通訳のコツは何ですか、という問いを受けたことがあります。
聞いたことをくっきり理解して、話者の意図をくみ取り、わかりやすく誤解を避ける表現でお伝えすることかと…。
「いや、だから、それを実現するためのコツですってば」
というかすかな苛立ちが向けられそうですね。
でも、信じてください。一言で、と尋ねられたらこれしかないんです。
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仕事が終わって日が暮れる。
ビリヤニタイム!
通訳のコツは何ですか、という問いを受けたことがあります。
聞いたことをくっきり理解して、話者の意図をくみ取り、わかりやすく誤解を避ける表現でお伝えすることかと…。
「いや、だから、それを実現するためのコツですってば」
というかすかな苛立ちが向けられそうですね。
でも、信じてください。一言で、と尋ねられたらこれしかないんです。
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仕事が終わって日が暮れる。
ビリヤニタイム!
ほめてもらったことは忘れがたいというお話です。
通訳学校時代、私はさほど出来のよい受講生ではありませんでした。なんとか半年ごとに進級はしていましたが、2年を過ぎたときに初めて上級のクラスに進めず再履修判定となりました。そのときの講評にはいろいろと厳しいことも書いてあるのですが、
内容がしっかり取れている場合には大変優れた訳出で、日英とも声質の良さもあり、安心して聞いていられます
という一節がありました。
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そしてこのときから5年を過ぎたある日、話者が早口で内容の密度が高い、なかなか苦しい同時通訳をしていたとき、その日初めて組んだ通訳者に
「(追い詰められても)声がいいですねー」
と言っていただいたのです。
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ああ、あのとき先生が言ってくださったことは今になってよみがえるのだ、と思いました。
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通訳学校の講師もお客さんもなかなかほめてくれません。私たちがバスの運転手やコンビニエンスストアの店員を(本人に対して)ほめないのと同じです。それだからこそほめられたことは心の中の小さな灯としてずっと生き続ける気がします。
そして、そんな思いをするからこそ、もうすこし他人をほめていこう、認めたことは口に出して伝えていこうと思います。
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さわやか。
さあ、いこう。
会議同時通訳だと運動不足になるお話です。
仙台にも札幌にも新潟にも茨城にも国際会議場があります。そうした場所で数日間の通訳をすると運動不足はけっこう深刻です。
ホテルの朝食は魅力的でつい品数を多く取りがち。主催者さんが慰労で夕食を提供してくれたりするとまたまたおいしくて食べすぎの危険が…。
そして日中はブースに閉じこもってぼそぼそと通訳。外の天気もわかりません。仕事が終わると翌日の資料がどさっと届いたりして夕食後に下調べ。少し歩こうと思っても会議場の周辺ってたいてい何もなくて散歩の楽しさがいまひとつだったりします。
屋外の視察や上り下りの多い施設での仕事のほうが体には(そしておそらく精神的にも)良いと思います。
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魅力にあらがい難い…。
少し上に、少し外に。そう意識していないと縮こまってきそうというお話です。
今年も半分が過ぎようとしています。六か月分の業務を振り返ってみました。思ったよりも「おなじみ」の業務が多い。
繰り返して発注してくださるお客さんがいらっしゃるのは本当にありがたくうれしいこと。通訳の質はずっと同じではよろしくなくて、わずかずつでも向上させる必要があると思っています。それでようやく顧客側は
「うん、前と変わらずちゃんと通訳してくれている」
と感じることになると思います。
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もう一つ気づいたのは、
「やはり5年では仮免許なのだな」
ということ。会議通訳の「保守本流」ともいうべき国際会議の通訳実績がまだ少ない。そうした仕事は実際の難度とはまた別の尺度で「格上」とみなされています(経営会議や工場の通訳、IR通訳にも難しく重要な場面はたくさんあります)。そうは言っても「第△回世界☆☆会議」の仕事が定期的に回ってくると会議通訳者という看板に偽りがなくなっていいかなとも思います(通訳者が会議通訳者を目指さないということももちろんありますけど)。
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今年は昨年まで経験しなかったような仕事をいくつか経験することができました。かなり背伸びをしたり「いつもの仕事の箱」から外に出る勇気を奮い起こしたりしました。ちょっと背伸びしすぎたか、というときもあります。飛び込んでみたら急流だったり水が冷たいこともあります。それでもなんとかお客さんに価値を提供するしかありません。まずは腹をくくって。天も総覧。
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高層階にて。
気のゆるみは危険というお話です。
たまたま運が良くて5年続いているだけかもしれない。いや、おそらくそうなのです。
これがあたりまえだと思ったときから落ちていく。思い上がらず、さりとて必要以上に縮こまらず。がんばらず、しかし、なまけず。あわてず、しかし、たゆまず。
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水・空気・太陽光だけでこれだけ花を咲かせる。今年2回目。私は怠けていないかとサボテンが問うている気がします。
ぜいたくを言わないといろいろ楽だなあ、というお話です。
夕食を早い時間に食べることにしています。
朝起きると相当におなかがすいています。そこでバナナかリンゴを半分。水を少し。これで出かけます。
用務地の最寄り駅付近のカフェやファーストフード店は前もって目星をつけておきます。しばらく六本木に通ったときには
・バーガーキング
・ウェンディーズ/ファーストキッチン
を適度に取り混ぜて。両店とも朝は混雑しないので客を早めに追い出す必要がないようです。そのためか店内の音楽は両方ともスタンダードジャズ。朝から Someday My Prince Will Come なんか聞いているとなんともぜいたくな気分です。
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おなかがすいていると何でもおいしいですね。
「駅に着いたらドトールに入れる!モーニングBセットが食べられる!」
と思うだけで幸福度が高まります。440円の幸せ(飲み物をMサイズにするので390円に50円加算です)。集合時間の1時間以上前に着くようにしているので資料を見る時間もあります。電車の故障や事故等はフリーランスの場合遅刻の理由になりませんので…。家庭の都合で家を朝早く出られない人も多いと思いますが、
「持てる札はすべて使う」
のが職業人の務めのように思います。その「札」は各人それぞれ異なる。
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最寄り駅に向かう道にて。
ストレスフリーまたは良性ストレスだとワークとライフが溶け合ってくるというお話です。
「宅急便でーす」
ヤマト運輸の配達員(セールスドライバー)はかならず明るい声で到着を告げます。同社の商標である「宅急便」を誇らしげに。
通訳業務の資料を受け取る通訳者の心境は
「来たか…」
ですね。厚さが10cmくらいあったりします。冬だと冷え冷え、夏だとほかほかです。
業務の準備は1つだけに集中できるときも複数を並行して進めるときもあります。こちらに手を付けるとあちらが気になる…。時間の配分に悩みますし、取り掛かってみると時間の見積もりが大きく外れることもあたりまえ。
「資料を読んでみないと準備の大変さがわからない」
ことが通常だと感じています。
受領した資料よりその他の調査研究が重要なこともよく起こります。
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それでも毎朝起きるときには元気いっぱいです。不安がないわけではないのですが、
「このストレスがずっと続いて自分の思うようにはなりそうもない」
という感じではないのですね。ストレスはありますが、それはいわば良性のストレス。
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ブログ「定年からの通訳デビュー」で著者のモコちゃんパパさんはこう書いています。
大きな組織、それも1960年代の枠組みを持った場所で定年まで勤務した方がフリーランスで通訳その他の仕事をしてこう感じるのはよくわかる気がします。私も大企業で28年を過ごしてフリーランス通訳専業になりましたが、
・自分が他と差別化できるところで
・自分で決め
・自分で実行し
・自分で結果を引き受ける
この手ごたえを感じると、限りなく ワーク = ライフ になってくる気がします。
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そば粉が何%だとかゆでたてがどうしたとかという野暮なことを言ってはいけません。気持ちの良い接客とさっと出てくる丼。駅のそば店は今日も人のために役立っている。