50歳で始めた通訳訓練

通訳者のブログ。会社員からフリーランス通訳者に転身。以下のユーザー名をクリックするとプロフィール表示に進みます。

2019-10-23 通訳が救ってくれた

つらかったら逃げ出してもいいんじゃないかというお話です。


当時私はけっこう苦しんでいました。企業勤務をしていた2011年から2012年頃のことです。

思うように仕事が進まず、周囲の期待に応えていないと感じていました。仕事の内容が以前とは変わったこともありますし、自分が柔軟に対応できないもどかしさもありました。すばらしい仲間に囲まれて外から見るとなんとかボロを出さないようにはしていましたが、日々楽しいという状況からは遠かったですね。

私が通訳者を志すときに大いに力づけてくれた恩人2人は後にこう言っていました。

当時は苦しそうでしたね


そこに世間では東日本大震災があり、身の回りではお世話になった方が60代前半で次々と病没しました。

アップル社の共同創業者 Steve Jobs の有名な 2008年スタンフォード大学卒業式スピーチの一部を思い出します。

I have looked in the mirror every morning and asked myself: "If today were the last day of my life, would I want to do what I am about to do today?" And whenever the answer has been "No" for too many days in a row, I know I need to change something.


管理職になり会議が多くなる。事業計画を作りチームを率いて目標を達成する。この日々に疲れを感じていました。そんなときに思い出したのが勤務先で海外赴任が決まった他部門の人に英語の訓練を準備した経験です。目の前にいる人を助けると手ごたえを感じます。こんな仕事が自分には向いているのではないか。

通訳という仕事はまさしくこれです。言語が通じずに困っている人がいる。そこに出向いていってお手伝いをする。


通訳学校に通っていたときには後には引けないという意地もありましたが、それよりも日々の学習に手ごたえを感じて続いていました。自分で仮説を立てて自分で実証する。うまくいってもいかなくても結果は自分に返ってくるだけ。会議で計画を発表したり進捗を報告したりすることはありませんし、部下の賞与の査定をする必要もありません。


そして個人事業者(フリーランス通訳者)となって5年。年間利益(キャッシュフローベース)は企業勤務時代を上回り、さらに伸びる余地を感じています。仕事では知的好奇心が満たされ、準備が大変だと言いながらも足取りはかなり軽く現場に出ています。すばらしい通訳者仲間もできました。


昔は人生50年といわれていました。今では80年以上でしょうか。人生にも二毛作があっていいんじゃないかと思うのです。


このサボテンが咲き始めたのはもらってきてから20年後でした。

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2019-10-21 拾い物

変わった展開もあるというお話です。


仕事の予定がキャンセルになり、他の仕事の照会もなぜかありません。平日2日にぽっかりと空きができました。

平日にしかできないことをします。

  • マイナンバーカードを受領(取りに来ないと捨てるとのお達しあり)
  • 税務署に行って用紙を受領(日本会議通訳者協会の税務署番号が入ったもの)
  • 人気のインド料理店に少し時間をずらして訪問(前回は行列で断念)

ジーンズにスニーカー、柄物のシャツで家を出ます。朝のひげそりは省略。

普段と違う電車でのんびりと移動。途中で電話がかかってきます。留守録を聞くと
「お仕事の依頼があります。メールします」
とのこと。お客さんの事情で急に通訳者が必要になったようです。

自分の身なりを写真に撮ってエージェントに送ります。
「こんなかっこうでよければ」


当初予定していた税務署訪問とインド料理店での昼食は無事に完了。会議室にやや不似合いな姿で無事に仕事をしてきました。クールビズの導入以来10月になっても気候に合わせて合理的な服装をする人が多くなりましたね。この日も私以外が全員ジャケットにタイということもなくて内心ちょっと安心しました。


さらにこの日には翌日の仕事の依頼も入り、気楽な外出が思わぬ展開になりました。


というわけで、ちょっと変わった日の句読点として久しぶりの菓子でも。

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※ 後日同僚の通訳者から聞いた話:
ユニクロで無難なものを買って着替えちゃうのもアリ」
「通訳報酬と比べたら十分『経費』のうち」

 

2019-10-19 思い出す

ありがたいことばはずっと覚えているものです。


通訳養成機関「インタースクール」の講師が最後の授業の締めくくりにこう言いました。

これは終わりではなく、始まりです。

この他にもいろいろと記憶に残る言葉があるのですが、それは私に内々にかけていただいたものなのでこのブログに記すべきではないですね。でも、次のものはここに引用しちゃってもきっと大丈夫だと思います。

どれほどの経験があろうと、我々は新人です。がんばりましょう!

 ▼
「新人」は昨日も今日も新しい現場で、まるで通訳をするのが初めてのような心構えで仕事をしてきたつもりです。経験は生かす。しかし慣性力に頼ることなく。


台風に負けない。

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2019-10-16 あせるな

新しい職業を始めると結果が出るまで時間はかかるというお話です。


売上と利益とのグラフです。背が高いほうが年間売上。低いほうが年間総利益。差額は経費で、主に旅費交通費(宿泊費含む)・事務用品費(電子機器含む)・調査研究費(図書・入場料)です。

2014年は1週間単位の出張が多かったので旅費が多くなっています。実費は通訳報酬として受け取っているので、売り上げの中の純粋な通訳報酬は少なかったことになります。

2016年以降は売上と利益との差、つまり経費部分の伸びは売り上げの伸びに比べるとおだやかです。通訳業務1回あたりの単価が上昇したことを示しています。

※ 2019年のグラフは 10月11日までを反映しています。

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2019-10-15 仲間に仕事を紹介してもらう

他の通訳者に仕事を紹介してもらうお話です。


屋外の施設視察で1回、会議室の同時通訳で1回共に仕事をした方から仕事を紹介してもらったことがあります。通訳を必要とする発注者との直接取引。直接契約の客先を自分を通さずに他の通訳者に回す太っ腹さに感銘を受けます。

この業務の会場に来ていた別の団体からその後別の仕事も受注することになりました。これも直接契約。


つい最近も以前仕事をご一緒した通訳者から照会がありました。ありがたいことです。通訳者の業務の品質に最も厳しい目を向けるのは同業者。そこからのお話は何にも増してうれしいものです。


通訳者仲間から聞くと、こうした仕事の獲得は以下の形態が多そうです。

  • 逐次通訳を聞いた他の企業が「こんどはウチもあの通訳者を使おう」と思う。
  • 同時通訳でパートナーとなった通訳者が「この人なら任せられる」と思う。

同時通訳音声を聞いている人(聴衆)が原音声も注意深く聞くことはめったにないので以上のような経路になるのでしょう。

逐次通訳で顧客に良い印象を与えると将来の仕事の獲得にもけっこう重要だったりするわけです。

訳は生き生きと、しかし、やや抑え気味に(本人がすでに一回語っていますから)。軽く聞き疲れしない声で。癖(mannerism)は極力排除して。そして、高望みなのですが、できれば「いつまでも聞いていたい」という魅力ある声で。

こうしたことは意識して訓練しないと伸ばすことができない要素だと思います。


この中央のビル(東京ガーデンテラス)には南インド料理店「エリックサウス」が入っています。日本人向けに調整しながらも南インドの心は忘れない、そんな料理です。店内のこぎれいで落ち着いた感じもいいですね。

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2019-10-14 反省事項

今年2019年には基礎練習の時間も確保しようと昨年末に考えたのですが、というお話です。


仕事の打診を受けると可能な限りは引き受けようとしてしまいます。

フリーランス通訳者は回遊するマグロにも似て、止まることができない。

  • 仕事を引き受けないと収入が途絶える。業務経験が少ないうちは売上数字を伸ばすこともとても大切。
  • 断ると次の仕事が来なくなるのではないかという本能的な恐れもある。
  • エージェントから照会があると「私に打診があるのも何かの縁」と基本的に引き受けようとする。断るとエージェントは他に当たらなけらばならず、それも大変だろうなあと想像してしまう。
  • 忙しいとか準備が大変だとかぶつぶつ言っている割に、実は現場が好き。


それはそうなのですが、次の仕事の準備に追われる感覚が続きすぎると不安も生じます。基礎的な通訳技能の練習がお留守になっていないだろうか。通訳技能の下支えになる言語運用能力は大丈夫なのか。世の中の動きに鈍くなっていないか。ときには静かに考えを巡らせているのか。

今年は年初に思っていたほど基礎訓練に時間を使っていないので、反省して取り掛かることにします。今だっていつだって遅すぎることはありません。


会議場に行く途中に見かけました。ひょっとするとこちらも通訳者が入るイベントかもしれませんね。

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なぜか通訳の現場でよくお目にかかる「今半」の弁当。こんな軽いものもあるのですね。味付けもくどくなく、おいしくいただきました。

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