50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2019-05-02 ノートPC

自宅や出張先で毎日使っているノートPCのお話です。

私にとって初の本格的な技術通訳の仕事になった出張業務は2014年の夏に始まりました。

当時使っていたPCはデスクトップ。エプソンダイレクトの静音型 AT980E です(2010年に購入してまだ使っています)。

その年の春に初めて通訳現場にる直前に Androidタブレットを買いました。仕事先までの往復や休憩時間にインターネットで調べ物をするときにずいぶん役に立ちます。


2014年に2週間ほど出張に出て、業務地で資料を電子ファイルで渡されることになりました。小画面のタブレットでは使いにくいのでノートPCの購入を決心しました。東芝オンラインストアdynabook R73/W3M を購入しました。配送先を宿泊先のホテルにしたのが良い思い出です。

それ以来自宅でもこのノートを主に使うようになりました。いままでの不具合は2回。

  1. キーボードコントローラの故障。3年延長保証でぎりぎり間に合い、無償修理。
  2. キーボードのキートップを失い修理見積に出したところ、内蔵カメラが動作していないとの診断でメインボードも交換。かなり高額だが、電解キャパシタなども寿命が近づいていたはずなので延命として交換。

インテル i7 2.5GHz プロセッサに 8GB メモリなので私の使途では性能的に全く支障がありません。Windows10の発表時に無償アップデートを適用し、2018年にHDDをSSDに交換しました(とても快適になったのでデスクトップもSSDに交換)。

4年半使って自分でSSDを入れたり Windows10 のクリーンインストールをしたのでなんとなく愛着があります。まだしばらくは使っていたいと思います。


使用状況:
キーボード中央にポインティングデバイスがあるので自宅でもマウスは使いません。手前のタッチパッドは無効にしています。本家 IBMトラックポイントほど自然な感じではないのですが、使っているとすぐに慣れます。左手の人差指でポイントし、左手の親指で左クリック・右クリックしています。

業務先でタッチパッドのあるPCを使う時には左手親指でタッチバッドとクリックを操作しています。デスクトップPCのときには右手でマウスを使っています。マウスは左右どちらの手でも全く同じ感覚で使えるので、ときどき左右の手を入れ替えて疲労防止にしています。持ち替えてもマウスボタンの左右入れ替えはしません。


交通信号を隠して電線にも干渉するので切られてしまいました。この場所で信号を待つ人に木陰を提供していたのですが。おそらく明治維新、日清・日露戦争日中戦争・太平洋戦争、経済成長を見届けてきたはず。

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2019-05-01 同時通訳者のここだけの話(書籍)

今回は書籍の紹介です。

日英通訳者である関根マイクさんが書いた

同時通訳者のここだけの話  (アルク)

です。

ここでわたくしがいろいろ書くよりもぜひ読んでみていただきたいと思います。単行本として素材を吟味し、章立てを考えて書いたものはウェブサイト上の文章とは違った良さがあると改めて思います。

関根さんは翻訳も生業としているので書き物はおもしろいんです。そしてとてもまじめで誠実。人の肩をどーんとぶったたいて回っている姿と若干のギャップを感じるのは私の観察が浅いためでしょうか…。

 

2019-04-30 直接契約の顧客

エージェント経由ではない通訳業務、いわゆる「直請け」のお話です。

顧客との出会いは実にいろいろで、通訳者の数だけ縁があるといってもよさそうです。今まで見聞きした類型を記してみます。

  1. 以前に社内通訳者をしていて、フリーランスになってからもその企業から発注がある
  2. エージェント経由で通訳をしたところ、聴衆や相手方企業から接触がある
  3. 通訳者仲間から紹介される
  4. 自分が参加している活動経由で通訳業務の照会を受ける
  5. LinkedIn や Facebook などで連絡をもらう
  6. 通訳者自身のウェブサイト経由で連絡がある(自ら営業活動をしている)
  7. 積極的に営業活動をする

私の場合は上記の3・4・5で合計4つの客先と縁がありました。うち1社からは継続して仕事の発注を受けています。今般同社から許可を得たので経緯と業務内容とを参考になるかと思い紹介しておきます。


一般社団法人日本会議通訳者協会のウェブサイトに通訳業務を掲示する申込フォームがあります。日本以外では顧客が通訳者に直接業務依頼をすることが多いので、日本市場の特徴(エージェント主導型)を知らない外国企業や個人から
「こんな仕事があるけど、だれか請け負いませんか?」
という問い合わせがあります。

同協会は非営利なので会員向けの掲示板に業務内容をそのまま転載するだけです。関心のある通訳者が自分の責任で連絡を取ることになります。


しばらく前のこと、英国ブリストルに本拠地のある InsideAsia Tours というアジアを深く知るツアーに特化した旅行会社から投稿がありました。福島県の震災被害・復興を知るツアーを組むので通訳者を求むという内容です。

この掲示を見た瞬間
「これは私のための仕事だ」
と強く感じました。震災・復興関連の通訳業務を経験していましたし、外国ジャーナリストによる取材や各国機関による視察の通訳も多数担当しています。

直接の、それも外国の見込み客にすぐに対応できたのはそれなりの備えがあったからです。いつの日か直接受注ということもあるだろうと LinkedIn にアカウントを作り、日英両言語で簡単な経歴を掲示していました。エージェントに対しても業務経歴書は日英版で提出していました(日本国内の発注でも発注権限者が外国人ということも多いですから)。

ですから、ただちに
「この件に関心大いにあり。LinkedIn のプロフィール見られたし」
と第一報を送ることができたわけです。

メールのやりとりや InsideAsia Tours の評判を一通り調べた結果(企業勤務時代に新規取引先の調査をしていた経験が生きます)、この会社は安心だろうということで経歴書と見積書とを送ります。後の紛争を防ぐために諸条件はしっかり書いておきます。

値付けは最も重要です。エージェントが間に入らないので資料や出張の手配、報酬の請求はすべて自分で行うので事務経費分の上乗せを忘れてはいけません。万が一の貸し倒れ(代金回収不能)リスクも含めて設定します。そして忘れてはいけないのは
「次回があったらどうするか」
ということ。初回に安くするとそれが前例になってしまいます。通訳報酬と移動拘束費や宿泊手当(日当)のバランスや競合(エージェント)がいくらの見積を出すかも含めて考える必要があります。


その回のツアーは InsideAsia Tours と The GREEN Program の共催によるものでした。参加者は米国の大学・大学院で研究をしている方々で、視察や表敬訪問でも切り込みの鋭い質問をして通訳者の仕事を価値あるものにしてくれました。The GREEN Program の創設者 Melissa Lee さんと福島で会えたのも非常に幸運でした。同氏は Forbes が選ぶ 30歳未満の 30 人 の1人に選ばれています。


二回目の発注では私が動けない日もあったので信頼できる仲間の通訳者にも入ってもらい、初めて元請負人としての経験もすることになりました。任せる・任せてもらえる通訳者にすぐ連絡ができることの大切さがわかりました。


幸運だったこともありますが、
「幸運は準備あるところに機会が訪れるときに生じる」(セネカ
というのも間違いないと思います。LinkedIn の英文プロフィールを作るのなんかまだ先でもいい、経歴書はとりあえず和文だけでいいと先延ばしにしていたら対応できなかったわけですから。


ここまで読んでいただいた方にお礼を申し上げます。
「こんな良いことがあったよ」
と言いたいわけではなく、外国からの直接発注がどう始まったかを示しておきたかったのと、思いついたらとりあえず始めておく重要さの一例になると考えたのとで書いておきます。


マキアダチSmoky and the Sugar Glider とが出るのですから、行かないわけにはいきません。

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2019-04-28 通訳報酬の推移

通訳業を始めたときの初年度売上は微々たるものでした。それ以降上下動はありながらもゆるやかに上昇を続け、開業3年後からかなりしっかりとした足取りで推移するようになりました。

特別な事情(技能が卓越している・高報酬を払う顧客と特別な関係にある、等)がない限り、やはり年単位で仕事の質・量を広げていくことになるはずです。

3か月ごとに月間売上額の移動平均を取り、グラフにしてみました。毎月の変動が表面に出なくなって大きな流れが見やすくなったと思います。ありがたいことに増加傾向はまだ続くように感じます。

 

 

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首都圏で全日(午前・午後合わせて拘束8時間程度まで)業務の1日報酬が5万円~6万円程度になるといわゆる「トンデモ案件」(思わぬ展開・顧客の理解不足・エージェントの読み不足・そもそも無理という業務)がなくなり、顧客も通訳者を専門職として扱ってくれるようになるような気がします(通訳の形態・業界で大きく異なりますが)。つまり、報酬額が高くなると業務内容は高度になるかもしれませんが、仕事のしやすさも向上する。

そして例えば日額5万円で年間200日稼働すると年間報酬は1千万円になり、退職年金制度のある企業に勤める年収5~600万円の社員とだいたい同じくらになってくるのではないでしょうか(企業年金・厚生年金の現在価値等も考えて)。

「なんだ、それっぽちか」
と感じる方もいるかもしれません。そうなんです。社会保険適用・退職年金制度があり、有給休暇の取得率が高い企業はそれだけ(所得面では)有利なんです。年次有給休暇の威力ってすごいですよ。年間20日を「有給で」休めるということは、1日あたり4万円として80万円の「金券」がもらえるようなものです。育児休業や介護休業、健康保険による傷病手当金を使う場面も考えると企業勤務の比較優位はさらに高くなります。


ただし私の場合は企業勤務の楽しさ・厳しさを十分に経験してから自営業に進んだので
「人生が2度おいしい」
経験ができています。企業という強力なエンジンを使うからこそできることも体験しました。管理職として事業計画を作り人をまとめる難しさも十分に味わいました。そして今は自営業者として何でも自分で決め、日々新しい経験ができています。平日休もうと思えばだれに気兼ねすることなくいつでも簡単に休めますし、引き受けたくない仕事は「パス」しても誰も文句を言いません。

さらにちょっぴり狡猾で、自営業者は厚生年金の被保険者ではないので、事業収入があっても老齢厚生年金は全額支給となります(給与所得だと支給停止(一部または全部)がある)。「定年後に自営業は年金受給面で最も有利」といわれるゆえんです。


お弁当が楽しみなお客さん、こんどは新傾向…。

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2019-04-23 客先別業務量

引き合いを受けた業務は日程が空いていれば先着順で引き受けています。計算も駆け引きもありません。私なりの現在での「商人の道」です。私の通訳業務形態は(いまのところ)予約が殺到するレストランではなく、町の食堂なのです。お客さんには来てくれた順に料理を提供する。

生活できるだけの通訳報酬が得られる僥倖に対する感謝を忘れず。


いっぽう、受け身ながらも登録エージェントを少しずつ増やしていった結果、客先ごとの受注割合がなかなか良い感じになってきました。リスク分散の面でも好ましいのですが、それ以上にエージェントごとに特徴ある業務が経験できるのがありがたいのです。

今年の客先別報酬金額の割合は以下のグラフのようになっています。どの1社を失っても他のお客さんからの受注増で埋め合わせがほぼ可能なはずです(先着順に引き受けているので残念ながら先約のためにお断りすることもあり、未実現受注が存在する)。

引受先を増やしすぎると、引き合いを受けてもお断りするという「不義理」が多くなりエージェントが困ります。少なすぎると業務のない空白日が生じて通訳者の収入の面で問題が生じます。どのくらいが「ほど良い」のかは、ざっくばらんにエージェントに尋ねてしまうのも良いのではないかと思います(そうした相談ができる客先は大切)。

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2019-04-22 フリーランスさまざま

フリーランス通訳者といっても、仕事のしかたにはいろいろあります。

  1. 大手通訳エージェンシーからのみ仕事を請け負い、日程管理もほとんどエージェンシーが行う。
  2. エージェンシー数社に登録し、ある程度仕事を選びながら仕事をする。
  3. エージェンシーからの仕事と顧客から直接受注する仕事がある。
  4. 顧客から直接受注する仕事がほとんど。
  5. 顧客から受注し、自分で他の通訳者も動員し、通訳機材も手配する。

上記の1だと通訳の内容は多様かもしれませんが、そのいっぽう指図を受ける(他人が仕事を決める)という点では企業勤務と類似の度合いが高くなります。

フリーランス通訳者と呼ばれる多くの方は2ではないかと思います。ときどき直接受注の仕事もするかもしれません。


フリーランス」が何を意味するかを明確にする機会はなかなかないようですね。社員(被雇用者)でなければフリーランス。労働法や所得税法で見ればそのとおりです。

いっぽう、自分で見積書を作って請求書を発行するのがフリーランスの本質だと考える人もいます。私もこの立場に近い。

私も件数は少ないながら日本会議通訳者協会の掲示板やソーシャルメディア LinkedIn を通じて声がかかり、通訳の仕事につながっています。

見積書を作るときには古典的ともいわれていますが 3C モデルが参考になりますね。

  1. The Company…まず自分にとってどうなのか。できる仕事なのか、したい仕事なのか、そして生計を立てることに資すものなのか。
  2. The Customers…顧客にとっての価値は何か。何を提供すれば客の成功につながるのか。
  3. The Competitors…他の通訳者やエージェンシーだったらどのように受注しようとするのか。私が比較優位に立つにはどうすればいいのか。

見積書に金額を記入して提出するときの気分はなんともいえませんね。


リゾートホテルの敷地内。以前は鉄道があった土地。

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駅からの道には歩道の照明が。

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千と千尋の神隠し」みたいな…。

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2019-04-21 自立

会社勤務の生活は 1980年代から2012年まで続きました。その間毎月決まった日に給与を受け取っていたのですね。

組織の歯車という言葉は否定的な文脈で用いられることが多いのでしょうけど、歯車がきっちりと動力を伝えることも欠かせません。さもないと電車は動かず野菜も食べられず水も出ないでしょう。

企業で勤務する人は実際には動力を伝えるだけではなく、何かを起こす・生む仕事もしています。それがおもしろいから私も30年近く続いてきました。


自営業(フリーランス)通訳者になったら仕事の取り組み方やお金の入り方は大きく変わりました。会社のように力を合わせて分業で大きなことを成し遂げるということはないのですが、自分一人の力で、それこそ「腕一本で」暮らしていけるという感覚もすばらしいものです。

自分の技能に自分で値段を付け、自分で選んだ仕事をして市場が評価してくれる。このことは私に大きな満足感を与えてくれます。