社内通訳者は多くの場合社員(期限の定めのない社員 = いわゆる正社員、期限の定めのある社員 = いわゆる契約社員、派遣社員)の身分で仕事をします。
この二つの形態はかなり異なるので、社内通訳者からフリーランスに転向しようという方はフリーランスの働き方についての本を何か1冊読んでおいたほうがいいと思います。税金・年金の違いが話題になりやすいのですが、もっと本質的で重要な点があまり取り上げられないように思うので…。
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● 使用者責任 (注)
フリーランスは具体的・詳細な作業の方法については指示を受けずに成果物を納入したり役務を提供します。顧客にもエージェントにも使用者責任は生じません(エージェントに元請負人としての責任は生じますが)。通訳者が顧客に損害を与えたら通訳者が賠償の責任を負います(← この部分断言はできないかもしれません)。会社員ではないので「カイシャ」が何とかしてくれることはありません。
2017-04-10 訂正・追記 エージェントには実質的な使用者責任が生じる可能性もありそうです。
● 労働者の保護
フリーランスは労働者ではないので、顧客やエージェントには通訳者を指導したり保護したりする義務がありません。健康診断を受けさせたり、必要な安全講習を受けさせることはありません。通訳者が「請け負います」と言ったら、すなわち「一人でできます」と言ったのと同じ意味になります。労働者ではありませんから、労働者災害補償もありません。昔の表現だと、「怪我と弁当は自分持ち」なのです。
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私は企業勤務の社会保険労務士として8年の経験があったので、雇用(会社員)と業務請負(フリーランス)との違いはよく理解していました。
ですから、通訳業を始めたときから
「もし自分が何かの事情で通訳の現場に行けなくなったらどうしようか」
ということも強く意識していました(趣味の二輪車を手放したのもこの理由から)。
卒業した通訳学校の母体である大手エージェントからの仕事を中心に請け負ってきた理由の一つもこの点です。もし私が交通事故に遭ったり急病になっても、大手エージェントならだれかを代わりに現場に出してくれる(確率が高い)。私も同じクラスで学んだ人の代わりならどこへでも飛んでいくつもりです。
また、日本初の通訳者のための同業団体「日本会議通訳者協会」の会員になり、各種イベントや事務で「顔を広く」してきたのもいざというときの「保険」という意味合いがあります(実際に会員相互の「助けて!」「わかった!まかせて」というやりとりがあります)。
通訳者も年代によって子供の急病・老親の容態の急変など、他の人に助けを求める場合が出てくるのはほぼ確実だと思っています。
通訳は
「その時間に・その場所に」
いることが求められる仕事です。自営業者には労災保険も雇用保険(失業保険)も傷病手当金もありません。リスク管理については確かな情報を元に考えておく必要があると考えます。
注: 使用者責任については近江法律事務所様のサイトにわかりやすい記述がありましたのでリンクしました。同事務所にはこの場で御礼を申し上げます。
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倉橋ヨエコの「今日も雨」。この歌詞は心にしみます。底抜けに明るくて、それでもどこか諦念が漂う。映像との組み合わせが実に巧み。ドラムス・ベース・ギターの演奏も達者です。通訳者のための歌だなあ。