50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2018-08-10 備え(1)

東京では現在ちょっとした通訳バブルが起きていると見ていいでしょう。
「だれでもいいから連れてきて」
という悲鳴に近い声を聞くときもあります。(

エージェントからは業務の照会が相次ぎ、直接契約の顧客からも経常的に依頼がある。

厚生労働省のマイキンこと毎月勤労統計によれば賃金は名目だけではなく実質でも伸びています。法人税収入も 2017年度では増加しています。企業の利益が増加し、それにつれて給与支給も増えたと見るべきでしょう(産業により大きく異なりますが)。通訳の発注も多くなるし単価の上昇にも寛容な可能性があります。


こんなときが危ないのかもしれません。

上ったものは下る。


特に格段の努力をしていない通訳者にもプチバブルの恩恵が及んでいます。これが当然だと思っていると危ない。オリンピック特需が終わり、そこに不況が来るようだと通訳需要は大きく減少するでしょう。2008年の金融危機のときに通訳・翻訳の需要が一気に冷え込んだのですが、フリーランス業界では「先輩からの言い伝え」が企業内ほどには機能していません。通訳エージェントの営業・コーディネーターも入れ替わりが多い職種で、仕事量が増えていく経験しかしていない。


企業業績が悪化するとどうなるか。多くの企業は(とりあえず)経費削減に走ります。最初に切るのが経費の3K、「交通費・交際費・広告宣伝費」です。出張回数を減らし、接待は自粛し、各種スポンサーも縮小へ。

そして通訳・翻訳費用も間違いなく対象になります。

「アジア太平洋会議はビデオ開催に変更」
「もういいよ。資料は英語のままでいこう」
「来月から会議は通訳なしだから。わからなかったら後で議事録読んで」

各部門に「経費削減計画」を作成するよう命令されますから、研究開発や製造、販売といった現在・将来の収益に直接結びつく部門以外(と考えられる)の費用がまず対象になります。


こうした仕事量の減少はエージェント経由だろうが直接受注だろうが関係ありません。エージェント経由に頼っていると危ないと説く自営業者もいますが、問題は通訳業務の発注、すなわち通訳の発生があるかどうかであり、受注の経路ではないのです。


「だれでもいいから」
は正確には
「ちゃんと仕事ができて常識的にふるまう通訳者ならだれでもいいから」
であることは当然ですが…。