50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2021-08-09 ブロック図

小学生のときからの知識が47年後に役立つというお話です。

さいころ身につけた動作や知識はしばらく使っていなくても意外にしっかり残っているものです。私の場合だと、たとえばモールス符号。短点「・」と長点「ー」を組み合わせる例の信号です。モールス符号の送受信実技がアマチュア無線技士の試験に義務付けられていた時期に学習し、受験以降まったく使うことがありませんでした。それにもかかわらず47年後にも欧文26文字、数字、疑問符は完全に使えます。自転車に乗るあの感じですね。


電気工作もしていたので回路図やブロック図にも親しんでいました。これがまさか通訳者になってから役立つのに驚きます。コロナウイルスの大流行で遠隔通訳が増え、電子会議室をいろいろな構成で使うことになりました。通訳提供の方法も多様になります。どの会議室にどの音声信号が流れるのか、言語の方向が変わるときの切り替えをどうするのか、など。

これをさらに複雑にするのが音声の扱いがデジタルとアナログの両方に分かれることです。頭の中で考えているだけでは思い違いや見逃しがあるので、ブロック図が欠かせません。昔々に「低周波増幅」や「混合」、「2極双投」などと紙に書きましたが、この歳になって「PC1」「ミキサー」などとパワーポイントで描くようになるとは思いませんでした。


なすのマスタード油焼き。南アジアらしい素材はマスタード油と少量のターメリックだけです。

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2021-08-01 疲れが出ます

暑いですね。疲れも出がちというお話です。


住んでいるのは林や川が近く、都心よりかなり涼しいところです。たいていの年はエアコンはほとんど使わずにすんできましたが、この数年はお世話になることがずっと増えました。気温が高くなるのに加え、人間が歳をとってきたことも要因でしょう。


疲れは少し後を追って出てくるといいますが、それを実感することが多くなりました。緊張する改まった場面の仕事の後はしばらくしてから疲れが出ました。慣れたようでなかなか慣れない。きっとずっと慣れない気がします。


加齢とともに体の感受性も鈍るようで、以前ほど冷房を苦痛に感じなくなりました(10年くらい前までは人工的な冷えかたが苦手でした)。そうして冷房の効いた部屋にずっといるのも疲れにつながるように思います。

冷房の快適さと自分の体の具合との折り合いをうまくつけながら過ごすしかないですね。


横浜駅西口から徒歩12分程度の「ルーフトップビアガーデン ヨコハマ」。ネパール料理のみを出す店です。ここのマトンカレーはぜひ試してもらいたいですね。

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2021-07-21 波乗り

いままでの年間最高売り上げを記録したのが2019年でした。翌年2020年はコロナウイルス流行の影響が大きく前年比45%の減少。会社員をしていると年収が45%下がることはめったにないでしょうね。これも個人差があり、先日現場でご一緒した通訳者は2020年が年間売上最大の年になったそうです。


そして今年2021年は7月までの数字を見ると2019年とほぼ同じ推移です。昨年2020年と1~7月の合計を比べると130%の増加。単に「戻った」だけではないので感慨があります。というのは2019年に客先別年間売り上げで3位と4位だった顧客を今年は失っているからです(1社は事業内容再編、もう1社はおそらく通訳報酬が合わない)。年間売り上げの40%を占めていた顧客を失っても他の顧客で埋め合わせることができているのには自分のことながら少々意外に感じています。


特に通訳者から売り込んだわけではなく、新規顧客からの受注が少しずつ増加し、いつのまにかかつての大口顧客の分を置き換えていました。波を逃したらしばらくして次の波が来たような感じです。地味な対応の積み重ねの効果だと思っています。

  • 業務対応可・不可の返信は素早く
  • 遠隔の技術面では必要があれば通訳者が主導
  • 尋ねられそうなことは先回りして付帯情報として知らせる
  • エージェントには不要な問い合わせをしない(食事・交通・資料はまだか、など)
  • 通訳の質が大切なのは当然。その他の面でさらに顧客に好印象を残す。

現場で逐次訳をしたときに、
「こんどの通訳者は声が聞こえる」
という点で気に入られることもあります(マスク越しなので)。脱力してはっきりと発声するだけで差別化になることもあるのです(背が高いので埋もれないという強み?も…)。


いままであまり縁がなかった「PRONTO」。各店の改装が進んでいるようで、落ちついていてかなり印象が良かった。

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2021-07-19 現場での仕事が増えている

最近引き合いがあった業務には現場に出る仕事が数件ありました。

直近の30日間で23件分の予約が成立し、そのうち14件が自宅以外(会議室やスタジオ)でした。通訳者仲間からも出張を伴う仕事をしたという話をよく聞きます。


新型コロナウイルス感染の危険は減少せず、むしろ増加の兆しなのですが、これはどうしたことでしょうか。

・危険を管理できるようになった(システムができ、自信がついた)
・行動制約がある状態に「慣れて」しまった

おそらく後者ではないでしょうか。
「そうそう閉じこもってばかりもいられない」
「(自分の周囲で)感染したという話を聞かない」


ワクチン接種はまだ十分に行き渡る状態からは遠い状況です。対人距離を十分に取り、換気が不足する部屋を避け、食事は1人でそそくさと。感染力がとても高いウイルスを相手にしていることを常に意識していないと簡単に伝染してしまうと思ったほうがいいですね。

フリーランス通訳者の場合は外出する仕事は引き受けないことも可能です。もちろん業務(収入・経歴)を失うことになりますが、自分が何を大切にするか、何を後回しにできるかをしっかり考える機会でもあるといえます。


インド料理のナスの使い方を初めて知ったときには少々驚きました。丸のまま焼いて皮を捨て、身をみじん切りにします。つやつやと美しい紫色も楽しみの内と思っていたのでちょっとした文化ショックでした。

作ってみるとしっかりナスの味がしてとてもおいしい。菜食の人も多いので野菜の使い方は巧みです。

・ナスとオクラ
・レンズマメのベンガル風スープ

とてもおいしくできました。

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夏なのでスイカも切ります。

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2021-07-10 再会

久しぶりに現場で通訳をすると仲間に会うというお話です。


「あれ、どこかでお見かけした通訳者さん…」
という経験が続いています。遠隔の仕事ばかりでしたので、同じ部屋で他の通訳者に会う感覚を忘れかけていました。

遠隔と同じ場所にいることの違いを改めて感じます。休み時間のちょっとした雑談も貴重な情報源だったことも…。


ワクチン接種が進んで活動再開に前向きな(鼻息荒い、とも)ヨーロッパやアメリカの大企業も在宅勤務になった社員を事務所に戻すべきか分散勤務を続けるべきか意見が分かれているようです。

通訳者でも企業の社員でも同じですが、経験の少ない人にとっては遠隔勤務で得られなくなるものは多いと思います。遠隔で問題ないというときには
・業務そのものが請け負いに近い形
・過去からの経験の「持越し」のおかげで誰に何を聞けばいいかわかる
からではないでしょうか。

2021-07-07 直接取引を増やすべきかどうか

通訳者が最終顧客から通訳サービス提供を直接請け負うときの注意点についてのお話です。


身もふたもない結論は
「通訳者の考え方・指向・好みに応じて」
ですね。会社員かフリーランスか、といった問いと同じです。どちらが良い・悪い、どちらが得・損という話ではありません。

直接取引のほうがなんとなく「かっこよく」見える場合には、まず直接取引とエージェント仲介取引との両方を頭の中で体験してみることをおすすめします。


直接取引で最も難しいのは
「請負範囲を決める」
ことです。通訳者と顧客は各自が何について責任を負うかはっきりと理解して合意する必要があります。エージェントモデルではこの部分をエージェントが担当しているので顧客も通訳者もかなり楽ができています。言われたとおり行動すればいいのですから。

請負範囲を決めるのはコロナウイルス流行下の会議で複雑さを増しました。以前は会場が決まって逐次か同時かを選択すれば選択肢はさほど多くありませんでした。今は会議にだれが・どこから・どのように参加するかが多様になっています。それに応じて会議の様式(会場・会場+オンライン・オンラインのみ)を決め、通訳プラットフォームや会議運営方法を選ぶ必要があります。

会議の様式が決まったら、次に主催者側と通訳者側の責任範囲を決めていきます。
・プラットフォームの手配
・話者への連絡と技術面の説明
・司会や運営側への技術面の説明
・通訳者の手配
・機材の手配
・予行演習をするのか、するのならいつ・どのように
・エンジニアの要否、エンジニア役はだれが担当するのか
など。

通訳者が担当することにはすべて対価が発生するのが基本です。厚意で意見を伝えるのはかまいませんが、何か言うと責任が生じます。それなら請負範囲として明示して報酬を受けるべきです。

恐ろしいのは主催者・登壇者・通訳者がそれぞれ
「あの部分についてはあの人がうまくやってくれる(はず)」
「あの点についてはあの人がわかっている(はず)」
「これは常識」
と思い込んでいて、それが現実と異なるときです。


まず初めに確認すべきは、顧客が一括サービス(full turnkey)を期待しているのか、それとも通訳者だけを求めているのかですね。会議運営の経験があったとしても、次の会議をどうしたいかは前回と違うかもしれません。

そして、注意点や確認事項は小出しではなくて一式で提出することが望ましい。後になって
「それだったら最初から言ってよ」
「知ってると思ってました」
ということになると良好な関係に悪影響が及びます。

顧客の担当者が通訳について非常に「ふわっとした」理解しか有していないことはけっこうあります。

ビジネスの基本は
「すると言ったことは必ずする」
「すると言わせたことは必ずさせる」
「すべてのことに責任と値札が付いている」
ことにあるのは思い出しておくべきです。


以上の点から、顧客との交渉と見積書の作り方、記録の残し方が非常に重要になります。


いっぽう直接契約の利点も多くあります。
・他の客を紹介してもらえる
・エージェントモデルよりも事務経費が低いので通訳者の手取り報酬は高め
・信頼できる通訳者に担当してもらうことができる
・依頼し、依頼されることで通訳者相互のネットワークができる
・現場を誰よりも知る通訳者本人が各種設定に関与できる
・顧客を「教育」できる


危険な予感がするときもあるかもしれません。そのときには深入りせずに顧客にエージェントを紹介してエージェントにワンストップサービスを提供してもらいましょう。そこで通訳者として指名してもらえばよい。


意図せず「直接取引になってしまった」ときのためのセミナーを担当します。

はじめての元請


今年も盛りだくさんです。

jitf2021.peatix.com

 

 

2021-07-06 少しずつ加齢を感じる

歳をとったなあ、と感じるお話です。


「ああ、これがひょっとすると『歳』ってことか」
と感じたのが夜勤で通訳をしたときです。夜の9時くらいから翌朝4時まで。そこから交通機関が動き出すまで客先の仮眠室で少し寝て帰宅します。その後2~3日くらいなんとなく調子が出ません。それ以来深夜・早朝業務はできるだけ請け負わないようにしています。


その次が通勤用電車に長時間乗ったときの体の軽い痛み(凝りのようなもの)。以前は到着時間がさほど違わないならなら着席券式の優等電車(小田急ロマンスカーや西武のレッドアロー)には乗らなかったのですが、最近は迷うことなく使います。身長があるせいか、ロングシートに体を縮めて1時間以上座っていると翌日以降疲れが出るようになりました。最近は路線相互乗り入れで普通列車の距離が長くなったことも原因のようです。


そのいっぽう精神活動は大丈夫なようで、日本語や英語の学習、通訳技能の練習では手ごたえを感じることができます。


横浜駅の立ち食い系そばでいちばんおいしいと思うのが北口の地下にある「いろり庵きらく」です。明るく清潔な店内で、椅子もあります。

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