通訳者の外見は抑え目・控えめに、というお話です。
以前の勤務先にいたころ、お客さんを訪問するときがありました。先方の担当者さん、だれでも知っているブランドの時計を身に付けています。ステンレス鋼ではなくホワイトゴールドで、石(小さなダイヤモンド)も入っていますね。
お友達の結婚式なら良いかもしれません。記念日の外食でもいいですね。
しかし、サービス提供料を厳しく値切る場ではどうでしょうか。
「その時計を買うだけの給料を払っているアンタの会社に私たちは値切られていますよ」
という感情は程度の差こそあれたいていの人に芽生えます。
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私がエルメネジルド・ゼニアの生地で仕立てたスーツを着て、パテックフィリップの時計をしてマセラティのクアトロポルテで通訳現場に乗り付けるとどうでしょうか。
そのお客さんが1回の講演で数百万円を集めるカリスマ自己開発系の講師なら全く問題なく、かえって良い印象を与えるでしょうね。
しかし、そうではない場合には
「あの通訳料は高いと思ったが、そういうことか…」
と思われるのがせいぜいでしょう。
寸法が合っていて清潔がなにより。やや保守的に。記号性の高すぎるもの(派手なロゴが入ったり貴金属や宝石を使ったもの)はやめておく。
通訳者にとって身なりについての最高の評価はおそらく
「そういえば今日の通訳者さん、どんな格好してたっけ?」
ではないでしょうか。
通訳者の報酬が5万円でも、3人体制同時通訳で機材を含めるとお客さんの支払額はすぐに30万円になります。通訳音声を耳にする人は
「この通訳は30万円」
と思って聞いています。
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日本会議通訳者協会主催の同時通訳グランプリ(コンテスト)は今年も盛況でした。ロンドンから2人・カリフォルニアから1人の参加がありました。入賞者にエージェント各社のスカウトが集まってくるのは昨年と同じ。