50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2020-03-30 その後

社会に大きな変化があれば、通訳業界にも影響があるだろうというお話です。


コロナウイルスの影響で人が集まる産業活動が急速に縮小せざるをえません。会議・式典・娯楽・運動・外食などが大きく制約を受けています。

「この騒ぎがおさまれば」
「正常に戻れば」
と考えるわけですが、以前と同じようにはならないはずです。

人が集まることに関係する活動が急速に縮小しましたが、感染が広がるにつれその他の産業も減速していきます。製造業でも生産拠点の活動を止める報道が相次いでいます。

こうして経済活動全般に影響が出ると企業の財務業績も低迷することになり、厳しい費用削減に乗り出す可能性はとても高い。通訳・翻訳費用は「削られやすい」費用ではないでしょうか。この点については以前も書きました。

2018-08-10 備え(1)

人が一か所に集まれないために遠隔会議が急に増えています。この経験から
「いままでみたいに飛行機に乗って集まらなくてもけっこうできるじゃないか」
というように意識が変わってくるだろうと思います。

「元に戻る」のではなく、「違う状態になる」のがあたりまえ。世の中の流れは似たようなことを繰り返しているようで少しずつ変わっていく。


pho bo(牛肉の薄切りのせ米粉麺)。ミントやノコギリコリアンダー、バジルが別皿なのがベトナムの流儀だそうです。

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2020-03-29 Computer Aided Interpretation (CAI)

技術の進歩は速いだけではなく加速する、というお話です。


日本会議通訳者協会が3月・4月に多くの遠隔セミナーやワークショップを主催しています。件数はすでに20ほど。内容はアートの通訳から通訳サービス見積書の書き方、消費税・源泉税の扱い、そしてITシステムを使った通訳支援、5G通信サービスなど多方面にわたります。

表題の CAI (コンピューター支援通訳)のセミナーに参加して大きな刺激を受けました。講師役は米国人の英日通訳者で、米国でも通訳業務の経験をしています。英語環境で仕事をすると通訳関連の最新IT技術情報が豊富に集まってくるのですね。


論文を読み込ませると固有名詞を抜き出す機能、音声を流し込むと事前に用意した訳語集にある語をリアルタイムで表示する機能、音声の数字を検出してリアルタイムで数字を画面に出す機能。日英両方の文章がある場合にはそれぞれから指定した単語や表現を対にして訳語集に入れていく機能(選択は通訳者がおこないます)。画面で実際の動作を見せてもらうと理解が進みます。

新しい分野は自分で調べるよりもこうして他人から(それも自分で試行錯誤した人から)説明してもらうと楽ですね。

翻訳には翻訳支援ツールがありますが、通訳もこれからツールを使っていくことになる予感がしました。


「でも、いままでだってちゃんと通訳できているし」
という声もあるかもしれません。

はい、パーソナルコンピューターが一般化する前から経理も給与計算もありましたし(私も電卓で損益計算書作ってました)、携帯電話がなくても営業担当者は外回りして、スイカパスモがなくても電車に乗ってました。


芽が出ます。

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2020-03-28 久しぶりの仕事

コロナウイルス伝染防止のために
・外国からの訪日者がいない
・会議室に人が集まる機会がごく限られる
という状態です。

このため通訳者が現場に出向く形の通訳業務は激減しています。会議通訳(会議場で行う国際会議)の仕事はほぼ消滅しています。

私の場合も2月 → 3月で

日数:15日 → 4日

件数:18件 → 5件

と大きな変化がありました。4月はもっと少ないことになるでしょう。


久しぶりの仕事は同時通訳でした。素早い反応が必要な仕事だと「慣れ」の要素も大きいのですが、日ごろから練習していたので問題なく進めることができました。長い休みの後の仕事では事前に「準備運動」しておくのは大切かもしれません。


待合室や車内も静かです。

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2020-03-19 「ここにもひとり」

学習仲間のつながりはいろいろな形態を取り得る、というお話です。


去来の句

岩鼻やここにも一人月の客


日本会議通訳者協会のボランティアが遠隔会議システム Zoom で朝の学習会を主催しています。新型コロナウイルスの広がりで家を出ることが減った会員に呼び掛けての活動。

画面の向こうで、日本のどこかで、世界のどこかで学習を続ける人がいる。その人たちに向けて
「私もここで学習していますよ」
と静かにログインする人がいる。


神奈川県藤沢市ベトナム料理店「ふるさと」。豚肉と揚げ春巻の米粉の麺「ブンチャーゾー

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2020-03-17 リプロダクション(再現)について

続けていくとやがて発見がある…かもしれない…というお話です。


民間の通訳養成機関インタースクール東京校のおかげで通訳者としてなんとか世に出て通訳者仲間もできました。最も影響を受けた講師が第一に勧めていた学習法が
リプロダクション(再現)
です。第一言語(日本語)でも第二言語(英語)でも再現の練習になりますが、ここでは英語が対象になりました。


学習で大切なのは以下の2つを矛盾させずに両立させることじゃないかと思っています。
・その学習はどこに・どのように・なぜ効果があるのか を考える
・とにかく習慣として続ける
素材が確かなら学習しないよりは何かしたほうが必ず良い方向に進みます。私はこの講師のすすめに従ってかなり執念深くリプロダクションの練習をしてきたと思います。2012年10月に始めて現在に至るまで2日以上の間を空けたことはないはずです。

効果の測定はできないのですが、現在通訳専業としてなんとかなっているのですからきっと何らかの良い働きはあったと考えるべきでしょう。


そして今年 2020 年を迎え、つまりリプロダクションを始めて7年半経過して少しわかってきたことがあります。

講師が英文のリプロダクションの重要性を強調していたのは日本人受講生の最大の課題(弱点)である
「それを英語では普通どう言うか」
を強化するためなのでしょう。

※ その講師がどう考えているかはわかりません。これは私の解釈です。

もちろん意味のひとまとまりを取り込んで訳出に備えるという副次的な効果もあるのは間違いありません。しかし通訳訓練を受け始める人の大部分はまず英語の運用能力が不足しています。これは染谷泰正さん(2018年3月関西大学教授職を定年退職)の以下の論文のとおりだと思います。

日本における通訳者訓練の問題点と通訳訓練に必要な語学力の基準
(『通訳理論研究 10』第 6巻 1号 (1995:46-58) )


今年になって再現の練習を少し変更しました。私の場合は音声ではなく英語の書面を素材にしてきたのですが(どこでもできるので)、
・最初の段落を再現
・次の段落で逐次訳
・次の段落でサイトトランスレーション
という組み合わせにして、これを2~3巡繰り返すようにしてみました。英語の練習に通訳の練習の要素を少し加味してみたわけです。

こうすると通訳で必要になる
「意味をとらえる」
部分の練習になるような気がしています。素材の単語や表現から一度離れて(非言語化領域で)意味をとらえて再現する練習になるのではないかと思っています。

少なくとも害はないはずなので、また数年続けてみるとわかってくることもあるでしょう。年単位で続けることが気にならないのはひょっとすると強みといえるかもしれません。


神奈川県茅ケ崎市北部の里山公園。いいところです。

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2020-03-15 遠隔会議システム Zoom

Zoom 本格利用初体験というお話です。


2020年3月、一般社団法人日本会議通訳者協会(JACI)がオンラインセミナーを集中開催しています。コロナウイルス感染対策で仕事が減ったり子供の世話で在宅時間が多くなることもあるでしょう。そうしたときに
「通訳者のための通訳者の団体」
として何をすべきか。何ができるか。

まず情報の交換。ロンドンや米国西海岸の会員からは日本以外での通訳事情の最新情報も寄せられています。国内の会員からの情報も通訳業務が量・質共に変化しつつある気配を感じさせます。

そしてこうしたときにこそ各種セミナーやサロン(座談会)が意味あるイベントになるはずです。いままで知りたいと思っていたことを調べたり、新しいことを学んだり。


先日はそうしたオンラインプログラムの1つを担当しました。以前に会議室で実施したセミナーと同内容なのですが、遠隔地の方や家を長時間空けられない方が50人も集まる盛会となりました。

Zoom の設定や操作はかなり直感的で「練ってあるな」という印象があります。初めて触った人でも1時間もすれば独力で会議やウェビナーを主催できそうです。

いきなり主催者になる前に参加者として「顧客体験」をすることが大切だと思います。主催者は画面でこんなふうに見えるんだな、画面共有をするとこんなふうに資料が映るんだな、と気づく点がいろいろあります。

通訳業務でも Zoom を使うことが増えるかもしれません。


左右対称で宝永火口や大沢崩れも目立たない角度。

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2020-03-08 オンラインセミナー・オンラインサロン

日本会議通訳者協会が自宅から参加できるイベントを集中企画しています。

日本では最も内容が多様で専門的だと思っています。

peatix.com

こうした企画は会員の年会費やスポンサー企業の協力で成り立っています。ありがとうございます。