50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2021-05-19 失速

受注が少なくなったというお話です。

昨年(2020年)のいまごろは受注が急減して不安になっていました。売り上げは3月に2月の数分の1まで落ち込み、4月の月間売上は2017年以来最低額。

しかし2020年5月にやや回復し、そこから7月まで低調、8月からかなり業務量が増え、市場から退場しなくてもよさそうな水準を維持できるようになりました。そして2021年の1月・2月は力強さはないまでも「まずまず」、3月・4月はプロジェクト関係の受注で開業以来月間で1位と4位となりました(交通費や外注通訳報酬を除いた正味通訳報酬で)。


そして5月に再び数字が落ち込みます。だいたい昨年並み。

目先のことで不安になる必要はないことをいままで学んできました。山もあれば谷もあります。翌月(6月)の受注はかなり好調で、このように前月以前から予約が入るのは良い兆しです。通訳者仲間に呼ばれて新しい仕事をする機会もありました。しばらく前に登録して「順番待ち」(件数が減少したので)になっていたかのような顧客からも打診が続くようになっています。


不透明感は常に存在し、不安もあります。それをどう受け止めて何をするかは自分次第の自営業(裁量の幅が大きすぎ、それも不安の元ですが)。


もらってきたときに野球のボールくらいだったサボテン。高さが50cmくらいになって根に近い部分が茶色くなったので「胴切り」(高さを切り詰めて、上半分を植えると根が出る)をした後も元気です。花を付けるまで30年かかりました。それからは毎年複数回咲きます。

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2021-05-10 想像力

「検査の結果、新型コロナウイルス陽性でした」
と言われたとしたら、いっしょうけんめい心当たりを探るでしょう。あのときカフェで隣にいた人か、散歩のときにすれ違ったあのジョギング中の人か…。

通訳業務でも、エージェントから
「お客様が次回から別の通訳者にしてくださいと伝えてきました」
と言われたらやはり過去の行動の棚卸をそれこそ必死ですることでしょう。


なにも起こっていないときに心の中でこのような想定をして「消火訓練」をするのも必要な気がします。まったく心当たりがないというわけにはいかないでしょう。危険なところはいくつもあったのです。その危険を定義して対策を考えると無事に過ごせる確率は高まると思います。


アオサギのアオちゃんとダイサギのダイちゃん。雨で水量が増すと行動も少し変わるようです。

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2021-05-09 JACI特別功労賞

一般社団法人日本会議通訳者協会(JACI)が毎年選定する「特別功労賞」。今年2021年の受賞者は手話通訳者の川根紀夫さんです。

すばらしい受賞コメントが寄せられています。

第4回JACI特別功労賞 受賞者コメント


私にとって通訳の価値、可能性についていろいろと考える機会になりました。


いままでの受賞者(敬称略)

第1回 ダニエル・ジル

第2回 小松達也

第3回 徳永晴美・米原万里

2021-05-08 翻訳フォーラム・シンポジウム(2021-05-16)

翻訳フォーラム主催のシンポジウムのお知らせです。

気鋭の翻訳者の集まり「翻訳フォーラム」は NIFTY SERVE(コンピューター通信)の FHONYAKU(翻訳フォーラム)が前身(というかその継続)だと理解しています。

2021年5月16日(日)にオンラインで午前・午後に盛りだくさんの内容でシンポジウムを主催します。

翻訳フォーラム・シンポジウム2021~力のつけ方、のばし方~

翻訳の情報を得たいなら、実際に稼働している翻訳者をつかまえていろいろ聞くのが確かです。多様な専門の翻訳者が登壇して翻訳の実力をどうつけるかを中心に語り合う場なので関心を持つ方も多いと思って紹介する次第です。


バングラデシュ人やパキスタン人の経営する食材店は品揃えが豊富で安い。

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2021-04-27 日本通訳翻訳フォーラム2021

【本ブログの筆者は日本会議通訳者協会の会員であり、今日の投稿は同協会の催しの宣伝です】


一般社団法人日本会議通訳者協会が主催する
日本通訳翻訳フォーラム2021
の受付が始まっています。

昨年「日本通訳翻訳フォーラム2020」として初めて「通訳翻訳」の名を使いました。すべてのセッション(講演・講習)をオンラインで実施。

知りたいことが見つかるかもしれません。そして、それよりも(きっと)すばらしいのが自分と同じような考えを持つ人・同じような悩みを持つ仲間に出会う機会になること。フォーラムがきっかけになって他の通訳者・翻訳者と刺激的なやりとりが始まったという話を多く聞きました。

昨年聴衆として参加し、今年は登壇者になっている人もいます。

これからも登壇者が確定するごとに同協会の案内ページが更新されていきますのでぜひ定期的にご覧ください。

2021-04-26 業務量はあるが、傾向は異なる。

昨年(2020年)の4月は月間売り上げが2017年以来最低の月でした。当時はどうなることかと思いましたが、今年の4月は開業以来第5位の月になりました(直前の3月が月間売上で過去最大)。

月間の業務日(仕事があった日)が18日、業務回数が 27回。長期出張で同じ現場に入る以外ではほぼ上限といえると思います。

以上が良いニュースだとすれば、受注先の数が限られていたのが懸念材料です。受注は私の努力ではなく、偶然の産物でした。新型コロナウイルス流行で通訳市場も大きな影響を受け、業務形態や顧客の構成が変わったという話を仲間の通訳者からもよく聞きます。当座を持ちこたえたら次になにをするか考えないといけませんね。


横浜市緑区の「ルシインドビリヤニ」は南インド料理専門。調理担当の2人は共にタミールナドゥ州から来ているそうです。

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緑が濃くなり、光も強く。

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2021-04-12 価格決定の枠組みは変わるか

新型コロナウイルス流行で通訳業界にも大きな変化が生まれる可能性のお話です。


多くの通訳者と同様、在宅で仕事をすることが多くなりました。2021年1月から3月の業務の約8割が在宅です。顧客の事務所で仕事をするときもすべて通訳者専用の部屋で遠隔会議に参加する方式でした。

遠隔会議は地上の会議よりも時間が短くなります。
・物理的に集合して着席する手間がない
・会議前後の雑談の時間がない
・長くなると疲れてしまう
・時差のある地域からの参加も多く、時間枠に制限がある

そしてこのことが通訳報酬体系に影響する可能性は大きいと思います。


通訳業界では「全日または半日」という建値制度を長年使ってきました。全日とは午前・午後の両方、半日は午前または午後の従事です。

理由として最も納得性があるのが通訳者の機会損失でしょう。通訳者が午前だけの業務を引き受ける場合には午後のみの業務を引き受ける可能性が残ります。午前・午後を逆にしても同様です。そのため半日料金を全日料金より低く設定しても(理屈の上では)通訳者は収入を極大化する可能性が残ります。

通訳者の「時間の買取」に近い考え方で報酬が決まっているわけです。この延長で出張時の「移動拘束手当」の支払いも正当化されます。移動中は他の業務を引き受けられないから報酬の補填が欲しい。しかし移動中は時間をある程度自由に使えるから通訳報酬と同程度の金額では高すぎる。「落としどころ」として「全日報酬の xx% 」といった手当の適用が一般化したと理解しています。

そして顧客の指定する現場で通訳を提供するには移動時間が必要なので、仮に通訳業務が半日よりかなり短く終わるとしても半日料金が正当化されます。


在宅勤務になるとこうした前提がかなり変わってきます。日本と北米をつなぐ早朝会議の通訳をした通訳者は、昼間のアジア域内の会議・夕方の日本と欧州をつなぐ会議で仕事をする可能性が残ります。遠隔で機動的に短時間の打合せをすることも増えました。仲間の通訳者から1日に複数の業務を担当する話をずいぶん聞くようになりました。

顧客も会議時間が短くなるのを意識するようになり、特に日本国外の通訳エージェントから「時間当たり通訳報酬」の見積もりを求められる場合が出てきたと聞き及んでいます。


新型コロナウイルスの流行が収まり従来型の通訳業務が増えて「時間あたり報酬」に対する要求が沈静化するか、それとも遠隔会議が常態化して通訳報酬の考え方も変わっていくのか。真実はおそらくこの二者の間のどこかになるように思います。変革期を目撃するかもしれないという柔軟な発想が必要だと考えています。


神奈川県大和市小田急江ノ島線「南林間」駅近くのベトナム料理店「カムオン」はおすすめできます。料理が洗練されていて店内も広くて明るい。フォー(米の麺)がとてもおいしい。

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