50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2014-12-15 顧客と世間話

通訳者が両言語を第一言語(多くの場合母語)と同じくらい使えれば(狭義のバイリンガル)通訳が成功する確率は飛躍的に高まると思います。しかし日英通訳者の多数は第一言語がはるかに優先するシオマネキ状態と言ってよいようです。

通訳者の外国語運用能力が理想的とは言い難いとき(はい、私のことです)、信頼を得る上で意外と大切なのが通訳業務に先だつ顧客とのやりとりではないかと感じることが多くあります。

顧客と通訳の方針について打合せたり雑談をする場面で通訳者の第二言語(私の場合は英語)の能力はかなり正直に伝わりますね。You are already naked (Steve Jobs, in his graduation address at Stanford) という感じです。

雑談で興味深いのは顧客が通訳者の第二言語能力を推測するとき、発音・語彙・文法は当然ながら、話題の広さや洞察の深さも評価に大きく影響する点です。そして何より、
「この人とは安心して話ができる」
という一種の心地よさ・落ち着きといったことがかなり重要ではないかと感じています。
「この通訳者の英語は non native としてまあまあの程度だが、話はわかっているな」
と思ってもらえば良い滑り出しではないでしょうか。


会議でイヤフォンから声を届けるだけの場合は音声がすべてですので、上記のような一種のぜいたくは許されません。そのために日々研鑽を積むのは必須です。しかし、(まだ)音声だけで勝負し難い通訳者は持てる全ての力を動員する必要がありますから、「世間話力」も無視できないように思います。