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50歳で始めた通訳訓練

会社員からフリーランス通訳者に転身。同時通訳ブースに入り、通訳学校の講師に。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2016-12-17 経験がないと想像が難しい

Chip Heath and Dan Heath の MADE to STICK--Why Some Ideas Survive and Others Die のオーディオブックを聞いています。Amazon.com(米) では 940 件のレビューを集めています。

非短縮版(unabridged)なのでCD7枚ですが、事例の省略がない等で理解しやすく、長さを感じさせません。

邦訳「アイデアのちから」も専門家に好評のようですね。

新しい研究を多数披露し、非常に説得力のある本です。他人にアイディアを伝える必要のある人は(つまり、どんな人でも)読んでみて損はないと思います。


以前に多国籍企業の幹部会で同時通訳をしたときのことです。初めての客先だったのでブースに座ってもなんとなく落ち着きません。自己啓発トレーニングや運動の準備でよく耳にする
「成功裏に終わった自分の姿を想像すると緊張が解けて実力を発揮できる」
という話を実行しようとしたのですが、不安が解消する気配はありませんでした。


このオーディオブックを聞いていて、「なるほど、そうだったのか」と思う箇所がありました。

人間は自分で経験したこと・それに類似したことは想像ができるが、そうでないこと(外部から教えられたことなど)はしっかりと身体レベルで想像することが難しいと著者は主張します(実験の結果を紹介しています)。

私の例でいうと、類似した状況での同時通訳の経験がないので、それがうまく終わったときの解放感・満足感を(真の意味では)想像できなかったのですね。

今までに経験したことを追体験して、うまくいったことは今回も生かし、不安が残ることについては
「何が不安なのだろう」
とリラックスして考え、不安を解消することが有益だと著者は述べています。


運動チームに所属する人を集めてグループを2つ作り、第1のグループにはゲーム内容を具体的に動作レベルでしっかりと頭の中で追体験させました。第2のグループには勝利した自分たちの姿を想像させました。

実際にゲームをさせたところ、(やや意外にも)第1のグループのほうが成績が良かったそうです。具体的な行動を想像させると、脳内で追体験ができるので練習効果が生まれると著者は解説しています。


通訳で「経験が重要」というのは、こうした文脈でも説明できるのかもしれません。