった2022年10月・11月に迫る実績です。


自分で何かしたわけではないので単純に喜んでばかりはいられないのですが、追加の仕事もしっかり取り込めたことは良かったように思います。

さて、連休のある5月はどうでしょうか。いまのところ手持ち受注残は5月と6月で同じくらいです。つまり6月のほうが出足が早いということ。仕事を引き受けるときの判断基準をノートに書き出して迷わないようにした効果も出てくるといいのですが。


神奈川県の「茅ヶ崎里山公園」はおすすめです。自動車の音が届かないので歩みを止めると静寂と風の音、鳥の声を楽しめます。

 

2023-05-02 真実はたぶんその間にある

あれかこれかの議論のとき、現実に当てはまるのはその間のどこかだろうというお話です。


通訳者があまり口を開かない仕事がときどきあります。しばらく前の1年間は面白い年度で、通訳者が音声を出さずに終わった仕事が6回ありました。その後しばらくそのようなことがなかったのですが、今年 2023 年に再び「仕事しないのが仕事」という日が複数ありました。


通訳者が完全に黙っているわけではなく、実際の通訳提供時間がごくわずかにとどまる日が月に5日ありました。
A月M日 午前・午後待機のみ
A月N日 午前・午後待機の後、12分ほど通訳

A月X日 午後現場に入り、夕方に40分ほど断続的に通訳
A月Y日 午前・午後・夕方と待機のみ
A月Z日 午前に移動、午後45分間会場で過ごすが結局待機のみ


・準備をしたのだし、通訳の必要があるから手配したはずなのに出番がないとはけしからん。

・仕事をしなくて報酬がもらえるのだから大歓迎

という両極端の考え方があろうかと思います。私はどちらかというと後者に近い立場を取ります。この月は上記のように2回、計5日間ほとんど出番のない仕事に出ましたが、心穏やかに過ごせました。「通訳が必要になるかならないかわからないが、とりあえず手配」というときに呼ばれていくのも立派な仕事だと思っています。役務の提供をすれば瑕疵担保責任も生じます。何もしなければ失敗したり非難される危険も完全に回避できます。


しかし、こんなことばかりでは顧客に通訳者の価値を印象付けることはできませんし、通訳者としての現場からの学びもほとんどありません。出番がない日はごくたまに「息抜き」として存在する程度が良いのでしょう。


貸し会議室で2回線使用の同時通訳。


東京駅八重洲口近くの「ダクシン」はまもなく閉店して大手町に移転再開。

 

ツツジは例年より早く咲いたようです。




2023-04-23 プロジェクトベース

新型コロナウイルス流行で一時的に業務が減った2020年前半を除くと現在に至るまで仕事量は増加し、通訳報酬の改定も相まって業績は順調に伸びてきたと感じています。


年間売り上げの構成要素を見ると変化がずいぶんあったことがわかります。

過去に共通しているのは大規模会議やIRの割合が低く、機械・情報・コンサルティングに関連する通訳業務への依存度が高い点です。

いっぽう各年度間で「スター」「牽引車」となる分野が入れ替わってきました。


2014年から2016年は原子力分野が大きく貢献しました。半ば偶然に担当するようになったプロジェクトに長く参加することになり、職業通訳者としての生活基盤ができました。

2015年から工場訪問や商業訪問などさまざまなビジネス会議を担当するようになりました。2016年になると経営会議が加わり、IT開発も初めて経験しました(後にこの経験が役立ちます)。2017年は以上に加えて政府系の仕事やマスメディア、国際会議の担当もするようになります。

2018年は前年までの業務組み合わせのまま量が拡大したような年でした。この時期に通訳学校や大学の市民講座で通訳技能や英文の聞き取りの講師をしています。

2019年に質的に変化が起きます。戦略コンサルティングの業務が急増しました。登録のある通訳エージェントの顧客で通訳の必要なプロジェクトが複数立ち上がったためです。どちらかというと偶然の産物ですね。オリンピック東京大会の仕事にもずいぶん出かけました。変化は外からやってきたといえます。

2020年はコロナで大きな変化がありました。戦略コンサルティングの比率は依然高かったのに加え、エキスパートネットワークの短時間業務を引き受けるようになりました。エキスパートネットワークの電話逐次通訳では経験の浅い通訳者が多いようで、企業勤務経験の長い私の通訳が相対的に評価が高く件数が大きく増え、単価も引き上げることができました。一日・半日という伝統的な料金構成に比べると低報酬に見えるのですが、準備をほとんど必要とせず(私の場合は)、いわば「すきま時間」に引き受けられるので売り上げに対する貢献はかなり大きくなりました。

2021年は戦略コンサルティングと経営幹部会議の年になりました。そのほかに通訳者仲間から回ってきた産業関係の業務も定期開催になり、同じ顧客からの繰り返し発注が中心になります。

2022年には戦略コンサルティング業務が続くいっぽう、しばらくの間受注量が少なかった総合大手エージェントからの仕事が急に増えました。自動車産業装置産業など、私のなじみの分野だったので通訳ユーザーの評価が良かったようです。

そして2022年の後半に数回引き受けたプロジェクト担当通訳が翌年「大化け」するとは当時は想像もしていませんでした。

2023年、前年に始まったプロジェクトの通訳需要が爆発し、客先別で1位になりました。先端かつ「業際」(機械・電気・ソフトウェア・通信など)分野で、いままでの通訳経験を総合して生かせる機会になったことも「出会いの妙」でした。

そして、このプロジェクト業務を手配しているエージェントとは数年前に通訳者仲間の紹介で出会ったのでした。2018年に登録して2021年の後半にようやく初仕事、それが翌年客先第1位になるのですから世の中先のことはわからないものです。


新型コロナウイルス流行で遠隔会議が増えましたが、そのときに積極的に遠隔通訳の仕事を引き受けたのも仕事を増やす結果につながりました。マイクロフォンやオーディオインターフェイス、無停電電源などを購入しました。同じメーカーの似たようなPCを2台にしたのは良い選択だったと思っています。自宅のインターネット回線のプロバイダを2020年3月に変更したのも地味ながら欠かせない変更でした。それまでの速度ではおそらくデータ転送が遅すぎましたし、変更時期が遅かったら工事の順番待ちが長くなるところでした。


こちらから働きかけて新しい取引先が増えたことはほとんどなかったことになります。エージェントがプロジェクト単位で仕事を受注し、そこに私がたまたまうまくあてはまったという展開が多いですね。プロジェクトを通して使ってくれるのはありがたいことです。


神奈川県藤沢市用田のムスリムスリランカレストラン「Easy Day」。ラマダン(断食月)に訪問してしまいました。フライドライスならありますとのことで作ってもらったらものすごくおいしい。油を感じないのにさくさくのパラパラです。しっかりした歯ごたえの干し肉が入っていました。

チキンカレー、豆とほうれん草のカレーを作りました





2023-04-07 ようやくオンライン保存

Windows3.1時代から自宅でPCを使っていましたが、ようやくオンラインストレージを使い始めたというお話です。


業務上の各種電子ファイルはバックアップを日次で異なるメディアを交互に使って取っています。
1.USB接続のHDD
2.USB接続のSDD
HDDとSDDの2種類を使っていることに特に理由はありません。

バックアップソフトウェアは BunBackup を使っています。手軽で堅実な動作、直感的な操作体系が好ましいと思っています。


2回線を使う在宅通訳用に同一の設定をしたPCを2台持っています。1台が故障してももう1台にバックアップからファイルをリストアすれば最悪の損失は1日分の作業分ということになります。

実際にPC1号機のディスプレイが故障して修理するときに2号機にすべてのファイルを移してシームレスに運用を引き継げました。


ただ、バックアップを物理的メディアに取って自宅に置くと出先でPCの故障があったときに困ります。通訳するときには資料を「そのとき・その場」で使う必要があります。


2022年10月に日程管理を紙の手帳から Google Calendar に切り替えていて、予定はPCが故障しても確認することができるようになりました。次はファイルの番だということで、Microsoft の One Drive を使うことにしました。データ転送は短時間に終わるほうが運用上好ましいので業務関連のファイルのみ共有することにします。必要に迫られて少し勉強し、ようやく One Drive や Google Drive の設計思想がわかりました。PC内に One Drive というフォルダを作り、そのミラーイメージをオンラインに作るのですね。PC上のファイルが作成・変更・削除されるとほぼリアルタイムでオンライン上のフォルダに反映される。


使ってみると実に便利です。2号機にも同じ設定をしてあるので、もはやバックアップメディアから2号機にファイルを移す必要もない。接続して数十秒くらいでオンラインフォルダと同期が完了して PC1号機・オンラインストレージ・PC2号機がすべて同じデータを持ちます。すでに使っている人にとっては
「なにをいまさら…」
なのでしょうけど。


これで大げさに言うと世界中どこでPCが故障しても代替機があればすぐに業務用のファイルは使えるようになったわけです。加齢とともに
「知らないものにはなかなか手が出ない」
ということにならないよう気をつけないといけませんね。

▼花が咲き、散っていきました。

横浜駅から歩ける場所にある本格的なネパール料理店「ルーフトップビアガーデン ヨコハマ」のダルバート(ネパール定食)。最小限の構成ですがすばらしい仕上がり。



2023-04-02 日程には緩急が必要

作業量や緊張の度合いを考えて仕事を引き受けることが大切というお話です。


以前に引き受けたことのない顧客・内容・様式の通訳を引き受けるときには準備に使える時間を確保する必要がありますね。日程表だけを見て
「まあ大丈夫だろう」
と詰め込んでいくと実際準備をする段になって予想よりもずっと大変だったという経験がずいぶんあります。もう9年もこの仕事をしているのになかなか学習できていません。

2023年3月後半もけっこう大変でした。内容には親しみがある仕事でしたが、やや改まった大規模な催しで通訳音声も録音・公開があるのでやや重圧を感じます。持てる力をすべて使って顧客の期待に応えるという点では毎週毎月の定例会議でおなじみの出席者・おなじみの内容で通訳をするのと何も変わらない(はず)ですが、そうした一種の「たてまえ論」と生身の通訳者の感覚はやはり少し違ってきてしまうように思います。


日程表に準備の時間も書き入れておくと可視化できて良いでしょうね。
「どこか空いた時間で資料を読もう」
という漠然とした考えだとそんな時間が実は存在しなかった、ということにもなりかねません。一週間~二週間単位で予定を考えて、さほど準備に時間がかからない「いつもの仕事」と「やっかいそうな仕事」をうまく組み合わせることをもっと考えてみようと思いました。


ベトナム料理 Bún thịt nướng chả giò (豚の炭火焼・揚げ春巻入り米粉麺)
つけだれを上からかけて食べます。このように具材と麺が一つの器に入っているのは南部スタイルとのこと。

 

神奈川県座間市の「タージブリヤニハウス」

パキスタン料理の名前が並んでいます。

Jumma Mubarak は「ハッピー金曜日」という意味らしいです。イスラムの休日ですね。いちばん上の nihari(ニハリ/ニハーリー/ナハーリー、骨付き羊のすね肉の煮込み)だけ 1,200円、他は1,000円です。ナンまたはロティと小サラダ、飲み物が付きます(忘れるときもある)。

いつもはロティですが、ニハリにはナンですね。たまたまシェフが注文を取ったのですが、その後入ってきたいつものお兄さんが
「ナン?」(いつもロティだけど、ナンでいいんですか?)
と確認しに来ました。

2023-03-27 生の情報

実際に経験した人から聞く情報は確実というお話です。


自営業の通訳専業になってから9年が経過しました。2018年くらいから業務量が増え、いろいろな場所でいろいろな仕事をしてきたような気がします。しかし、これは自分で勝手にそう思っているだけでまだまだ知らないことも多いのですね。


今年の3月は新しい通訳者と組むことが続き、いろいろなお話を聞くことができました。さまざまな顧客や業務内容について聞けたのは大きな収穫です。うわさ話やソーシャルメディアで見聞きしてなんとなく「こうではないか」と思っていたことが実際にはもっと複雑で違った側面も持っていたことを知った日々になりました。


複数の通訳者で仕事をするときに、業務量の負担についての考えが通訳者間で似ていると気楽です。私はすこしくらい偏りができてしまっても数か月単位で考えれば大きな違いはないと考えます。今日たまたま少し分担が多くなっても、そのうち私のほうが少ない日も必ずあるわけですし。初めていっしょに仕事をする人には
「時間の考え方ですが、『割り勘は最後の1円まで』というタイプですか?」
とやんわり尋ねるようにしています。

最近組んだ方は皆
「ユルユルで」
というお返事だったので気楽でした。


駅のてんぷらそばにはよく励ましてもらっています。