50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2017-01-23 間に合ってます

通訳者になるには決まった道筋というものはありません。

通訳学校に行けば仕事を紹介してもらって、というほど単純ではないかもしれません。


まず、大原則として、たいていの通訳者は
「あんた、だれ?」
という目で見られる状態から仕事を始めることになります。そりゃそうです。いままでその業界で仕事をしていないのですから…。

そして、客先側には新しい通訳者を使おうという動機はありません。
「通訳者? 間に合ってます」
というのが普通でしょうね。私たちが駅で新規開店した美容室のチラシや店名入りのティッシュペーパーをもらうのと同じようなものでしょう。


通訳者の仕事は、他のだれかがしていた・している仕事をちょこっと回してもらうことから始まる場合が大部分でしょう。

 


新橋駅近くのビルにあるインド料理店 モティ新橋店。北インドのしっかりした料理を出してくれる貴重な店です。昼のBBQランチにはびっくりしました。すばらしいタンドール料理(ロースト)が付いて 1,300円。他店でタンドール料理が付いた1,000円程度のセットを10回食べるよりここの1回のほうが記憶に残ると思います。いちばん右はエビです。

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2017-01-22 Manageable chunk

通訳の学習を続けている人はまじめに努力している場合がほとんど。さらに、言語を扱う能力を十分に持ち合わせていることも多いと思います。

しかし、ここに落とし穴もあります。

「知」「理」の実力があるために、自分が出す訳文を少し難しいものにしてしまう傾向があるのではないかと思います。自分の考えであれば自由に組み立て、必要に応じてまとめたり言い換えたりできます。比較的「大きく構えて」話し始めてもなんとか「着地」させることができる。

通訳の場合には若干勝手が違います。自分以外の人の考えを、また別の他の人に伝える必要があります。こうしたときに通訳者が「自分の手のひらで転がすことができる」文章の大きさ・複雑さには意外と制限が大きいのではないかと思います。ひとつの文章として御す長さ・複雑さは押さえ気味にしておかないと危険かもしれません。

高い知能・言語処理能力があるために良いノートが取れたとします。それを縦横に駆使して立派な訳文を出そうとするときに途中で止まってしまう危険があります。安全なサイズ(manageable chunk)で話者の考えをレンガを積むように確実に聞き手に届ける方策も非常に重要だろうと思います。そして、これは聞き手にとっても楽で
「よくわかった。良い通訳だ」
と感じてもらうことにつながります。人間は身勝手なもので、自分にとって心地良いものが高品質だと判断しがちなのです。

 

竹には勢いがありますね。

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2017-01-21 損切り--雑誌の処分

The Economist を定期購読しています。目をいたわりたいので紙の印刷版です。

週刊なので昨年の中頃までなんとか読めていたのですが、出張や遠距離通勤の業務が続いて10週間分ほど読めずに積みあがってしまいました。

少しずつ追いついてきたと思ったら、再び出張で読む時間がなくまた差が開いてしまいました。

「過去分もなんとか読めそう」
と思ってきたのですが、現実はそんなに甘くないようです。

思い切って過去分を廃棄しました。新たに届く分をかろうじて読んでいる状態なので過去分を読む時間は永遠に来ないと考えるほうが現実的だと悟ったのです。

「もったいない」
「せっかく」
という思いにふりまわされると、前に進む元気が吸い取られてしまう恐れがあります。悪天候の登山と同様、引き返す勇気を忘れずにいようと思いました(このたとえはちょっと大げさですけど)。

 


大和市スリランカ料理店「シナモンガーデン」の新メニュー「スリランカプレート」。カレーの他におかずが5種類付いて 1,100円。

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梅が。

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2017-01-19 ブレイクスルー、ではないけれど

しばらく前に逐次通訳ばかり数日間担当しました。専門的な内容でやりとりの数も多く、かなりの試練でした。

発言を丸ごとさっととらえることができれば最小限のノートで間髪を入れずに落ち着いて自然な訳出ができます。うまくいかないときはすべてが逆となります。つまりすっきりとしない状態でなんとかノートを残すと一瞬の準備時間が必要になるし、「何かを探しているかのような」訳が出てきてしまいます。

幸い内容にはなじみがあったので早い反応で良い訳を出すことができたと思います。特に問いと答えとをしっかり組み合わせることができ、自分なりにささやかな満足を得ることができました。ブレイクスルーといった椿事ではないながらも、
「今までよりは少しはましだったかもしれない」
と思えるのはうれしいものです。

話者のことばがすっと通訳者の頭に入ってくるとすべてがうまくいきます。問題は毎回異なる現場でこの状態をどのようにして実現するかですね。


もう一つ。最近「要人対談スタイル」も体験しました。これはちょっと緊張しますね。対談の相手方はその相手方が自ら手配した通訳者を使います。相手方通訳に大きな間違いがあれば通訳者はその場で、あるいは事後に指摘・訂正をします。びびり…。報道が入る場合も多いので自然な姿勢でいることも大切かと。靴は上品で手入れの行き届いたものを履きましょう。靴下にも注意。

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2017-01-18 日本通訳フォーラム2017

日本会議通訳者協会主催の
日本通訳フォーラム2017
が 2017年8月26日(土)に開催されます。

今回の基調講演は(あの)鳥飼玖美子立教大学名誉教授です。

今回で3回目となりますが、第1回・第2回とチケットが完売となりました。

参加を希望される方は早めの申し込みが安全かと思います(早期申し込み割引あり)。

今回も基調講演の他に8つのセッションを設け、他ではなかなか聞けない貴重な情報を共有する機会となるはずです。

 


過去の記録です。

日本通訳フォーラム2015

日本通訳フォーラム2016

 


日本会議通訳者協会の会員になるとフォーラム参加費が大幅割引になる他、過去フォーラムのセッション動画を無料でオンライン視聴することができます。

入会申し込みはこちらから。
入会案内 - 日本会議通訳者協会

 

※ このブログの著者 Shira は日本会議通訳者協会の会員であり、この記事には会員募集の意図を含むことを申し添えておきます。フォーラムへの参加・協会への入会はご自身の判断にてお願いいたします。

 

2017-01-17 まず体と心と

数日間続いた出張で通訳をして、体力と気力との重要さを改めて感じます。途中少し体がだるくなり、わずかに熱っぽい気もしました。

「む。これは危ない…」
と、消化の良さそうなものをよく噛んで食べ、早く寝るようにしました(1日はやむを得ず夜半過ぎまで準備しましたが)。

アルコール摂取を止めているのも良い方向に働きます。

無事に業務を終え帰宅し、
「自分の身体よ、ありがとう」
としみじみ感じました。


疲れを感じる前に休むのが最高の対策のように思います。

2015-09-14 疲れる前に休め


今回が今までと勝手が少し違ったのは、日程がさほど厳しいものではないのに疲労感が大きかったことです。フリーランス通訳者の常として、「新しい場所・新しい人・新しい内容」を扱うので、精神的な負担が大きいのですね。

心身の管理や危険信号の察知、資源配分(特に準備と睡眠とのトレードオフ)は経験を積む中で自分なりの方法が確立するように思います。

 


若いときにはあまり興味のなかった温泉ですが、最近は特に強い引力を感じます。この写真は 2012年くらいのもの。

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2017-01-15 通訳の疲れ

移動を伴う内容の濃い通訳を数日連続で担当しました。翌日の準備をしているとホテルの部屋で午前1時とか…。

なんとなく熱っぽく脱力感もあり、かぜをひいたかな、と思いました。

明け方目が覚めて、疲れているのでまた寝ようとすると仕事と全く関係ないことが頭の中で渦巻いたりしました。半ば夢の中で何かを正確に言語で描写しようと一生懸命なのです。
「どうでもいいことをなぜそんなに一生懸命表現しようとするのか」
と考えのグルグルを断ち切って寝ましたが…。


肉体の疲れではなく、精神的な面でツケが回ったようです。数日間他人の考えばかりを聞いて・話してきました。この「頭脳乗っ取られ」現象って、意外と負担になるのですね。

 


良質なインド・パキスタン料理を手ごろな価格で提供する「ティッカ アンド ビリヤニ」グループ。上野の「サルマ ティッカアンドビリヤニ」で3種のカレーが付く「アプサナランチ」。これに小サラダと飲み物が付いて 950円は立派。ナンかご飯かを選べます。ご飯にすると長粒種米ですよ。

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