50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2019-09-29 常に「はい」

業務打診・照会に対する返事はほぼいつも「はい」というお話です(注)。

まさかという展開がありました。

中国語の達人である友人と Facebook 上で他愛もないコメントのやりとりをしていたら、知らない方から
「日英同時通訳をしてくれませんか」
というダイレクトメッセージが届きました。その方は中国語の同時通訳者なのですが、次の仕事では英語話者も登場するのでリレー英語同時通訳も必要とのこと。

私に会ったこともなく私の通訳も聞いたことがないのにこのメッセージ。大陸の人の思い切りのよさは「やたらと保険を掛けたがる」日本人とは違います。

私と Facebook 上でコメントを交わしていた方は中国語の達人。その人の知り合いの英語通訳者なら大丈夫と思ったとのことです。


私の返事はいつものように
「はい」
でした。通訳学校の恩師がかつて言ったことが脳裏に残っています。
「自分のところに来る仕事は、できるから来るのです」


業務はかなり要求度の高いものでしたが、事務局のみなさんの献身的な働きで登壇者の原稿等がかなり手に入り、できるかぎりの準備をしました。

中日訳を聞いて日英訳を出すときには親通訳者(キー通訳者)の力量や下流に対する心遣いが自分の訳に直接影響があることがよくわかります。反対に自分の英日訳を隣のブースの日中通訳者に渡すときの緊張はかなりのものです。始めた文は必ず完結させ、文の構成ははっきりと。あいまいな同音異義語は言い換えるか説明を添える。
「リレーを担当してこそ同時通訳がわかる」
という先人の言葉がよく理解できます。通訳チーム内の打ち合わせもとても大切(この用語はカタカナで出す、など)。他の3人の通訳者とは初めて会いましたが、すぐに結束の固い仲間になりました。


中国の元外交部部長(外相)が登壇し、通訳コンソールの入力選択を「CHN(中国語)」にして隣のブースからの中日訳を聞く準備をします。ところが司会者から
「今日はいろいろな国の方がご参加とのことで、英語でお話しされます」
というまさかの展開。あわてて入力選択を「FLOOR(会場)」に切り替えます。この方の発言を「英日同時通訳」した通訳者はそう多くないと思います。

この日は日本の元外相も登壇し、その通訳も担当しました。日中の外相経験者の声を通訳できたのも、Facebook のダイレクトメッセージに
「はい」
と返答をしたから。

※注:過去2回「それはできかねます」というお返事をしています。顧客・エージェントに迷惑がかかる場面を合理的に見積もれた場合でした。蛮勇はいけません。