昨日の記事で現場には早く着くと書きましたが、正確には
「早く現場を確認し、その付近で待機する」
ですね。待ち合せがあったり入館時間がまだの場合もあります。
何度も訪れる現場なら近くに立ち寄るカフェを決めてあります。A現場なら地下街の Tully's 、B現場なら高架下のドトール、C現場なら途中のガスト、D現場だと駅近くのベローチェ など。
飲食物の質や雰囲気とは別に、自分にとってなんとなく慣れて居心地が良い店ができてきます。
2017-04-09 労働者と個人事業主と という記事で
顧客にもエージェントにも使用者責任は生じません
と書きましたが、日本型のエージェント(元請人)の場合、通訳者の選定等の責任を負いますし、指揮・監督の責任が生じる可能性がないとは断言できないようです。
使用者責任の考えは雇用者(会社)・被用者(社員)の他にも拡大して解釈される可能性があるかもしれません。
貴重なコメントを付けていただいた かたな さんにはこの場で御礼を申し上げます。
通訳役務の提供で顧客から苦情が来たら、まずエージェントが対応し、そのうえで通訳者に責任があればエージェントと通訳者との間でのやりとりとなるわけです。
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エージェントが通訳者をどの程度「指揮・監督」するかは個別の問題となると思います。ここも派遣社員との質的な違いはどうかについて少々微妙な点かも…。
通訳の仕事でおそらく最も大切なのは
・指定された時間に
・指定された場所に
・指定された準備をして
到着あるいはログインすることです。
これができなければ、どれだけすばらしい訳を出す能力があっても零点です。
企業勤務と違って業務の請負です。道に迷ったとかバスが混んでいたとか電車が遅れたというのは顧客にとっては一切関心のないこと。
この点ではいろいろと気をつけてきました。
通訳業務を始めたころに工業施設で待機時間の多い仕事を経験しました。待つことに慣れてとてもよかったと思っています。今では都区内の現場なら集合時間の40分くらい前に着くようにしています。40分あれば電車が止まってもなんとか間に合いますし、カフェで資料を確認したり、現場の状況を見ることができるときもあります。
早く着いたおかげで会場に早く入れてもらい、新しい資料の存在を知ったこともありましたし、話者と打ち合わせができたこともありました。
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社内通訳者は多くの場合社員(期限の定めのない社員 = いわゆる正社員、期限の定めのある社員 = いわゆる契約社員、派遣社員)の身分で仕事をします。
この二つの形態はかなり異なるので、社内通訳者からフリーランスに転向しようという方はフリーランスの働き方についての本を何か1冊読んでおいたほうがいいと思います。税金・年金の違いが話題になりやすいのですが、もっと本質的で重要な点があまり取り上げられないように思うので…。
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● 使用者責任 (注)
フリーランスは具体的・詳細な作業の方法については指示を受けずに成果物を納入したり役務を提供します。顧客にもエージェントにも使用者責任は生じません(エージェントに元請負人としての責任は生じますが)。通訳者が顧客に損害を与えたら通訳者が賠償の責任を負います(← この部分断言はできないかもしれません)。会社員ではないので「カイシャ」が何とかしてくれることはありません。
2017-04-10 訂正・追記 エージェントには実質的な使用者責任が生じる可能性もありそうです。
● 労働者の保護
フリーランスは労働者ではないので、顧客やエージェントには通訳者を指導したり保護したりする義務がありません。健康診断を受けさせたり、必要な安全講習を受けさせることはありません。通訳者が「請け負います」と言ったら、すなわち「一人でできます」と言ったのと同じ意味になります。労働者ではありませんから、労働者災害補償もありません。昔の表現だと、「怪我と弁当は自分持ち」なのです。
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私は企業勤務の社会保険労務士として8年の経験があったので、雇用(会社員)と業務請負(フリーランス)との違いはよく理解していました。
ですから、通訳業を始めたときから
「もし自分が何かの事情で通訳の現場に行けなくなったらどうしようか」
ということも強く意識していました(趣味の二輪車を手放したのもこの理由から)。
卒業した通訳学校の母体である大手エージェントからの仕事を中心に請け負ってきた理由の一つもこの点です。もし私が交通事故に遭ったり急病になっても、大手エージェントならだれかを代わりに現場に出してくれる(確率が高い)。私も同じクラスで学んだ人の代わりならどこへでも飛んでいくつもりです。
また、日本初の通訳者のための同業団体「日本会議通訳者協会」の会員になり、各種イベントや事務で「顔を広く」してきたのもいざというときの「保険」という意味合いがあります(実際に会員相互の「助けて!」「わかった!まかせて」というやりとりがあります)。
通訳者も年代によって子供の急病・老親の容態の急変など、他の人に助けを求める場合が出てくるのはほぼ確実だと思っています。
通訳は
「その時間に・その場所に」
いることが求められる仕事です。自営業者には労災保険も雇用保険(失業保険)も傷病手当金もありません。リスク管理については確かな情報を元に考えておく必要があると考えます。
注: 使用者責任については近江法律事務所様のサイトにわかりやすい記述がありましたのでリンクしました。同事務所にはこの場で御礼を申し上げます。
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倉橋ヨエコの「今日も雨」。この歌詞は心にしみます。底抜けに明るくて、それでもどこか諦念が漂う。映像との組み合わせが実に巧み。ドラムス・ベース・ギターの演奏も達者です。通訳者のための歌だなあ。
社内通訳者を経験した後に通訳専攻の大学院に進学する方のブログを偶然見つけました。
yuri さんの
通訳と少し贅沢なご褒美と
私のブログには社内通訳についての記事がない(経験がない)ので、以下の記事などは情報量が多くて参考になります。
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通訳の出来は3歩進んで2歩下がる、と感じることのほうが多いかな…。そんなとき、ダルバート(dal = 豆スープ、bhat = 米飯)というネパールの国民食は優しく癒してくれる気がします…。大森の「ナタ」はタカリ族の料理だそうです。
最近うれしいことがひとつありました。
前回いくつか反省点のあった仕事を再度担当したときのことです。
「次回はこうしてみよう」
という思いがいろいろとあったのですが、まず1つに絞って改善を試みました。日本語を英語に訳すときに、通訳者の自分勝手と聞こえかねない訳は出さないようにしようというものです。やや保守的に手堅く、話者が英語を理解するとしたら違和感を感じないように。逐語的ではなく十分にこなれた英語で表現しますが、あくまで多くの人が「第一候補」として認めるような訳を出す。
この意識があると、訳出で口をついて出てきそうな表現に対して監視が働きます。本来そうあるべきですね。
その日の業務ではかなり用心深く忠実に表現し、それでも良い流れで訳せたと思います。
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この「監視」が働くと聞くのも注意深くなりました。より忠実に、と思うとしっかり聞くのですよね。
なんだ、通訳の基本に立ち戻っただけのようです…。
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静岡県の川根温泉ふれあいの泉。半官半民の施設です。毎分 800L の天然温泉が湧出。塩素消毒がないと本当に気持ち良いですね。
大井川鐡道の蒸気機関車が日に2回通るのを露天風呂から眺めることができます。
(この写真は駐車場から撮影)