ものごとの見方はいろいろあるが、複数の視点を持つのは簡単ではないというお話です。
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日本の通訳需要がとても旺盛で、2022年中ごろから業務照会の数が急増しました。仕事で一緒になる通訳者に
「2022年中ごろからの照会数の多さは異常ではなかったですか」
と尋ねると15人中15人が
「いままでに経験したことのないほどだった」
「それが2023年になっても続いている」
「ちょっとおかしいくらいだ」
とおっしゃいます。
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私の場合だと2023年1月の実績が仕事を始めた2014年から現在までの月間歴代11位です。正月休みがある月なのに2019年の9月より忙しかったのです。さらに驚いたのがそれに続く2023年2月の月間売上見込みが歴代3位です。営業日数が少ないのに2022年10月・11月に次いでの3位。拘束手当や日当がなくても月間売上150万円(税抜)が現実味を帯びてきます。
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通訳需要が増えた原因を想像してみました。新型コロナウイルス流行で人が同じ場所に集まる会議が突然できなくなりましたが、わずか数か月で遠隔会議が急増して会議が復活しました。さらに会議を開く手間や費用に対する認識が大きく変わり、
「思いついたら会議はすぐにできるものだ」
という発想が浸透してきたようです。遠隔会議なら通訳者も移動の必要がなくなり、以前だったら引き受けられかった仕事が可能になりました。
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こんなことを考えていたのですが、通訳者仲間の発言にはっとしました。
「忙しくなったのは、通訳者になる人が減ったからではないか」
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訪日者が参加する会議通訳・通訳ガイド需要がコロナで一時的に壊滅的な打撃を受けたのを目撃して通訳者として世に出るのをやめた人がいたかもしれません。また、機械翻訳の急速な進歩やAI技術の台頭で通訳・翻訳をこれからの仕事として考えるときに慎重になったのかもしれません。この考えは私にとって新鮮でしたが、言われてみるともっともな気がします。それに加えて新しいハードウェア・ソフトウェア、新しい仕事の方法に慣れる必要がある遠隔通訳に参入せずに静かに通訳市場から退出した通訳者もいたと聞きました。
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通訳者が忙しいのは通訳産業が大きく衰退する前触れなのでしょうか。
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晴天続きで小川の水が枯れ、残った水場にチュウサギ・ゴイサギ・アオサギが集まりました。珍しい光景です。
大田区蒲田の「スセリ ネワ タカリ」のタカリセットはみごとな出来でした。