どれだけ誠実に訳せるか。毎回の通訳が試験というか、試練だと感じています。表面の言葉の流れが良くて心地よく聞こえる訳でも、原文から微妙にずれていては価値がありません。かといって聞いたときにゴツゴツしていたり早口に過ぎたりするのでは伝わりません。書き取ってみれば原文相当なのがわかったとしてもです。
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通訳業では同じ顧客に定期的に出向くこともよくあります。通訳者が話者の発想や事情を理解していくにつれて訳の精度も表現も向上します。ただし、顧客も通訳者の訳に慣れてきます。
慣れると何が起きるか。
いままでの訳よりも「もう少し上」を(意識せずに)求めるようになります。通訳者は自らバーを上げてしまうのですね。しっかりと仕事をすれば提供するサービスの質も良くなりますが、同時に顧客の耳も肥えてくる。これは宿命で避けようがありません。
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ラーメン店主のこんな話を読んだ記憶があります。
「お客様は『昔と変わらずうまい』とおっしゃってくださいますが、実はこの店のラーメンを常に改良しています。お客様の舌が肥えるのに遅れないようにしているのです。何もしなかったらとっくに市場から消えています」
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日本では
「ハードルを上げる」
という表現も多く目にしますが、ハードルの高さは一定です。女子 100m で840mm、男子 110m で 1,067mm。上げるのは高跳びの「バー」でなければならない。米国人はこう言っています。
「バーは上がるもの」
「ハードルは迫るもの」
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神奈川県座間市のパキスタン料理店「ビリヤニハウス」。メニューには記載がありませんが、ナンの代わりにロティにしてもらえます。この日は野菜カレーがことのほかおいしかった。トマトの酸味が効いた味に記憶がありましたが、新宿区曙橋の「シディーク曙橋店」の野菜カレーに似ているのに気づきました。ラッシーもチャイも実においしい。