50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2014-02-05 自分勝手との闘い

伝言ゲームという遊びがあります。

言語を変えなくても人づてにすると話がどんどん変わっていきます。

まして通訳だと…。

●思い込み
授業を受けていて、私の原文解釈はときどき(いつもとはいいません)自分勝手だなあとあきれてしまうことがあります。積極的に
「この話題なら、こうなるはず」
と先読みをしているわけではありません。素直に聞いているつもりでも油断するとすぐに無意識の自分の「読み」や価値判断が入り込んできます。

●文の構造
ブログ読者のみなさん、もしお暇があればおつきあいください。
以下の文を1回だけゆっくり読んで、その後で内容を英語で説明してみてください。細かい点は拾えなくてかまいません。何が・どうだ(どうした)という程度で。英語が出てこなければ日本語でも。

語句: Gogol ロシアの文豪ゴーゴリtroika トロイカ(3頭だて馬車)、a swindler 詐欺師、a coachman 御者
文中の his troika は「ゴーゴリが作品中で表現したトロイカ」です。
50 words です。ゆっくり音読すると 25秒でした。
Gogol describes Russia as a deeply flawed and corrupt country, but it is precisely its misery and sinfulness that entitles it to mystical regeneration. His troika carries a swindler, Chichikov, and his drunken coachman, but it is transformed into the symbol of a God-inspired country that gloriously surpasses all others.
The Economist Feb 1-7 2014, p.16)
いかがでしょうか。私の場合には読んでいるときには内容がどんどん頭に入ってきた気がしましたが、英語で再現するとなると文の構造が出てきませんでした。

書き言葉でやや改まった表現ですが、さほど複雑な文ではありませんし、単語も一般的です。原稿を使うスピーチだとこのくらい息の長い文は出てきそうです。

ゴーゴリThe Economist の記者の意図がよくわからない場合でも文法的に読み誤る余地はないように思います。

この程度の記憶保持・構文解析ができないから通訳学校で苦労しているんだな、と自分で改めて思いました。わずか25秒ですから、ノートを取ったって結果はさほど変わらないでしょう(わからないものはノートにできない)。