訪問団の会見や各種式典・行事・セミナーには紹介やあいさつが付き物です。
- 名前や肩書を間違えられない
- 注目を集める場での逐次が多い
- 原稿が出ない場合もある
- 意外な内容が飛び出すときもある(古典の引用や地域の逸話)
- 失敗すると主催者や通訳者に大きな不利益になる可能性がある
といった重圧があるいっぽう、
- 型通りの表現が多い
- 柔軟に訳しても問題は少ない
- 失敗しても聴衆側の実害は少ない
ということも事実です。基礎練習をしておくと報われることが多く、「投資効果」の良い部分ともいえます。
最初の数秒が勝負です。通訳者が安定した自然な訳を出すとその場に安心感が生まれます。聞いている人は通訳者の存在を意識しなくなり、通訳者にとっても心を静めて「推進力」を得る格好の機会になります。
外国の閣僚や日本の地方行政機関の長、中央官庁の局長級のあいさつを通訳する機会がありましたが、落ち着いて第一声を発することができました。話者が話し終わって空白が空くと通訳者に注意が集まり緊張が増してしまいます。発言が終わったらその「かかとを踏むように」訳を開始します。そして素早く始めるけど訳出はゆっくりと落ち着いて、かつよどみなく。こうなれば
「よし」
という感じになって自分の居場所が確保できた感触を得ます。
「どうせ同じ人間の言うことだ。とんでもないものは出るわけがない」
と肚をくくるのも必要かもしれません。
そして、もしうまくいかなくてもその場で過去を捨てる。通訳者の現場には未来しかない。
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仕事が終わって、菜食ミールスで一息。この店はラッサム(酸っぱくて辛いスープ)が辛く、カード(curd, プレーンヨーグルト)をたっぷり出してくれるのが特徴。