50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2019-12-10 油断しました。歯科治療

歯が1本不調なだけで通訳者人生は危うくなるというお話です。


臼歯のセラミック冠を割ってしまいました。嚙み合わせるときに上下方向だけではなく左右の力をかけてしまい、横方向の力で欠けてしまったようです。

それだけなら特に痛みもなかったのですが、食事をして食物が隙間に入り込んで上下圧が横方向の力に変わり、隣の歯を横方向に押して痛みが出ました。高齢者の歯が抜けるとドミノ倒しのように歯の傷みが連鎖するという話のとおりです。

痛くないようにそっとそっと食べると食事も楽しめません。一日がなんとなく低調になってしまい、通訳の出来も今一つと感じてしまいます。

幸い仕事が早めに終わり、歯科医に電話したら
「今日いらしてください」
とのこと。医師は自分が治療した箇所に不具合が出るとすぐに対処したくなるようです。ありがたいこと。

さっそく割れた冠を除去して噛み合わせ型を取りました。仮の処置で歯根を保護したら痛みがなくなり一安心です。


歯に痛みを感じて仕事に出る早朝に24時間営業のドラッグストアでイブプロフェン系鎮痛剤を買いました。効きますね。そしてきっかり4時間半後にまた痛くなる。薬を服用するとまた痛みが去る。薬ってすごいな、と思いました。


少し久しぶりの大田区大森「サーランギー」。ネパール定食「ダルバート」です。ほぼ完全食と呼んで良さそうですね。時計の12時方向の緑の料理は豆のスープです。鉄鍋で調理すると豆の成分と反応してこの色になるとのこと。これにチア(ネパール式ミルクティ)が付いて税共千円は安い。

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2019-12-10 深層インタビューの通訳

ちょっと変わった通訳業務のお話です。


市場調査(market research)や商品開発で消費者・利用者の意見を聞く手法に深層インタビュー(in-depth interview)があります。聞き取り担当者と参加者とが一対一で個室で対談します。くつろいだ私的な環境を作り出すことで本音を聞き出しやすくなります。

「インド料理を作るときに最もめんどくさいな、と思うことはなんでしょうか」
「必要なスパイスがひととおりパックに入った商品がもしあったら使ってみたいと思いますか」
「これは試作品なのですが、第一印象をおっしゃってみてください」
「いくらだったら買ってみようと思いますか」
「ホール(丸)のスパイスを直前に挽いてみたいと思いますか」
※この例はフィクションです。私が担当した業務とは関係ありません。


参加者合意のうえ録音・録画がなされ、言語化されないメッセージ(視線・体の動き)も読み取ります。答えが「はい」でも体がいやがっていることもありえます。

そして、開発チームが日本語を解さない場合に通訳者が動員されます。同時通訳していくことで参加者の反応全体をその場で観察し、必要があればインタビュー担当者に追加の質問を依頼できます。


この仕事を初めて経験したのは偶然からでした。通訳者仲間が急な事情で現場に行けず、急に呼ばれて代わりを務めたのがこの仕事だったのです。

それ以来異なる産業分野でいろいろなインタビューを訳しました。密室にこもって本人の知らないところで通訳し、その訳出が開発・戦略に大きな影響がある点に取り組みがいを感じます。参加者の一瞬のとまどいや不安、不満まで等価で伝える重要性があります。「えっと」と「うーん」とでは心の動きは違う。「ああ」と「へえ」でも違う。言葉のやりとりに脈絡がないことも多い。


国際会議や取締役会とは違った緊張感があります。最近はこの仕事を打診されるのが密かな楽しみにもなりました。話者に極限まで寄り添って訳すという点で、それを同時通訳でおこなう点で特別な仕事だと感じています。

2019-12-08 多種多様な仕事

いろいろな仕事をすることが励みになる通訳者もいるというお話です。


企業勤務を28年した後に自営業の通訳者になったので、
「なにからなにまで違う」
というのが楽しみな日々が続きます。

事業計画を立てなくて良いし、仲間の管理職と頭を突き合わせて悩む人事考課も過去のこと。

ノーベル生理学・医学賞受賞者の講演や国連大学学長参加のパネルディスカッション、シェア世界首位企業のCEO特別講演などを同時通訳する日々が来るとは思いませんでした。こうしたいかにも「会議通訳」といった仕事だけではなく企業活動の最前線にかかわる「現場の通訳」も実に取り組みがいがあります。

通訳の本当の面白さではなくて「珍しさ」がまだ先に立っているのかもしれませんが、そうした外から見た評価は気にせず。好きで入った道です。のびのびと仕事をしようと思います。


県境を2つ越えたり。

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恵比寿駅の日比谷線乗り換え案内になぜかキリルアルファベットが使ってあったり。

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2019-11-30 技能の向上はたまねぎのように

「ああ、こういうことだったのか」
と何かをわかった気がしても、やがてまた同じ思いをするというお話です。


通訳者は逐次通訳をするときも同時通訳をするときも等しく忙しい。逐次通訳では聞いているときから訳出の精神活動は始まっていて、聞いて・理解して・ノートを取って・訳の算段をして、ということが混然一体と進行しているように思います。

このことは通訳学校に行っていたときから知識としてはわかっていましたが、ごく最近逐次通訳ばかりを集中して担当する機会に
「なるほど、しっかり聞くってこういうことなのかもしれない」
と改めて感じることがありました。聞いて、話全体の意味をぐっとつかみとる集中の程度が今までは甘かったのかもしれないと思ったのです。

以前にわかったつもりだったことは実はたまねぎの層みたいなもので、同じような「発見」はまだまだ続くようです。


窓際の席で昼食です。

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2019-11-24 ちょっと特別な日々

通訳業務はどれも特別なものですが、今回は同席した通訳者が特別だったというお話です。


通訳学校インタースクール東京校に通っていたときのことです。会議通訳本科Iで1日だけ同じクラスになった受講者がいました。半年ではなく1日。なぜかというとその方は次週から飛び級で次の課程に進んだからです。


その後その方とは折に触れやりとりがありました。フリーランス活動は私のほうが先行したので被雇用(社内)からフリーランスに移行する悩みの相談など、今となっては懐かしく思い出します。


そして今年 2019年はずいぶんと一緒に仕事をする機会に恵まれました。なかでも感慨深いのは専門度の高い仕事を逐次で行った業務。通訳業務の形態にもいろいろありますが、逐次の2人体制はちょっと特別ですね。通訳者相互にもう隠すものは何もない。スティーブ・ジョブズの表現を借りると

You are already naked.

なわけです。原発言の解釈、表現の選択など、ずいぶんと学ぶことがあります。

通訳者2人が相互に敬意を払って共同して仕事をすると顧客に良い印象を残します。お客さんに最大の価値を提供しようとする姿は必ず通じるものだと思います。幸いにも顧客からもそれなりに評価されたと後日聞きました。明日への励みとなります。


いつものカフェの若い男性店員が手際よく木の葉を描きます。

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2019-11-23 逐次訳が必要なとき

会議時間を短縮するために同時通訳の需要が多いのですが、逐次訳が必要なときもあるのではないかというお話です。


たとえば過去の成功体験の延長から離れるために新しい考え、それも自己否定を含むような情報を取得するとき、同時通訳でどんどんと訳が進んでしまうよりは逐次訳で
「ハラに落ちる」
時間が必要かもしれないと思う場面を今年も何度か異なる業務で見かけました。

同じ言語を話すときには不要な通訳という人工的な過程が介在することで付加価値が生まれるような気がします。


いっぽう著名な話者による講演ではある程度予期していることばかり聞こえてくるときもあるでしょう。多様性の重要さや世界平和の推進など。こうした場合には同時通訳で臨場感を得たほうが全体としての効果は大きいかもしれません。


高品質の逐次訳には単に言語サービスを越えた何かがあるのではないか。ちょっとそんな気がしました。


ナンディニ虎ノ門店で食べる菜食ミールスは実においしい。チャイ(インド風煮出しミルク紅茶)の供し方が斬新でした。トリチェリの真空を思い出します。

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2019-11-18 立ち止まって少し考える

自分は何をしたいのかを考える機会があったというお話です。


カフェで少し学習でもと思って出かけました。着いてからわかったのが素材を持ってきていないこと。

さてどうしましょうか。外部からの入力を絶つ良い機会なのだと思い当たり、今後どのような仕事を中心にしていこうかと少し考えを巡らせました。

通訳専業で5年半ほど仕事をして毎日手ごたえを感じて過ごしてきました。それでも千件ほど現場に出ると自分に向いている仕事やもっと取り組んでみたい仕事も少しはわかってくるかもしれません。過去の業務の一覧表に自分なりの評価を付けて分類してみようと思います。複雑なことはせず、

  1. もっと取り組みたい
  2. 取り組んでもよい
  3. 減らしてもよい

という記号を付けてまとめてみようと思います。


昼の開店直後に行ったらチャパティ(全粒粉小麦粉の発酵させない薄いパン)ができたてですばらしい香りと食感。このチャパティと野菜のおかずが1品あれば十分と思わせるだけのものがありました。厚木のボンベイ

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