ある日のこと。
現場の入り口に通訳音声受信機が 100 台以上並んでいました。
「ああ、これだけの人が私の声を聞くんだな」
と思うと、やや身が引き締まる気がします。
でも、気負うことはないのです。通訳者の声を聞くけれども、それは媒体(conduit)として。通訳者がうまく姿を消せば、受信機を通していても講演者本人の音声として聞こえてくる(とかっこいいんですが…)。
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横浜市・大和市でボランティア通訳者登録をしています。主に学校や病院に出向きます。なぜボランティアかというと、公立学校や健康保険制度には通訳予算がないのです。
学校の教室や診察室が現場です。ブースも受信機もありません。私の訳出を聞く人は2~3人。通訳者は無報酬で交通費 2,500円の支払いを受けます。
それでも通訳の重要性は他の現場と変わりません。子のことを心配する親が、生徒のことを親に伝えたい教師が、外国で治療を受ける患者が、不安を取り除きたいと願う医師が訳出を待っています。
私は職業通訳者が通訳するから「ボランティア通訳」なのだと思っています。予算がないからといって訓練・経験の裏付けのない通訳ではあまりに心もとない。
いつものようにスーツを着て出かけます。指定のバッジを首から下げ、なるべく不安の度合いの高い外国人側に座ります。通訳者まで「日本サイド」では微妙な圧迫感が生まれがちです。
「今日はあなたがいたから、言いたいことをみんな言えた」
という声を聞いたときほどうれしいことはありません。
通訳学校に通っていて平日の昼に動ける人はぜひ地域の外国人住民支援組織にボランティア通訳の登録をしてみてはいかがでしょうか。例として大和市・川崎市を挙げてみました。