シンポジウムに出かけてきました。黒田日銀総裁、インド準備銀行前総裁など豪華な顔ぶれです。経団連会館の国際会議室は良い会場ですね。ちなみに通訳ブースは客席から見て右壁面の上部でした。
司会はいつもの行天豊雄さん。83歳になられたのですね。お元気でした。
全員英語で話すとのことで同時通訳の受信機は借りませんでした(DISというメーカーのものでした)。
今回の行天さんの英語は通訳者泣かせだったと思います。頭に浮かぶ考えをすくい取りながら話すので、単語と単語の間に大きく間をとります。いつになく「ah」が多い。普通に話すときの2倍は時間がかかっていましたね。パネリストに質問を投げかけるときにこうしてしばらく話した後に必ず
My question is...
と続きます。じゃ、それ以前に話していたのは何なのでしょうか。質問を聞く方も大変だったと思います。
黒田総裁も微妙な質問を受けたときには慎重に言葉を選んで回答するので(あたりまえですね)3語に1回ほど「ah」が出ていました。聞いていて筋を追うのが難しくなる場面もありました。
「うわー、通訳者はたいへんだ」
と思いましたが、斜め前から漏れてくるヘッドフォンの日本語音声はよどみなく淡々としています。すばらしいですね。
Schumpeterian idea
fallacy of composition
という語が回答で飛び出しましたが、さらりと訳していました。さすがです。前回の経済シンポジウムで社会・政治用語 Gerrymandering に動じなかったくらいですからこの分野のプロとしては当然なのでしょう。
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インド準備銀行前総裁と中国社会科学院世界経済政治研究所の教授との英語は発音にかなり癖があり、ところどころわかりませんでした。それでも漏れ聞こえてくる通訳の日本語音声は途絶えることがありません。これには舌を巻きました。
インド諸言語の影響を受けた発音・中国語の影響を受けた発音でも問題なく通訳を続けられたのは(そのアクセントに慣れることにも若干の意味はあると思いますが)通訳者の総合的な英語力がしっかりしていたからだと思います。
たとえば私は神奈川県で生まれ育ったので南関東で話される日本語以外は使ったことがありません。それでも他の地方の日本語でもなんとか理解できることが多いですね(「方言全開」でないかぎり)。日本語が得意な外国人でも標準語以外は相当難しいはずです。つまり、日本語の「芯」がしっかりしているとストライクゾーンが広がるのだと思います。
BBCのテレビでも私が理解しかねる北イングランドの方言やパキスタンの相当に強いアクセントでも字幕が出ないときがあります。英語の母語話者なら理解できるのでしょうね。
商魂たくましい出版社から「インド英語を攻略しよう」といった音声教材も出ているようですが、私の場合にはその前にすることがありそうです。