「同時通訳はたいへんそうですけど、逐次通訳者になれるでしょうか」
という質問を受けたことがあります。
答えは
「わかりません」
ですね。逐次サービスを望むお客さんが続けばやっていけるし、そうでなければ生計を立てるのは難しい。
通訳の難しさはひとつの物差しでは測りかねるところがあります。最先端の外科手術を画面に映しながらライブで同時通訳なんて、とても難しいでしょうね。用語は難しいし、「待った」が絶対に許されません。血が流れる画像がダメという人もいるでしょう。
一方、一流ホテルの宴会場で政財界の要人が重々しくあいさつするのを逐次で伝える重圧もたいへんなもの。本人が一区切り入れた瞬間列席者の注意が一斉に通訳者に向かいます。最近は日本人発言者も外国の大学や大学院を修了したり外国で仕事をした経験を持つことが多い。本人が通訳の内容にかすかな違和感を感じることもあるでしょう。
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仕事を始めると
「同時通訳のみ、あるいは逐次通訳のみしかできません」
というのは事実上通らない話だというのがわかってきます。
- 日本語わからない人1人だけだから、ウィスパ(リング)にして
- この説明ビデオ、日本語版ないから同時でやっちゃって
- ブース同時のはずだったけど、時間が押してる。バスの中で逐次でお願い
ということは今日も日本のどこかで起こっていると思います。