自営業(フリーランス)の年収額についてはご用心というお話です。
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「あなたも翻訳家になれる」といったウェブ広告が常に出回っています。
「経験1年で年収XX万円」
などと景気の良い話もしていますね。
経験年数についてはとりあえず置いておいて、年収の定義には注意が必要でしょう。
具体的な例を挙げます。
大きな数字で印象付けるために
12,000,000円(1千2百万円)!
とブチ上げた数字があるとします。
実は…
消費税を含んだ額かもしれません。そうすると本体価格は
10,909,090円
ですね。
ひょっとすると仲間の翻訳者に手伝ってもらっているかもしれません(再委託)。外注費が 30% あったとすると自分の取り分は
7,636,300円
ですね。これが個人分の正味売上となります。
ただ、給与所得者の給与と比べるなら利益額を求める必要があります。翻訳の場合案件ごとに必要な支出がないとしても固定費が必ずあります。コンピューター、辞書、インターネット接続、各種調査、さらには事務所費(家賃・用水光熱費)。仮にこれが正味売り上げの 20% だとしましょうか。そうすると利益額は
6,109,000円
になります。めいっぱい膨らませた額の半分になっちゃいましたね。
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そして自営業者はここから国民健康保険料を支払います。厚生年金保険の被保険者ではありませんから保険料を払う必要がない代わりに将来の厚生年金(国民年金よりかなり手厚い)の受給もありません。仕事が途絶えても雇用保険の失業給付もなし。出産・育児で休んでも会社員のように社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が免除になることもありません。心身の不調で休んでも傷病手当金(健康保険の制度)はありません。
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数字が出てくるときにはその定義を考えてみることが大切だと思います。
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ダイサギのダイちゃん(仮称)。羽がすごくきれいでした。