野球選手イチローの以下の発言は有名です。
小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただひとつの道だと思っています
余剰をそぎ落としたすばらしい表現です。通訳者にも当然のように当てはまると思います。
この「小さいこと」は必ずしも「簡単なこと」ではないのでしょう。ひとまとまりの文を記憶して逐次訳する。わかりにくい表現をノートを生かして等価の訳にする。良い英語・日本語の表現を身に付けていく。通訳においてはこうした地味な訓練を積み重ねることだろうと私は受け止めました。
いっぽう、視野が狭くなることの危険も考えなければいけません。
「小さいこと」
も常に見直して、意味のある行動に進化させる必要がある。
「同じことを繰り返すと、同じことしか起きない」
というのもまた真実です。イチローは鋭く厳しい姿勢を見せています。
はっきりしているのは、ま、近道はないということですよね。遠回り、後で考えると、ま、これは遠回りだったな、省けたらよかったなって思うことは確かにあります。でもそれは一番近いです。自分のぼんやりとした理想に近づく一番の方法は遠回りをすること、というふうに、今ははっきりと言えます。
「この練習が決定版」「同時通訳者はこれをしている」などと学習法についての情報は多く流れています。多くは学校や出版社などが商業目的で発信していることは考えておいてもいいでしょうね。
通訳学校に行き、通訳の仕事をしてみて以下のことを強く感じました。
- 学習者の特性はみな異なっている
- 有効な学習法も人によって違う
- 学習法そのものに良い悪いはあまりない。実行するかどうかが問題だ
- 実行すると「その次」が見えてくる
- つまり、(回り道でもなんでも)実行しないと次に進めない
- 通訳者として伸びていく人は他人の意見をよく聞くが、選択の責任は自分で引き受けて騒がず淡々と進んでいく
日々頭をひねりながら、それでも欠かさず続ける。そうしないと確実に周囲に置いていかれます。