1.ノート取りについて
現職の通訳者がノートを取りすぎないよう盛んに警告しています。
「まぶ」さんのブログ「通訳物語」の記事「通訳講座301 メモ取りの落とし穴」
Q.通訳のメモ取りで、絶対にやってはならないこと。 それはなんでしょう?「BYP?のギタリスト」さんのブログ「峰打ち!Perspectives」の記事「通訳者のメモの取り方について(2)」
A.この半年だけでも、200回くらいは言いましたが、「ノートを取りすぎないこと」です。
メモはリテンションの呼び水として使うようにしましょう思い切ってノートを取る量を減らしてみたところ、落ち着いて聞けるようになって通訳の品質が向上したようです。ノートが少ない故の抜け・漏れもありませんでした。原発言がゆっくりだとつい書こうとしがちなのですが、(自分にとって)わかりきっていることや後で思い出せることは書かなくていいのですね。これは実際に試してみてようやくわかりました。
たとえば、
「日本で産業の空洞化が進んだ原因は、海外生産のほうが原価が低いというだけではなく、市場に近い生産が有利だからだ」
という文章があった場合、内容にさほど意外性がないので、思い切って
空 <-- 原/市
とでも書いておけば思い出せるんですね。今まではいっしょうけんめい
JP 空 進 <-- OV 原↓、市近
などと書いていました。「書けるから書いておこう」をやめるのには少々勇気が必要でした。
2.聞き取りについて
通訳者の臨時セミナーで聞いて印象深かった言葉があります。
「一点の曇りもなく理解してください。これは通訳者だけに求められる非日常的な要求です」
BBCのポッドキャストを聞いていますが、きっちりわかるように聞くのは大変だということがわかってきました。何か他の刺激があったり別の考えが一瞬でも入り込むと内容の理解が欠けてしまうのです。「曇りのない理解」を求めて聞くのは相当大変です。心の中の池を鏡のように保って、英語という小石が落ちて起こす波をしっかりつかまえるような感じですね。油断すると簡単に水面にさざ波が立ってしまいます。
いままで仕事で英語を使っていたときには、相手が話したことをを聞きつつも自分の言いたいことも考えていました。
「そう来たか。じゃ、これでどうだ」
というわけです。
通訳者は完全に聞いて、話者の意図をゆがめずに理解する必要があるのですね。この重要さは人に言われただけ(文章を読んだだけ)ではわからず、自分で気づくしかないようです。