以前に通訳学校の募集セミナーに参加したときのこと。
通訳の仕事を始める時期について、講演者がこんなことを言いました。
「△△コースになるまでは、動くな」
この△△コースとは、通訳養成課程の一番上(上級)のひとつ下のことです。
私はこの△△コースに相当する課程の終盤のときに初めて仕事に出ました。初歩的な業務だったこともあり、顧客に十分評価されると同時に
「これならこの先もなんとかなるかもしれない」
という感触も得ました。
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実際に通訳をしないと気づかない点も多いのは事実です。しかし、将来通訳で生計を立てるなら、ある程度の基礎力を身に付けてから仕事をしたほうが結局は早道だと講演者は言いたかったのでしょう。
私は学校を修了するまで積極的に通訳をしませんでした(長期出張の通訳業務が入りましたけど)。走り幅跳びで遠くに飛ぶには助走が必要だろうと(当時は)考えていたのだと思います。
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通訳の学習と仕事との関係を私は飛行機のズーム上昇(zoom climb)のようにとらえていました。
- 離陸滑走を開始したら、なるべく早く車輪を地面から離す。タイヤの生む走行抵抗は大きい。(学習に専念できる環境で通学する)
- 車輪が滑走路から離れたらすぐに脚部を収納する。脚の空気抵抗は非常に大きい。(学校ではなるべく早く進級を重ねる。良い環境=「学習の窓」はいつまでも開いてはいない)
- ここで上昇しようと上げ舵をとってはいけない。機首を持ち上げると失速する。(最上級になるまでは仕事に出ない)
- 速度を増すことに集中する。(学校で十分な力を付ける)
- 上げ舵を取り、運動エネルギー(速度)を一気に位置エネルギー(高度)に転換する。(通訳業務に出る)
ズーム上昇の動画がありました。車輪を格納してからも速度が上がるのをじっと待つ様子がよくわかります。F-22 Departure