50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2017-10-12 貴重な学習情報がどんどん得られる

改まった式典で組織の長の挨拶を通訳することも通訳者であれば避けられません。通訳者により得手不得手は様々でしょうけれど、正式な席での逐次訳に重圧を感じる人は多いと思います(大好き!という通訳者にはまだ会ったことがありません)。

原稿が出たら出たで準備は大変ですし、出なければかなり苦しい場面を迎える覚悟も必要です。また、原稿が出ても違うことを話し出すことも多いですね。

その日は私の他にも重要人物のスピーチを担当する通訳者がいましたが、みごとな訳でした。正確なだけでも十分に価値があるのですが、端正でわずかに華のある声がめでたい席に非常に合っていました。文章をきっちりと完結させた後の間合いもとても自然です。

不思議なことに、この模範的な訳を聞いたらリラックス効果がありました。
「大変だ、あんなふうにしなくちゃ」
ではなくて
「なるほど、あのように訳すとこんなに素晴らしい効果があるのか」
と思えたのです。

とにかくあわててはいけない。話者は不安そうに話してなどいないのだから、通訳は幅の広い川がゆったりと流れるようにあるべきだと教えられた気がします。


私の番では、聴衆に語り掛ける意識がそれまでよりももう少し高まったかもしれません。それと共に話者の考えがしっかり通訳者の心に入ってくるような気がしました。さらに、聴衆を見渡す余裕も生まれ、通訳者を見ている人が意外に多いことにも気づきます。
「みんな通訳者を応援してくれている」
という手前勝手な思い込みをするくらいに…。

通訳報酬をいただいてこんなに勉強させてもらい、この仕事はやめられないとしみじみ感じた夕べでした。

※ みなさん。通訳者が訳を出しているときにはしみじみとうなずいてください。形だけでいいですから。それだけで通訳者は実力3割増しになります!

 


某月某日、同席通訳者であり講師仲間でもある先輩と人気店で「早駆けランチ」。食べ終わって店を出たときにはこんな看板が。

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すこし遠回りして帰ります。仕事場が遠くに見える…。

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(本文と写真とは関係ありません)