プロの条件について、以前に本で目にした家具職人の言葉が記憶に残っています。
仕事の仕上がりはもちろんのこと、注文を聞いてすぐに価格と工期を答えられることがプロの証だと言っていました。材料・準備・作業が見通せなければ見積書は出せません。
通訳というサービス業もこれに近いように思います。職業通訳者であるからには、概要を聞けばどのような仕事になるかを想像できるはず。そのためにはやはり経験がものを言うでしょうね。
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資料の扱い方から不明点の確認、現場への乗り込みなど、いちいち考えずとも自分の動きがだんだんと「自動化」してくる。手動変速の自動車の運転にも似ています。さてクラッチを踏んでギアを入れ、あれ、サイドブレーキは…、と考えながらでは周囲の交通を見る余裕もありません。回数を重ねると話をしながらでも手足が勝手に動くようになる。
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最近また新たな種類の仕事に出て多くのことを学びました。
「こういうときには、こうする」
「こんなときは、ここに注意」
ということが蓄積していくと余裕につながり、余裕によって訳出の質が向上します。ふるまいが落ち着くので顧客に不安を抱かせません。
「狎れる」のではなく「慣れる」。しっかりこなせばエージェンシーは一段上の仕事を持ってきてくれます。実業界ではよく
「仕事を成し遂げたら、その報奨は次の仕事」
と言います。この1日のために入念に準備をして、できるだけのことをする。言い訳は他の人がいたわりで投げかけてくれるもので、自分で言うものではないですね。