50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2022-10-02 過熱する市場

通訳業界は新たな段階に入りつつあるというお話です。


フリーランス通訳者としてこれといった営業活動を行わずに受け身で仕事を請け負ってきました。今年2022年9月末までに翌10月の平日すべてに何らかの仕事が入ることがほぼ決まりました。月が始まる前にこうなったのは初めてです。

日程に戦略的に「空きを作る」ことをせずに照会のあった業務から引き受けていった結果です。自営で通訳業をするようになってからずっと
「仕事が来るのはたいへんありがたいこと」
「まだ自分の適性もはっきりしないから、着た順に引き受けよう」
という方針で仕事をしてきました。今までこの方針であまり困ったことはなかったのです。


しかし、新型コロナウイルスの流行でいろいろと変化が生じつつあります。なんといっても遠隔通訳が日常のことになり、企業でも官庁でも会議の設定が「機動的」になりました。人が物理的に動かないのですから当然ですね。私の「肌感覚」だと通訳を必要とする会議や講演の総数は増えています(日英)。

その結果、通訳者の「売り切れ現象」が生じているようです。通訳者仲間に尋ねると業務1件を引き受けると同じ日の引き合い複数件を断ることが常態化しています。


通訳者としてどのような仕事をしたいのか、どのように働きたいのかを考える時期が私にも来たと感じています。高報酬で得意な分野を優先するだけでよいのか。経験したことのない分野を引き受けて知見を広めるのはどのくらい大切なのか。自分で決めないと外部に決められてしまいます。


神奈川県綾瀬市藤沢市にはイスラム教徒が経営するスリランカ料理店がいくつかあります。スリランカ料理店のさきがけとなった「シナモンガーデン」「ロイヤルグリーン」「キングライオン」とは料理の提供のしかたがかなり違っていると思います。写真は「Easy Day」(藤沢市用田)のライス&カリー。店の雰囲気はスリランカのバスターミナル脇や工業団地の食堂みたいな…。

 

2022-09-25 巡り巡って

とある大手通訳手配会社に対する売り上げが大きく伸び、私にとってのシェアが昨年の7位から2位に急上昇しました。この顧客との縁はちょっと変わったものでした。


通訳の仕事を始めたときから、大手なのでゆくゆくはどこかで接点があるかもしれないと思いつつ6年が経過しました。通訳者から特に接触する必要もないだろうと考え、縁があるのをゆっくり待とうと思っていました。


そうしたときに、別の仕事でお世話になった顧客の関係者が
「通訳の仕事を頼むかもしれない。そのときにはこのエージェントを介することになるだろう。登録しておいてください」
と伝えてきました。

登録した年とその翌年の業務依頼回数はごく少ないものでした。しかし、私が比較的得意とする種類の業務をきっかけに定期的な受注につながり、様々な分野の依頼を受けるようになりました。今年(2022年)の1~9月で私の総受注額の18%へと急増しています(昨年は5%)。


以前にも書きましたが、取引高一位の顧客は通訳者仲間にステーキハウスで引き合わせてもらった企業です。二位は今回書いたように以前の仕事の縁で紹介を受けた会社。


細い糸のような縁が、やがて太い綱になったような感じがします。


西新宿アイランドタワーの半地下にある「ナワブダイニングカフェ」で通訳者仲間と打合せ。羊丸焼きの準備が進んでいました。一次ローストが終わり、ヨーグルトに混ぜた香辛料を塗り終わったところのようです。私たちは Karachi Thali という「大人のお子様ランチ」みたいな楽しい盛り合わせにしました。ブログ読者のみなさんともぜひご一緒したいと思います。

 

 

2022-09-18 変わるもの・変わらないもの

今年の8月は営業日数が他の月よりも少ないにもかかわらず業務の数はかなり多くなりました。仕事のあった日数は17、件数は27です。毎週の仕事を二種類受託し、同じ日に前後して仕事をすることが続きました。

8月が終わりに近づいても9月の予約の出足が鈍かったのですが、9月になってから照会が相次いで月間受注額は開業以来最大の見込みです(件数は32件で、おそらく歴代3位くらい)。


仕事の内容は政府、製造業、IT、その他いろいろで全体的な傾向はあまり変わっていません。実施方法は遠隔が多いながらも現地を訪問することも増え、連続宿泊の出張を1年ぶりに担当しました。


外国の顧客はこれまでは縁のあった直接の取引先だけだったのですが、いわゆる世界規模同時通訳プラットフォーム(KUDOやInteractioなど)の仕事を今年から少し引き受けています。今後この方面の受託を増やすかはしばらく経験してからの判断になるでしょう。現在のところ外国顧客への売り上げは11%(金額)です。


少なくとも私の周辺では通訳サービスの需要は非常に旺盛です。新型コロナウイルス流行前の2019年と同様またはそれ以上で、過熱気味ともいえそうです。仲間の通訳者と
「通訳の学習を志す人にはそろそろ『仕事はたくさんあるから大丈夫』って言ってもいいかもしれない」
という話をしていました。


外に出る仕事があると、用務地周辺の南アジア料理店に入ってしまいます。
港区虎ノ門の「南インドキッチン虎ノ門店」の菜食ミールス
インタースクール東京校に通う人はぜひお試しください。

渋谷区の「アーンドラダイニング渋谷」の肉入りミールス
右側の白いのはチキンシチューです。さすがアーンドラグループ、よいまとまりです。

これは仕事以外で。神奈川県綾瀬市の「アイシャキッチン」で金曜に出る「ランプライス」です。イスラム教徒の店なので金曜の礼拝の後に大人数に一気に配れるようにバナナの葉でくるんで蒸す弁当スタイルです。くっきりした味付けでとてもおいしい。

 

2022-09-05 基本を思い出しておく

親しくしている通訳者がこんなことを言っていました。

自分のしたい仕事を受注するようにしているが、あまり詳しくない分野や新しい業界の仕事をときどき意図的に引き受けている。客先とのやりとりや事前調査など、通訳者として基本的に必要な部分を忘れないためだ。

とても気になったのでときどき思い返しています。


昨年・今年と私にとって新しい分野の経験をして、こうした考えの大切さを思いました。取り組んでみると意外と理解しやすく顧客にもしっかりと価値を提供できて少し安心すると共に、
「求めに応じて役務を提供し、その報酬を得る」
というサービス業の原点も思い出せます。

具体的には国際的な工業基準の策定やそれに準拠する監査、社会活動、投資先の選定など。


いろいろな分野を「のぞき見」できるのは私の性格にも合っているようで、ときには資料の山に圧倒されそうになりつつも楽しんで仕事をしています。


雨が降ると緑の勢いがひとしおです。




 

2022-08-22 なんとかお役目を果たす

オンラインセミナーの司会をしたお話です。


一般社団法人 日本会議通訳者協会主催の
日本通訳翻訳フォーラム2022 (JITF2022)
で司会を務めました。オンライン開催だと技術面で心配な点が出てきます。Zoom Webinar を使っていますが、2020年・2021年に続いて3回目のオンライン開催なのでいろいろと定型化が進んだのは収穫でした。

担当した講演は国連主任通訳者を務め、数十人規模の通訳者チームをまとめあげる重責を担い、その後にオンライン同時通訳プラットフォーム KUDO の共同創業者となった Ewandro Magalhães さんです。

2人の米大統領、6人のブラジル大統領の声となり、国連の主任通訳者を経験、通訳プラットフォームの創立者の1人というのが「公の姿」だが、その裏にある私という人間の歩みと偶然訪れた機会をどうつかんでいったかという話をしたい。「私」は「あなた」だったかもしれないのです。

特別の才能を持っているわけでも環境が特に恵まれているわけでもない。しかし節々に出会いや機会があり、思い切ってリスクを取れば道は開かれるという話は私の経験に重なるところもありました。自分が安全だと思うことよりもう少しだけ高く手を伸ばしてみる。もう少しだけ大きな器に入ってみる。そうすれば見えるものも経験することも違ってきます。


ミールス」というから南インドの定食を想像していましたが、完全に北インドの重さを感じさせる一皿でした。肉・肉・肉です。

 

2022-08-21 ダイジェスト版

イカロス出版の「通訳翻訳ジャーナル 2022 AUTUMN」にインタビュー記事を掲載してもらいました。通訳者を志してから職業通訳者になるまでの私の考えがとてもよくまとまっています。さすがに編集者の目を通ると密度が濃く読みやすくなるものだと感心しました。

この号には私が通った通訳学校の講師や日本会議通訳者協会の仲間も登場していて、ちょっとした「紙面同窓会」のようなひそかな楽しみがありました。


通訳学校に入るときに身につけていたい外国語(第二言語・習得言語)の運用能力について通訳学校の講師が述べていらっしゃる点が私の言い分とほとんど同じで心強く思いました。外国語の学習と通訳技能の学習に同時に取り組んでしまう状態になるとどちらの進展も難しくなってしまうという考えです。


神奈川県厚木市南インド料理店「ボンベイ」のケララミニミールス。量としてはこのくらいが私にはちょうどいいですね。チキンカレーが魔法のようなおいしさでした。サンバル・ラッサムもすばらしい出来。