50歳で始めた通訳訓練

会社員からフリーランス通訳者に転身。同時通訳ブースに入り、通訳学校の講師に。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2016-09-29 ぴっかぴかの土管

"Look at me!"
会議中に通訳者に向けられたことばです。語気はやや鋭い。

問いと答えとが何回か往復して、いまだに疑問が解けない。大切な質問だからしっかり通訳せよということなのでしょう。

その気持ちはよくわかります。通訳者だってここまでのやりとりを追っているのですから。

質問者にとって新しいことが回答者にとっては当然なこと。当然すぎるので回答では説明の最初の1段(前提)を抜かしてしまう。通訳者は心の中で
「違う違う。そこはわかっている。質問の意図はそこじゃない」
とつぶやいています。

やりとり一連の通訳は話者の意図をしっかり反映しているはずです。「わかってない」質問をそのとおりに伝え、「外しちゃってる」回答もそのとおりに返しています。

質問者に対しては
「その質問ではなくて、こう聞けばいいんですよ」
回答者に対しては
「聞きたいのはこういうことなんです」
と「交通整理」を入れたくなる一瞬です。

いや、もう少し待とう。この状況では両者が同じ言語を使っても同じ状況になるはず。通訳者はいましばらく「土管(dumb pipe)」でいてみよう。


通訳学校の募集セミナーで貴重な意見を聞いたことがあります。
「どんなやりとりでも、背後には通訳者の知らない何かがあることを畏れよ」

通訳者は当事者ではないので、過去からの流れやそれぞれの立場なども含めた本当のところはわからないのだ、という警句です。


しかし、通訳サービスの提供では料金に見合った満足をもたらすことも必要です。時間を無駄にせずすっきり理解できることは大きな付加価値を生みます。やりとりに時間がかかると通訳者がしっかり伝えていないのではないかという疑義も生じがちです。通訳者も自己防衛を考えなければなりません。

通訳者が状況の把握と話者の真意に相応の自信があるなら、「タイム(time-out)」を入れて依頼者側と打ち合わせをしてもいいかもしれません。通訳者が訳出を加工するのではなく、1人のビジネスパートナーとして
「どうもこんな状況になっていると感じる。こんな問いをしてみてはいかが」
と提案してみる。私は必ず
「これは通訳者の意見ですが」
とはっきりと前置きをします。

自然な通訳の流れに「超訳」を紛れ込ませるよりは安全だろうと思っています。

 


横浜市を中心に神奈川県東部・中部なら街の中華料理店に必ずある サンマーメン
この料理が地域限定だとは高校を卒業するまで知りませんでした。

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