50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2019-07-15 通訳者か自営業者か

私は通訳者であると同時に自営業者だと思っているというお話です。

企業勤務をずいぶんと経験しました。そこからほぼ無職の期間を経て自営業者(フリーランス)として通訳を本業にした5年が経過したところです。

企業勤務の経験が長いだけに自営業者の生活が新鮮でした。自分の商品を売って生計を立てる。良い仕事をして顧客・エージェント・同席通訳者の期待を裏切らないのがまず第一。そしてその他にも小さな決断が積み重なって事業の形が決まっていきます。

事業ですから、
・どこで
・何を
・どう
売るかということ。

そう、「売る」のです。ここが被雇用者と違うところ。近年になって
「会社員も『雇われ感覚』ではなく自らキャリアを築こう」
という主張もあるようですが、そうした声の大部分は書店に山積みの自己啓発書やちょっと格好の良いウェブサイトから聞こえてくるように思います。自分が現場で通訳を1件実施してそれがそのまま収入金額に反映するのを経験するのは本を読むのとは全く違います。

以前の勤務先の営業担当役員がこう言っていました。
「文句は売ってから言え」

当時はずいぶん単純化した見方だと違和感を覚えたのですが、今になるとわかります。企業を支え、社員に給与を払い、社員やその家族の生活にひりひりする責任を感じているからこそ言ったことなのだろうと。


高い通訳報酬は自営業者にとって正義です。価格は市場で決まります。すなわち「全能のだれか」が通訳者の技能を測定して報酬を決めているのではありません。自営業者は経営主体ですから、ときにはどこにどう売るかという事業計画を考えることも必要だろうと思います。


事業開始時から現在までの月間報酬をグラフにしています。毎月だと細かい増減があるので3か月ごとの平均で示しました。「思い出してもらえる通訳者」になるまで数年かかるのが読み取れると思います。事業者としての成績表とも言えます。

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