多くの通訳者や通訳学校講師が勧めるにもかかわらずなかなか広まらない学習方法があるようです。
同じ素材で何度も練習する。
楽器の演奏でも武術でも何でも、動作をひととおりなぞって終わりということはありえません。同じ動作を何度も繰り返して練習します。
通訳技能の練習も似ていると最近(通訳学習を始めてから5年8か月、通訳専業になってから3年8か月)強く思います。
通訳学校でも自習でも、音声を使った通訳訓練では多くの学習者が
「できたか・できなかったか」
「(とりあえずの)正解は何か」
という、短答式試験の答え合わせのような練習が多いのではないでしょうか。「学習」の「学」にばかり注意が行き、「習」がなおざりになってはいないか。
通訳の練習はひととおり訳してみてからが大切だと思います。
- 異なる表現で訳す。主語を入れ替えたり、まったく違う方向から訳すなど。
- 話者に成り代わって落ち着いて話せているかを確認する。
- 「話者の意図は本当にそうなのか」と少し時間をかけて自分の理解を検討する。
- 訳すことが呼吸をするように自然に感じられるまで。
こうしたことを繰り返すと、扱っている素材以外の音声を聞いたときにも応用が効くはずです。フィギュアスケート選手は何度も同じ技を練習し、ピアノ奏者は同じフレーズをアーティキュレーションを変えて練習する。空手や柔道でも「形」は重要な位置を占めている。
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調理人も同じ料理を何度も作って「手の内」に入れてきたはず。出張先の北関東のインド料理店にて。カレーはマトンララ(mutton rara)。