50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2018-04-12 変な英語を話さないように

主に日本国内で日本語を使う環境で育った通訳者は外国語に弱点がある場合がほとんど。

両言語共にほぼ完全に使える人(日英両方で修士論文や博士論文を書き、面談ではどちらの言語が母語か外部から判断がつかない)はかなり存在します。そうした方々に比べるとどちらか片方の言語が外国語(an acquired language)である通訳者は言語の運用能力では相当に見劣りすると言わざるをえません。

たとえば英語を学習して身に着けた通訳者は動詞と目的語との組み合わせや冠詞、時制、仮定法などでほころびが出る場面が非常に多い。厳しい見方をすると
「ないよりまし」
な通訳者なわけです。

ここで
「まあ、外国語だからこのくらいできればよしとしたい」
という安易な妥協はなるべくしたくないですね。理想はあくまで自然で聞きやすく、通訳していると気づかれない訳を出すこと。実現は不可能かもしれませんが、顧客の望みはそこにあることは意識していたいと思います。

通訳学校やその他の機会で講師をしたことがありますが、特に翻訳の経験のない受講者はかなりいいかげんな表現を平気で使うことがありますね。文法的に穴だらけということも多い。何か言ったら(書いたら)
「本当にこれが自然で普通の表現なのか」
と常に裏付けを取る学習が必要だと考えています。さもないと一生いいかげんな表現を平気で使うことになる。たとえばビジネス関連の日本語から英語に通訳するときになぜか多く登場する enhance, proactive, execute, implement といった単語をしっかりと辞書で調べ、用例を確認しているかどうか。類義語との使い分けはどうか。challenge や try といった単語は日本人独自の解釈が入り込みがちだが、避けているか。train と educate の違い、glad と happy との違いは意識しているか…。

こうしたところに注意をして「仕入れ」を常にしているかどうかで長期的にはずいぶん差が出てくると思っています。