50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2019-02-23 内部損失

自動車のエンジンでもジェット機のエンジンでも「自分が回るため」にかなりのエネルギーを使っています。内燃機関なら混合気や空気の圧縮や動弁機構の駆動、ジェットエンジンガスタービンエンジン)なら吸気の圧縮が主なもの。燃料が生むエネルギーの数十パーセントに達します。

通訳業界にも似たようなところがあります。

通訳者は通訳役務によって顧客に価値を提供するのですが、そのために自分の仕事も発生します。

通訳準備や技能の研鑽を別とすると、大きいものは予定の管理ではないでしょうか。次々と届く通訳案件の照会。日程を管理して返答をするのはさほど簡単ではないと感じつつあります。首都圏では最近慢性的に通訳者が不足しているので顧客やエージェンシーの通訳者手配が目まぐるしく変わります。

X日のAエージェントの仕事が顧客都合でキャンセルになった。数時間の差で先約があるからと断ったBエージェントに「空きました」と連絡。しかしBエージェントは当然他の通訳者にすでに打診をしています。

予定がひとつ変化するとその余波がかなり広がるようです。一種の「乗数効果」。注意を払う対象・連絡先が増えると手間は幾何級数的に増える…。


このような状況を避け、通訳業務そのものに集中するためにエージェント専属で稼働したり空き日程をエージェントに通知してエージェントの判断で業務日程を埋めていくという方針の通訳者もかなり存在します。相互に信頼して利害が一致しているとかなり有効な方法です。

いっぽう、ごく少数のエージェントや顧客に大きく依存することを好まない通訳者もいます。エージェントが異なれば顧客層も違います。通訳者が世の中の通訳業務についてより広く知ることにもつながります。また、市場の変化に対処する点でも仕事を獲得する窓口を複数の組み合わせで構成することには意味がありそうです。

エージェントにとっては自社以外からも仕事を請け負っている通訳者は少し手間のかかる相手ではあります。照会しても「他件が決まっています」という返答が返ってくることも多い。担当者の疲労は簡単に想像できます。場合によっては祈るような気持ちで照会するときもあるでしょうね。
「頼むからだれか『対応が可能です』って言ってくれ」
と…。


人工知能で業務の受託を最適化するような技術が出てきたら、と夢想します。新規受託や定例業務の選好を設定して問い合わせの内容を分析して対応案をいくつか導く。エージェント側も同様の対応をすると、結果はどうなるのでしょうか。双方が自己の最適化を追求すると通訳者の引き当ては収束するのか拡散してしまうのか…。


サグマトン(青菜ペーストに羊の肉)。サグはインド・パキスタン両国にまたがるパンジャーブ地方のふるさとの味。日本ではほうれんそう(パラク)を使ってもサグと呼ぶことが一般的です。インド人シェフのブログに説明があります。

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