今日は少し理屈っぽい話です。
某国企業 A 社が日本の取引先 B 社と契約や共同作業をするにあたり、通訳エージェンシー経由で通訳者 X を使うとします。
X の直接の顧客は通訳エージェンシーですが、報酬の源は A ということになります。X が現場で忠誠を誓う相手は A です。X の職責は A の目的にかなった通訳サービス提供ということになります。
A が日本の文化を知らないために不用意な発言をして不利な立場に陥りそうになったら、X は注意したり軌道修正を促す。言葉の通訳であるとともに、文化の通訳もする。
これは話者の話を過不足なく伝えるという狭義の通訳からは逸脱するともいえます。こうした「介入」は時と場合により、ということになりますね。そして通訳者によって是非の意見が分かれるところ。
▼
そして、通訳者 X が A の交渉相手の日本の会社 B の発言を通訳するときにどうするかが興味深いところです。A 社を有利に導くために B 社の発言を不利なものになるよう「加減して」訳すのか。これはありえない。発言の内容は変えようがないし、ニュアンスを歪曲したら職業倫理に反します。
むしろ B に対しても A に対するのと同様の注意深さで(文化面の誤解を防ぐことも含め)接するとうまくいくことが多い。B は通訳者に対し、そして A に対し信頼を深め、内容が充実した話ができますから。
昨年から繰り返し指名をいただく某国企業は
「この通訳者は makes THEM happy であり、その結果 makes US happy になっている」
という点を高く評価してくれているようです。