50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2018-06-20 飛行時間と手術件数と

飛行機の操縦技能の客観的な指標は飛行時間だそうです。百時間の新米の技能は千時間の経験とは歴然と違う。

外科手術の件数も同様だと聞きました。天皇の心臓手術をした天野篤さんにとっては年間四百から五百例が標準で、1日1例が最低ラインだと述べています(朝日新聞記事 2012年10月27日)。


最近私は通訳にも似たところがあると感じ始めています。業務で通訳をすれば必ず何か気づくことがある。どの現場も異なっていて、決して同じということがない。通訳して通訳して通訳しまくる。そこから得るものもあると思います。

同じような形式で忙しい通訳を続けると
「通訳が荒れる」
と言う人もいるようですが、極度に消耗する日々を過ごさない限り荒らすか荒らさないかは自分の裁量によるところも大きいのではないでしょうか。
「雑にすれば即ち雑務」
という理屈に少し似ているように思います。


横浜駅近くに良い待ち合わせ場所を見つけました。

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2018-06-19 健康の大切さ

大人気ブログ「定年からの通訳デビュー」の著者モコちゃんパパさんが朝起きられなかったとのこと。幸いすぐに回復されたようです。

私にとっても他人事ではありませんでした。十分に睡眠をとるようにしていたのですが、一昨日は夕食後に資料を読もうと思ったのに、少し横になったらそのまま寝てしまって、起きたら深夜でした。

先週の同時通訳グランプリの準備の疲れがまだ抜けきっていなかったようです。年齢を経るにしたがって疲れが遅れて出てくるといいます。おそらく単に回復が遅くなるからなのだろうと思いますが…。

なるべく歩き、早く寝るようにしています。特に大酒飲みというわけではありませんでしたが、アルコールは 2008年の年末に止めました。せっかく始めた通訳稼業、なるべく良い品質で長く続けたいと望んでいます。

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2018-06-17 常に動態

今年6月にもいろいろと新しい経験をしました。

業務件数
6月の業務件数は25件。月間最多を更新し、月間売り上げはいままでで2位。同日に複数業務が常態となった月でした。
元請
外国の顧客から直接受注し、通訳者チームを組んで対応しました。手配・支払いなど、エージェント担当者の気持ちがよくわかりました。この経験は強くお勧めします。
客先・業界
エージェントのおかげで複数の新しい業界の仕事を経験しました。
行事
日本会議通訳者協会主催の「同時通訳グランプリ」の予選・本選で主催者側として活動しました。本選大会では司会を担当し、以前のトーストマスター活動の恩恵を実感。
露出
イカロス出版の「通訳・翻訳ジャーナル 2018年夏号」およびリクルートワークス研究所の機関紙「Works」148号 に取材を受けた記事が掲載されました。


通訳業を始めたとき、
「珍しさと面白さとは違う」
「いつの日か珍しさが失せて、面白さに気づかず通訳から離れるときがあるかもしれない」
という漠然とした不安がありました。

今のところこれは杞憂のままです。リクルートワークス研究所は私のつたない説明をきれいにまとめてくださいました。

誰の指図も受けずに仕事を決めて“自分を売る”という自由。持てる技能で稼ぐという手応え。フリーランスになって初めて知ったことですが、こんなに多面的な楽しさを得られるとは、思っていませんでした 


伝え聞いたところでは、インド料理を作る通訳者が首都圏にいらっしゃるとのこと。まだ出会っていませんが…。

写真は赤羽橋の「ガネーシャダイニング」。一見頼りなさそうなナンは実はとてもおいしい。2012年頃に近くで通訳練習会をして以来です。懐かしい。

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2018-06-15 同時通訳グランプリ 盛会

日本で唯一の同時通訳コンテスト
「第一回同時通訳グランプリ」
の本選大会が無事に完結しました。

第1回 同時通訳グランプリ 結果発表 

特別審査員に原不二子さん・鶴田知佳子さん(米朝首脳会談のテレビ報道で同時通訳をされていましたね)を招くことができました。その他にも審査員としてエージェント各社の社長を始め幹部の方に参加していただきました。

An Interpreter is Born.
という興奮がありました(入賞者の通訳音声を聞いた通訳者は首筋のあたりがヒヤリとしたかもしれませんね)。

鶴田知佳子教授の力添えもあり、東京外国語大学のすばらしい大教室を使うことができました。また、最新のデジタル同時通訳機器で支援してくださる企業もありました。ありがたいことです(非常にクリアな音質で、審査員からは「通訳者が緊張している空気まで伝わってくる」との声がありました)。


この大掛かりな催しをほぼ手作りで仕上げた日本会議通訳者協会の構想力・実行力もかなりなものだと思います。最初は
「こんなの、できたらいいね」
という話だったのです。
「だったら、してみようよ」
と言ってここまで来ました。

実行委員は本業とグランプリ準備のためそれこそ寝る間を惜しんで活動してきました。正直なところよくできたものだと思います。このあたりについては関根マイクさんのブログをぜひ参照してください。

まさしく
「人は石垣」
ですね。それぞれの人が持ち場を守って励ましあってやってきました。

スポンサー各社、後援をいただいた各社、講演者、審査員、聴衆、競技者、実行委員、ボランティア。どれ一つ欠けていても成り立たなかったはず。プロジェクトは様々な要素を練り上げて実現するものだと改めて思います。


同時通訳グランプリがかなり話題になったために、夏の通訳者の祭典「日本通訳フォーラム」への参加申し込みにはずみがついています。過去3年毎回チケットが完売していますので、手配はお早めに…。

日本通訳フォーラム

 

2018-06-08 複数エージェント登録

急に現場に出られなくなった通訳者・休暇を取る通訳者の代わりに仕事に入る形で新しい通訳エージェントに登録してきました。

そうしてわかったことがいくつかあります。

  • エージェントの成り立ち(歴史)によって客筋が違う。大手通訳エージェントには会議通訳の発注が集まる。いっぽう、例えば翻訳が中心のエージェントの顧客が「翻訳のついでに通訳もお願い」と依頼してくる通訳業務は一味違ったものが多い。同様に労働者派遣が主な会社が扱う通訳業務にも特色がある。
  • 小規模なエージェントだと経験がさほど長くない通訳者にも比較的大きな(格が高いとされる)仕事が回ってくる確率が高くなる。「寧ろ鶏口と為るとも、牛後と為ること無かれ」と考えるなら一考の余地がある。発注側は調達の透明性のために見積もりを複数社から取るので、小規模なエージェントにも大きな業務の見積もり依頼をすることも多いようだ。


それと、私の考えとしてはリスクの分散は必要かと思います。ナショナルフラッグキャリアを誇りにしていた日本航空は経営破綻しました。日本の産業を支えるのは自分たちだという強烈な自負を持った日本興業銀行はその名を残していません。名門と呼ばれた東芝やシャープの苦境は記憶に新しい。

多く仕事を受けているエージェントから何らかの事情で仕事が来なくなることも考えておくべきだろうというのが企業勤務からフリーランスに転進した私の考えです。エージェントが業務の方針を急に変えることもあるかもしれないし、通訳者が大失敗をしてエージェントから切られることもあるかもしれません。


またしても「らしくないもの」も食べちゃいました。チェーン店そば屋のカレーそばに引き続きチェーン店のカレーライス。どちらもなかなか良いじゃあないですか。

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2018-06-06 果報者

いままで600以上の通訳現場に出てきましたが、すべて「ぜひまたこの現場を担当したい」と思うものばかりです。難しかったり冷や汗をかいたり、苦い思い(主に反省点から)をすることはあります。しかし
「もうこの現場はいやだな」
と感じたことはありません。

お客さんにも現場で共に働く通訳者にも例外なく本当に良くしてもらっています。通訳者につらく当たる顧客や共に仕事をしづらい通訳者がいるという話を聞くときがありますが、どこか別の世界の話だろうと思えてしまいます。


いつもすばらしい顧客や仲間に囲まれているうえに、通訳者にはまだまだ大特典があります。それは…

宿題がない
会議が終われば通訳者の仕事は終わり。会議に参加した当事者のみなさんは売上目標やら開発スケジュールやらで本当にたいへんだなと思います。
原則として受け身
レストランがおいしくなくても催し物がつまらなくても予定に遅れそうでも一切の責任がない。淡々と仕事をすればいい。
評価育成がない
部下の評価や育成の義務がない。人の人生を左右しかねないあの重圧から解放されて寿命が延びたと思う。


おそらく20年ぶりくらいのカレーそば。冷房で冷えた体がほっとしました。

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2018-06-05 質も量も

2018年06月の業務予定が6月01日の時点でほぼすべて埋まりました。

こうしたことは初めてです。今までは月が始まってからその月の仕事の照会が来ることも多かったのです。

今年は数か月先の予定もほどよく入って月別の棒グラフがなかなか良い形です。

青の棒が金額、赤の線が件数を示します。このグラフは 6月01日時点のもの。
3月・4月は棒と線とが近い = 単価が高いことがわかります。6月は報酬の絶対額は多いのですが、件数も多く、単価が低いことがわかります。8月の立ち上がりが弱く、10月からの会議シーズンの引き合いもあまりないことがわかります。つまりまだ市場では「新参者」で、照会の優先順位が高くないのでしょうね。

証券会社のカンファレンス予約などが入らない代わりに、通訳者が「売り切れてしまった」秋に「裏番組」と呼ばれる他の仕事が回ってくることが多いので楽しみにしています。

2018年6月は量・質共に転換点となる月でした。

  • 直接契約の再発注があり、元請けとして他の通訳者を動員した。
  • H.E. で呼ぶ人物の公開講演の同時通訳を実施。
  • 初のエージェントの仲介で初の業界で同時通訳を実施。報酬日額最高額更新。
  • 1日3件を初めて経験。
  • 1日に照会を受け予約できた業務件数の新記録(7件)。

 

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