通訳学校を終了してからずっと自営業(フリーランス)で通訳業を営んでいます。そう、「営んで」いるんです。仕事の打診を受けたら引き受けてもいいし断ってもいい。その帰結を自分で引き受けるまでです。意識するとしないとにかかわらず、自営の仕事のしかたには事業主の戦略(ちょっとおおげさかかな。方針といってもいい)が現れます。
技能まっしぐら、「刀を研ぐ」ことを第一とする人。通訳というサービス業でも当然市場原理が働くので需給関係や報酬に敏感な人。分野を限る人。様々な分野を引き受ける人。商談や交渉に特化する人。会議場での同時通訳を志向する人。通訳学校で教える人。教えるのはカネにならないしめんどうだという人。
続ける自由もありますし、市場から退出する自由もあります。通訳サービスが売れなければ昔の英領香港のように
「野垂れ死にする自由」
もありそうです。
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私は学校を卒業してから大きな企業で28年も働きました。個人ではとても不可能なことを組織が成し遂げることも実際に体験しましたし、組織ならではの「内部損失」(組織を維持して機能させるための「本業以外」の仕事)も十分に味わいました。この経験は今になってとても生きていると思います。両側を見てきたからこそ現状のありがたみや限界がわかる。日々しみじみと喜びを感じて仕事ができるし、歩くときに踏む足元の氷がところどころ薄いのもわかる。
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先日は外国の顧客と直接取引をする機会がありました。英文で見積書を出し、基本契約を交わす。支払いやキャンセルの条件を確認する。以前にプラント工事の見積書や契約書を扱ったときを思い出します。今までの経験から言えるのは、こうしたことも繰り返していくといつの間にか特別のことではなくなるということ。ときには痛い目にも遭いながら…。
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コジュケイはいつも丸々。人間を気にする様子もありません。