「通訳の形態は?」
と問うと、逐次通訳と同時通訳とをまず思い浮かべます。
ウィスパリング(whispering = 耳元ささやき通訳) も同時通訳の一形態と言えるかもしれません。
しかし、もう一つ忘れてはいけないのが
サイトトランスレーション(読み聞かせ通訳)です。これは逐次とも同時とも勝手が異なると考えています。
こんな場面も少なくないように思います。
「今日の資料はまだ英語版だけです。それではまず通訳さんからざっと説明してください」
経験のある方ならわかると思いますが、この「ざっと」というのが曲者です。部屋の中にただ一人今日の議題について素人がいるとすれば、それは通訳者。
通常、どこが重要でどこがそうではないかは通訳者にはわかりません。内容として重要でも、そこはすでにみなさんの理解が共有されている箇所かもしれない。ささいなことに見えても、そこが前回から変更した大切なことかもしれない。
ですから、普通にサイトトランスレーションを初めて、適宜顧客の指示を受けることになります(「そのページは飛ばしてください」等)。
耳で聞くと目で追うよりも時間がかかるので、聞き手は
「時間がかかるな…」
と感じ始めます。そう思わせないためには
・軽やかに感じる声で
・きびきびとした調子で
訳出する必要があります。聞いていて気持ちが良い訳なら指示を受けることも減ります(「ま、いっか。とりあえず最後まで聞こう」)。
反対に
「何かを読み解こうとしているかのような」訳だと聞き手のいらいらが募ります。
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サイトトランスレーションを逐次や同時の練習方法として取り入れている学習者も多いと思いますが、ときにはサイトトランスレーションそのものの商品価値を意識するのも大切だと最近思っています。