50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2014-10-12 それが記録に残る

以前の職場で通訳をしたときのこと。

後輩に責任ある仕事を任せようと、私が通訳で補助役に回りました。後輩は立派に要所を整理して顧客の疑問を解いていきます。

終盤になり、顧客が今日の合意事項・懸案事項を確認していきます。通訳者である私が使った表現がそのまま相手の口から出てきます。おそらく本国の取締役にもこの内容がメールで報告されることでしょう。

通訳の職責の重さを感じました。打ち合わせの結果は議事録に残る。そこには通訳者が発した言葉が書き込まれる。もちろん内容は発言者の責任でなされますが、相手が聞いているのは通訳された表現。

この粛然とする(sobering)感覚は通訳学校の授業では味わえないものの一つでしょう。

「発言者は本当にその意図で言ったのですか?」
「本当にその訳で良いのですか?」

「最高ではないかもしれないけれど、あの場では最善だったのです」
このように回答するためにも、木も見て森も見る通訳をめざして練習を続けます。