在宅で遠隔同時通訳を担当するときに特有の事情が通訳者の交代です。
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同時通訳はたいてい2名ないし3名、場合により4名の通訳者が短時間(10~30分)で交代して実施します。通訳者チームが同じ場所にいれば目配せやちょっとした手の動きで交代の合図を交わせますが、通訳者がそれぞれの自宅等から参加するとこれができなくなります。新型コロナウイルス流行によって遠隔同時通訳の件数が増え始めたときに課題となりました。
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遠隔同時通訳が一般的になって2年以上経過し、交代方法も確立してきたように思います。
KUDOやInteractio、Interprefyといった遠隔同時通訳専用のプラットフォームを使う場合にはソフトウェアの仕様に従って交代します。各社で設計思想が少し異なりますが、すぐに慣れます。物理的な同時通訳コンソールに似た操作ができるようになっています。
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もう少し複雑なのがこうした専用のプラットフォームを使わない場合です。その中でも現在(2022年12月)では Zoom とそれ以外という区分ができそうです。
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Zoom の言語通訳機能を使う場合:
会議/ウェビナー主催者によって通訳者の役割を割り振られると通訳者は会議室やウェビナーで発言ができなくなります。あたかも「通訳ブース」に入る感じです。通訳者の声は通訳出力チャネルのみに流れていきます。
Zoom の同時通訳の注意点は通訳者が他の通訳者の訳出音声を聞けないことです。通訳者Aが通訳チャネルに流している音声はメイン音声のみを聞いている通訳者Bに聞こえないのです。
このため交代にはちょっと工夫が必要です。
- 電波で補正された時計(PCやスマートフォン)を使って時間を計測し、訳出中の通訳者がマイクをミュートするのが合図。次の通訳者は Zoom の参加者ウィンドウで先行の通訳者のアイコンでミュートを確認して訳出開始。
- 上記の方法で、時計の代わりにオンライン共有タイマー(Chronograph や Cuckoo など)を使う。タイマーを止めるのが合図。
- 上記2つの方法に加え、別回線(別の電子会議室や通話アプリ)で通訳者はパートナー通訳者の音声をモニタする。
- 上記別回線の代わりに主催者に依頼して通訳者に追加の主会議室への参加招待を送ってもらう。通訳者は一般聴衆としても参加し、通訳音声を選択してパートナー通訳者の訳出を聞く。
1 → 2 → 3 → 4 の順で正確さ・確実さは向上しますが、手間も増えます。私は主に 3 ですが、1 や 2 でも慣れればなんとかなると感じています(主に社内会議)。
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神奈川県大和市のスリランカ料理店「ロイヤルグリーン」の昼定食。