50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2014-02-01 気になる表現を確かめておく

日英通訳でときどき出てくる「企業概要」にも地雷が埋まっていました(私の場合)。

たとえば、会社説明会
「それでは弊社の全般的な状況を申し上げ…」
などという場合です。

outline/overview がするりと出てくると良いのですが、通訳者(私)がぼけっとしていたり、原発言者が「総括」なんて言うとうっかりと
general situation of the company
などと口走りそうになります。違和感を憶えても特に同時通訳では止まるわけにはいきません。

さて、Google で検索してみましょう。

"general situation of the company"  258万ヒットです。

なーんだ、おっけーじゃん、と思うと危ない。母語話者代表として英国に登場願います。ドメインを uk に限ります。

"general situation of the company"  site:uk   3ヒット。

nz なら 2ヒット、ca なら 1ヒットです。つまり、英語の母語話者はおそらくこう言わない。米国でも調べたいのですが、com を指定すると世界中のサイトが対象になってしまうので…。試しに org で調べてみると 7ヒットです。

※ "general situation of the company" は de(ドイツ)で 3万、cn(中国)で22万ヒットでした。自国語に引きずられるのですね。

"overall situation of the company" も一般的ではないようです。

"outline of the company" site:uk  だと 974万ヒットでした。

"current situation of the company" site:uk で 41万ヒットですから、 situation が悪者なのではなく、general の使い方が問題のようですね。英語の辞典で general を見て納得しました。

2014-01-31 通訳学校 マーケティングに注力

私が通っているインタースクールのウェブサイトがずいぶん改良を受けています。閲覧者が情報を取りやすいようになったように思います。

大手他校も常に改良していますね。

職業通訳者養成の課程はあまり変えようがないので、
・通訳の専門分野(IR・医療)
・通訳の技能別講習(聞く・話す・理解する)
・通訳訓練の導入的過程(初歩・入門・英語基礎力)
といった授業を展開していると感じます。

学習の方法は学習者の数だけあるのでしょうけど、成人になってから初めての外国語を学習した私の経験からすると、学校は「補強」や「疑問解消」のために短期的に使うのも効果的ではないでしょうか(教えてもらう、ではなくて)。


インタースクールの新しい試み「通訳道場」が再び開講ですね。前回参加しましたが、通訳の現場になじみが少ない学習者にはかなりおすすめです(同校の回し者ではないですけど)。

2014-01-30 幽体離脱・Chemical elements

通訳をしている自分を客観的に見る・感じる。

これは大切な気がします。聞き手を安心させる声が出ているか。謎を解こうとしているような印象を与えないか。ノート取りが書き取り試験みたいになっていないか。

同時通訳でも聞いている自分と話している自分とがちょっと切り離されたような感じが良いのかもしれません。この感覚はごくたまに訪れますが、淡い雪のように、あるいは立体写真の像のようにふっと逃れていきます。


BBC World Service の Business Daily で「元素を通して世界経済を見る」というシリーズを放送しています。ヘリウム、リン、金などを扱ってきて、先週は炭素です。このシリーズは同時通訳の練習材料として都合が良いと思っています。
・ゲストとのやりとりが中心なので、猛スピードの原稿読みではない
・内容はかなり一般的で展開の予測ができる
・理科の話なので、聴取者を飽きさせないよう1つの話題が短め

Business Daily

2014-01-29 逐次通訳・同時通訳

インタースクール東京校には種々の課程がありますが、2013年10月期(2013年10月~2014年3月)では以下の2講座を履行しています(欲張ったので大変…)。
・会議通訳本科 III
・IR通訳コース II

共に同時通訳の導入となるコースでした。2012年4月に通学を始めたときには自分がヘッドセットを着用して同時通訳の練習をするなんて思っていませんでしたが、放り込まれてしまとなんとか泳ごうとするものです(泳げる、とは言ってませんよ)。


よくインターネット上の記事でも見かけますが、逐次通訳と同時通訳とは似ている面も多々ありますが、かなり異なった技能とも言えますね。どちらが難しいかというと、内容と通訳者によって異なった答えが返ってくると思います。

元発言が端正でさほど早口でなく、内容に親しみがある場合には同時通訳はかなり楽ではないかと思います。発言内容を記憶したりノートに取らずにすみます。聞き手もある程度は「同時だから」ということで洗練された言い回しまでは要求しないようです(最近は需給共に水準が上がってきていて大変らしい)。

重要な場面で、原発言者が十分に練った内容・表現で話すときの逐次通訳は大変でしょうね。内容の正確さに加え、品位も厳しく問われそうです。原発言者・聞き手が両言語に通じていることも珍しくありませんから、
話者「いや、私はそうは言っていません」
聴衆「いや、話者はそう言っていなかったんじゃないか」
という気持ちを抱かせてしまう危険があります。


同時通訳の練習を始めて感じたのは、逐次の練習は同時の基礎になるのはもちろん、その逆も真だろうなということです。同時通訳では「答えを探す」ヒマがありません。荒削りでも聞いて理解できる訳をとにかくお客さんに届ける必要があります。そしてこれは逐次通訳で元発言を聞きながら訳の構想を考えるのにも必要な作業だと思います。
逐次だからゆったりと聞き、聞こえたものをとりあえずメモにとり後で考えよう的なやり方では、当然逐次は無理です。聞いた瞬間に情報を処理していくプロセスは同通も逐次も同じで、違いはそれをすぐに言葉に出すか、それともメモに残しさらに洗練された表現、よりわかりやすい論理構成で訳出するかだと思います(上谷覚志さん ハイキャリア-やりなおし!英語道場)
※ 同時通訳について2つのスタイルを関川富士子さんが提唱しています( 同時通訳をする際のヒント)。どちらにするかを決めるのが大切と書いていらっしゃいますが、そこまで厳しく区別すべきかどうか、私には(今は)わかりません。

2014-01-28 【募集】土曜 1:40くらい~ サイトトランスレーション仲間

----- 満員御礼 ------
2014年1月29日 追記
おかげさまでお申し込みをいただきました。
ありがとうございます。
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こんにちは。

授業の都合で土曜の 1:30~4:30 が空き時間となっています。

このうち1時間くらいでサイトトランスレーション(英→日)をしたいと考えていまして、仲間を募集いたします。

・場所:溜池山王駅付近
・時間:午後1時40分~3時くらい(昼食もこの時間で)
・材料:今のところ The Economist を考えています(無料公開記事あり)
・期間:2月1日(土)から6回(その後は2014年4月期の授業スケジュール次第)
・人数:2~3人(私も含め)


1人でもできそうですが、やはり複数人数のほうが良い結果が出そうです。聞き手の存在は大切ですし、異なる意見で理解も深まります。

通訳学校生に限りません。お試し感覚でもけっこうです。

御連絡は当ブログのプロフィールに記載のメールアドレスまでお願いします。

2014-01-27 けっこう猛練習…

インタースクールでの授業がこのところ数週なかなか「燃えて」ます。

一息入れる時間がなく、受講者を容赦なく追い立てるが如く進みます。終わるとほっとすると共に充実感が…。

資料の効率的な読み方や用語の解釈など、役に立つ知識も織り交ぜて進みます。

IR通訳の授業では原発言者の
「本当の本当の意図」
を解き明かしてくれる説明が相次ぎ、復習が楽しみです。専門的な内容だと講師の助けなしにはちょっと読み解けないことがありますね。


講師の尽力もさることながら、受講者の努力もクラスの推進力を生む役割を担っています。
「何としてでも食らいついて訳す」
という気力が伝わってくることが多いのです。これは学習を続ける上で大きな後押しになります。この恩に報いるため、私からもこうした気力を発信したいものです。

2014-01-26 取り組み方

ブログ記事に日付を書くときに「26日」とタイプしてちょっとびっくりです。ついこの前まで新年の挨拶をしていたのですが…。


通訳学校の仲間に伝統文化に取り組んでいる方がいるのですが、お話を聞いて私にも思い当たることがありました。

「始めてしばらくすると、いろいろわかってくる楽しさがある。技巧も気になってかなり熱心に取り組む」

「長く続けていると、そうした熱が抜けてきて、もっと自然体で楽しめるようになる気がする」

私も以前に楽器の手ほどきを受けたときに同じような経験をしました。中断を決めたとき、師匠は
「少し疲れてしまったのかもしれませんね」
と言いました。たぶんそのとおりだったのだと思います。


通訳技能の練習でも同じようなことがありそうです。学校という未知の環境。シャドウィング、クイックリスポンス、リプロダクションといった新しい用語。ノート取りのように「方法をつかめばできそうなこと」。こうしたことがもたらす一種の高揚感が存在します。

いわば「珍しさ」。これが「苦しさ」になったり「楽しさ」になったりして、クラスの仲間が言ったように自然体になる頃が(私にとっては)本格的な訓練の出発点なのかもしれません。